のら‐くら例文一覧 18件

  1. ・・・猟夫といっても、南部の猪や、信州の熊に対するような、本職の、またぎ、おやじの雄ではない。のらくらものの隙稼ぎに鑑札だけは受けているのが、いよいよ獲ものに困ずると、極めて内証に、森の白鷺を盗み撃する。人目を憚るのだから、忍びに忍んで潜入するの・・・<泉鏡花「神鷺之巻」青空文庫>
  2. ・・・ のらくらしていては女にまで軽蔑される。恋も金も働きものでなくては得られない。一家にしても、その家に一人の不精ものがあれば、そのためにほとんど家庭の平和を破るのである。そのかわりに、一家手ぞろいで働くという時などには随分はげしき労働も見・・・<伊藤左千夫「隣の嫁」青空文庫>
  3. ・・・ 飯を独りすませてから、独りで帰って行くのらくらおやじの姿がはしご段から消えると、僕の目に入れ代って映じて来るまぼろしは、吉弥のいわゆる「あの人」であった。ひょッとしたら、これがすなわち区役所の役人で、吉弥の帰京を待っている者――たびた・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  4. ・・・ クロポトキンは、「何事をおいてもの快楽の情欲しか持たないところの、のらくら息子でないかぎりは、真理のために起つであろう」と、言っている。 青年時代は、最も、真理を検別するに、敏感であるばかりでなく、また真理の前に正直であるからであ・・・<小川未明「純情主義を想う」青空文庫>
  5. ・・・そして清三の朝飯の給仕をすますと、二階の部屋に引っこもって、のらくら雑誌を見たり、何か書いたりした。が、大抵はぐてぐて寝ていた。そして五時頃、会社が引ける時分になると、急に起きて、髪を直し、顔や耳を石鹸で洗いたてて化粧をした。それから、たす・・・<黒島伝治「老夫婦」青空文庫>
  6. ・・・一体、のらくら者と云うものは、家の者からこそ嫌がられますけれども、他処の人々は、誰にでも大抵気に入られると云う得を持っています。彼等を繋いで置く職務等と云うものがないので、彼等は、皆のものになります。丁度、どの町にも、人々が皆行って休息出来・・・<著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子「唖娘スバー」青空文庫>
  7. ・・・僕も父親の遺産のおかげで、こうしてただのらくらと一日一日を送っていて、べつにつとめをするという気も起らず、青扇の働けたらねえという述懐も、僕には判らぬこともないのであるが、けれど青扇がほんとうにいま一文も収入のあてがなくて暮しているのだとす・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」青空文庫>
  8. ・・・彼は偉大なのらくら者、悒鬱な野心家、華美な薄倖児である。彼を絶えず照した怠惰の青い太陽は、天が彼に賦与した才能の半ばを蒸発させ、蚕食した。巴里、若しくは日本高円寺の恐るべき生活の中に往々見出し得るこの種の『半偉人』の中でも、サミュエルは特に・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  9. ・・・ この村で、のらくらして居れば、きっとそうなるにきまっているわ。それだけの事なのよ。あたしのせいだなんて、ひどいわ。あたしがあなたを忘れていたように、あなただって、あたしを忘れていたのよ。そうしてこんどあたしが帰って来たという事を聞いて、急・・・<太宰治「冬の花火」青空文庫>
  10. ・・・ すべて、のらくら者の言い抜けである。私は、実際、恥かしい。苦しさも、へったくれもない。なぜ、書かないのか。実は、少しからだの工合いおかしいのでして、などと、せっぱつまって、伏目がちに、あわれっぽく告白したりなどするのだが、一日にバット・・・<太宰治「懶惰の歌留多」青空文庫>
  11. ・・・飲んだくれの父の子に麒麟児が生い立ち、人格者のむすこにのらくらができあがるのも、あるいはこのへんの消息を物語るのかもしれない。 盆踊りなども、青年男女を浮世の風にあてるという意味で学校などというものより以上に人間の教育に必要な生きた教育・・・<寺田寅彦「沓掛より」青空文庫>
  12. ・・・自分が農夫になって見た時にこの絵の具箱をぶら下げて歩いている自分がいかにも東京ののらくら者に見えるので心細かった。とうとう鉄道線路のそばの崖の上に腰かけて、一枚ざっとどうにか書き上げてしまった。 十月十八日、火曜。午後に子供を一人つ・・・<寺田寅彦「写生紀行」青空文庫>
  13. ・・・文芸家のひまとのらくら華族や、ずぼら金持のひまといっしょにされちゃ大変だ。だから芸術家が自分を閑人と考えるようじゃ、自分で自分の天職を抛つようなもので、御天道様にすまない事になります。芸術家はどこまでも閑人じゃないときめなくっちゃいけない。・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  14. ・・・始終怠けてのらくらしていました。その記憶をもって、真面目な今の生徒を見ると、どうしても大森君のように、彼らを攻撃する勇気が出て来ないのです。そう云った意味からして、つい大森さんに対してすまない乱暴を申したのであります。今日は大森君に詫まるた・・・<夏目漱石「私の個人主義」青空文庫>
  15. ・・・シュレンカは、のらくら者の見本だよ。うまく書いてある。あとの貧農の人物を作者は説明していない。富農連が却ってスッカリ書かれてるでねえか。アグニェフがどうやら中農らしいが、ただ一人のシュレンカをぬきにして、小説ん中に本物の中農・貧農は書かれて・・・<宮本百合子「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」青空文庫>
  16. ・・・それを、帰って来た時に渡して呉れるのですが、あちらでは、約束をして置かないで人を訪問するのは、留守へ出掛けるものと定めて置いてよい位、誰でも、接客日でない日には、のらくら家で時間を潰してはいないものです。たとい在宅であっても、きっとなりふり・・・<宮本百合子「男女交際より家庭生活へ」青空文庫>
  17. ・・・けれ共、あんまり自分達の世界と私達の世界を違えて考え、何の苦労も努力もしずにのらくらと暮して居る様に、馬鹿馬鹿しいほど云いたてると、仕舞いには私は腹をたてて仕舞う。その時も私は歩きながら大つまみに東京の生活振りを話してきかせた。皆は東京と云・・・<宮本百合子「農村」青空文庫>
  18. ・・・ 裁縫師の女房から本が借りられなくなると、ゴーリキイは若いのらくら男女の寄り合い場となっている街のパン屋で、副業に春画を売ったり猥褻な詩を書いてやったり、貸本をしたりしている店から、一冊一哥の損料で豆本を借り出した。そこの本はどの本も下・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの伝記」青空文庫>