のり‐だ・す【乗(り)出す】例文一覧 13件

  1. ・・・ これこれこう、こういう浴衣と葛籠の底から取出すと、まあ姉さんと進むる膝、灯とともに乗出す膝を、突合した上へ乗せ合って、その時はこういう風、仏におなりの前だから、優しいばかりか、目許口付、品があって気高うてと、お縫が謂えば、ちらちらと、・・・<泉鏡花「葛飾砂子」青空文庫>
  2. ・・・全国に多くの支店を擁しながら、なおかつ直営店の経営に乗り出すほど、事業は盛大になって来ていた――と。事実、支店の数も何もむやみにつぶしたわけでない証拠に、第一期の募集当時にくらべると、三倍にも増えていたのだ。無論、そのような盛大を来たすには・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  3. ・・・照井が驚いて馬車から半身乗り出すと、自転車に乗った一枝が必死になってあとを追うて来るのである。 ――という夢みたいなとりとめのない物語を作ってみたのである。<織田作之助「電報」青空文庫>
  4. ・・・ と男のひとは、破れた座蒲団に悪びれず大あぐらをかいて、肘をその膝の上に立て、こぶしで顎を支え、上半身を乗り出すようにして私に尋ねます。「あの、私でございますか?」「ええ。たしか旦那は三十、でしたね?」「はあ、私は、あの、…・・・<太宰治「ヴィヨンの妻」青空文庫>
  5. ・・・そのうちに、これはまあ、私にとって幸福な事であったのか、不幸な事であったのか、私のいま以て疑問としているところでございますが、このようなダメな男でも、詩壇の一隅に乗り出す機縁が生じてまいったのでございます。実に、人の一生は、不思議とでも申す・・・<太宰治「男女同権」青空文庫>
  6. ・・・それでは、いよいよインフレーションの救助に乗り出す事にしましょう。まず、新鮮な水を飲まなければいけない。お母さん、薬缶を貸して下さい。私が井戸から汲んでまいります。」 細田氏ひとりは、昂然たるものである。「はい、はい。」 何気な・・・<太宰治「女神」青空文庫>
  7. ・・・車掌は踏台から乗り出すようにして、ちょっと首をかしげて右の手でものを捧げるような手つきをしながら「もう一枚頂きましょう」と云ってニヤニヤした。 下り立った街路からの暑い反射光の影響もあったろうし、朝からの胃や頭の工合の効果もあったかもし・・・<寺田寅彦「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  8. ・・・鐘が淵紡績の煙突草後に聳え、右に白きは大学のボートハウスなるべし、端艇を乗り出す者二、三。前は桜樹の隧道、花時思いやらる。八重桜多き由なれど花なければ吾には見分け難し。植半の屋根に止れる鳶二羽相対してさながら瓦にて造れるようなるを瓦じゃ鳥じ・・・<寺田寅彦「半日ある記」青空文庫>
  9. ・・・坂を無難に通り抜けて、この四通八達の中央へと乗り出す、向うに鉄道馬車が一台こちらを向いて休んでいる、その右側に非常に大なる荷車が向うむきに休んでいる、その間約四尺ばかり、余はこの四尺の間をすり抜けるべく車を走らしたのである、余が車の前輪が馬・・・<夏目漱石「自転車日記」青空文庫>
  10. ・・・改良剣舞の娘たちは、赤き襷に鉢巻をして、「品川乗出す吾妻艦」と唄った。そして「恨み重なるチャンチャン坊主」が、至る所の絵草紙店に漫画化されて描かれていた。そのチャンチャン坊主の支那兵たちは、木綿の綿入の満洲服に、支那風の木靴を履き、赤い珊瑚・・・<萩原朔太郎「日清戦争異聞(原田重吉の夢)」青空文庫>
  11. ・・・と読んだ時、木賃宿でも主従の礼儀を守る文吉ではあるが、兼て聞き知っていた後室の里からの手紙は、なんの用事かと気が急いて、九郎右衛門が披く手紙の上に、乗り出すようにせずにはいられなかった。 敵討の一行が立った跡で、故人三右衛門の未亡人・・・<森鴎外「護持院原の敵討」青空文庫>
  12. ・・・旅順は落ちると云う時期に、身上の有るだけを酒にして、漁師仲間を大連へ送る舟の底積にして乗り出すと云うのは、着眼が好かったよ。肝心の漁師の宰領は、為事は当ったが、金は大して儲けなかったのに、内では酒なら幾らでも売れると云う所へ持ち込んだのだか・・・<森鴎外「鼠坂」青空文庫>
  13. ・・・栖方はひどく乗り出す風に早口になって笑った。「おれのは、みんなそこからです。誰一人分ってくれない。この間も、それで喧嘩をしたのですが、日本の軍艦も船も、みな間違っているのです。船体の計算に誤算があるので、おれはそれを直してみたのですが、おれ・・・<横光利一「微笑」青空文庫>