の・る【乗る/載る】例文一覧 34件

  1. ・・・木馬になんぞ乗るやつがあるもんか?」 野口という大学教授は、青黒い松花を頬張ったなり、蔑むような笑い方をした。が、藤井は無頓着に、時々和田へ目をやっては、得々と話を続けて行った。「和田の乗ったのは白い木馬、僕の乗ったのは赤い木馬なん・・・<芥川竜之介「一夕話」青空文庫>
  2. ・・・沢本  おい、ともちゃん……乗るんだ。君は俺たちのモデルじゃないか。若様も描けよ。瀬古  うん描こう。いったい計画計画って……おい生蕃、ガランスをくれ。沢本  その色こそは余が汝に求めんとしつつあったものなのだ。貴様のところにも・・・<有島武郎「ドモ又の死」青空文庫>
  3. ・・・ 今はたとい足許が水になって、神路山の松ながら人肌を通す流に変じて、胸の中に舟を纜う、烏帽子直垂をつけた船頭なりとも、乗れとなら乗る気になった。立花は怯めず、臆せず、驚破といわば、手釦、襟飾を隠して、あらゆるものを見ないでおこうと、胸を・・・<泉鏡花「伊勢之巻」青空文庫>
  4. ・・・奈々子が菓子ほしい時に、父は必ずだっこしろ、だっこすれば菓子やるというために、菓子のほしい時彼はあっこあっこと叫んで父の膝に乗るのである。一つではあまり大きいというので、半分ずつだよといい聞かせられるために、自分からはんぶんはんぶんというの・・・<伊藤左千夫「奈々子」青空文庫>
  5. ・・・そうかと思うと一方には、代がわりした『毎日新聞』の翌々日に載る沼南署名の訣別の辞のゲラ刷を封入した自筆の手紙を友人に配っている。何人に配ったか知らぬが、僅に数回の面識しかない浅い交際の私の許へまで遣したのを見るとかなり多数の知人に配ったらし・・・<内田魯庵「三十年前の島田沼南」青空文庫>
  6. ・・・そしてその上に乗る事も、それを拾い上げる事も出来ぬのである。そしてこれから先き生きているなら、どんなにして生きていられるだろうかと想像して見ると、その生活状態の目の前に建設せられて来たのが、如何にもこれまでとは違った形をしているので、女房は・・・<著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外「女の決闘」青空文庫>
  7. ・・・少女は、それに乗ると、ふたたび天国をさして去りました。このやさしい天使は、永久に、この下界に別れを告げたのでした。 天国には、やさしい天使のお母さんが、我が子の帰るのを待っていられました。三年の間、下界に苦しんできた子供に、なんの変わり・・・<小川未明「海からきた使い」青空文庫>
  8. ・・・そこから向地通いの小蒸汽に乗るのだ。そよそよと西風の吹く日で、ここからは海は見えぬが、外は少しは浪があろうと待合せの乗客が話していた。空はところどころ曇って、日がバッと照るかと思うときゅうにまた影げる。水ぎわには昼でも淡く水蒸気が見えるが、・・・<小栗風葉「世間師」青空文庫>
  9. ・・・ 当時、安堂寺橋に巡航船の乗場があり、日本橋まで乗せて二銭五厘で客を呼んでいたが、お前はその乗場に頑張って、巡航船へ乗る客を、俥の方へ横取りしようと、金切声で呶鳴っていた。巡航船に赤い旗がついているのを見て、お前も薄汚れた俥にそれと似た・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  10. ・・・ 上野から夜汽車に乗る私を送ってきてくれた土井は、別れる時こう言った。<葛西善蔵「遁走」青空文庫>
  11. ・・・それは子供を乗せて柵を回る驢馬で、よく馴れていて、子供が乗るとひとりで一周して帰って来るのだといいます。私はその動物を可愛いものに思いました。 ところがそのなかの一匹が途中で立留ったと云います。Oは見ていたのだそうです。するとその立留っ・・・<梶井基次郎「橡の花」青空文庫>
  12. ・・・ 乗る客、下りる客の雑踏の間をわれら大股に歩みて立ち去り、停車場より波止場まで、波止場より南洋丸まで二人一言も交えざりき。 船に上りしころは日ようやく暮れて東の空には月いで、わが影淡く甲板に落ちたり。卓あり、粗末なる椅子二個を備え、・・・<国木田独歩「おとずれ」青空文庫>
  13. ・・・われわれの日常乗るバスの女車掌でさえも有閑婦人の持たない活々した、頭と手足の働きからこなされて出た、弾力と美しさをもっている。働かない婦人はだんだんと頭と心の動きと美しさとにおいて退歩しつつあるように見える。女優や、音楽家や、画家、小説家の・・・<倉田百三「婦人と職業」青空文庫>
  14. ・・・ 大隊長は、兵卒を橇にして乗る訳には行かなかった。彼は橇が逃げてしまったのを部下の不注意のせいに帰して、そこらあたりに居る者をどなりつけたり、軍刀で雪を叩いたりした。彼の長靴は雪に取られそうになった。吉原に錆びさせられて腹立てた拍車は、・・・<黒島伝治「橇」青空文庫>
  15. ・・・ 今宵は大宮に仮寝の夢を結ばんとおもえるに、路程はなお近からず、天は雨降らんとし、足は疲れたれば、すすむるを幸に金沢橋の袂より車に乗る。流れの上へ上へとのぼるなれど、路あしからねば車も行きなずまず。とかくするうち夏の夕の空かわりやすく、・・・<幸田露伴「知々夫紀行」青空文庫>
  16. ・・・その手に乗るもんか」 女は女体を振っておおげさに笑った。龍介は不快になった。そして女が酒を飲んだりしているのをだまって腰をかけたまま見下していた。首にぬってあるお白粉がむらになって、かえって汚い、黒い感じを与えた。髪はやはりまだ結ってい・・・<小林多喜二「雪の夜」青空文庫>
  17. ・・・汽車に乗ると、そいつが俺に随いて来て、ここの蜂谷さんの家の垣根の隅にまで隠れて俺の方を狙ってる。さあ、責めるなら責めて来いッって、俺も堪らんから火のついた炭俵を投げつけてやったよ。もうあんな恐ろしいものは居ないから、安心しよや。もうもう大丈・・・<島崎藤村「ある女の生涯」青空文庫>
  18. ・・・東京から地方へのがれ出るには、関西方面行の汽車は箱根のトンネルがこわれてつうじないので、東京湾から船で清水港へわたり、そこから汽車に乗るのです。東北その他へ出る汽車には、みんながおしおしにつめかけて、機関車のぐるりや、箱車の屋根の上へまでぎ・・・<鈴木三重吉「大震火災記」青空文庫>
  19. ・・・そしてその上に乗る事も、それを拾い上げる事も出来ぬのである。そしてこれから先き生きているなら、どんなにして生きていられるだろうかと想像して見ると、その生活状態の目の前に建設せられて来たのが、如何にもこれまでとは違った形をしているので、女房は・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  20. ・・・いざ金がいるとなると、ポルジイはどんな危険な相談にでも乗る。お負にそれを洒々落々たる態度で遣って除ける。ある時ポルジイはプリュウンという果の干したのをぶら下げていた。それはボスニア産のプリュウン二千俵を買って、それを仲買に四分の一の代価で売・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  21. ・・・すると彼奴め、兵を乗せる車ではない、歩兵が車に乗るという法があるかとどなった。病気だ、ご覧の通りの病気で、脚気をわずらっている。鞍山站の先まで行けば隊がいるに相違ない。武士は相見互いということがある、どうか乗せてくれッて、たって頼んでも、言・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  22. ・・・航空者特に自由気球にでも乗る人はこの事実を忘れてはならない。 海陸風の原因が以上のとおりであるから、この風は昼間日照が強く、夜間空が晴れて地面からの輻射が妨げられない時に最もよく発達する。これに反して曇天では、輻射の関係で上記の原因が充・・・<寺田寅彦「海陸風と夕なぎ」青空文庫>
  23. ・・・「何しろあの連中のすることは雲にでも乗るようで、危なくてしようがない」「ふみ江ちゃんが琴やお花のお稽古で、すましているものですから、先でも買い被っていたに違いないんです。東京へ言ってやりさえすれば、金はいくらでも出るようなことも言っ・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  24. ・・・わたくしは既に十七歳になっていたが、その頃の中学生は今日とはちがって、日帰りの遠足より外滅多に汽車に乗ることもないので、小田原へ来たのも無論この日が始めてであった。家を離れて一人病院の一室に夢を見るのもまた始めてである。東京の家に帰ったのは・・・<永井荷風「十六、七のころ」青空文庫>
  25. ・・・わが坐わる床几の底抜けて、わが乗る壇の床崩れて、わが踏む大地の殻裂けて、己れを支うる者は悉く消えたるに等し。ギニヴィアは組める手を胸の前に合せたるまま、右左より骨も摧けよと圧す。片手に余る力を、片手に抜いて、苦しき胸の悶を人知れぬ方へ洩らさ・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  26. ・・・だが私の実の楽しみは、軽便鉄道に乗ることの途中にあった。その玩具のような可愛い汽車は、落葉樹の林や、谷間の見える山峡やを、うねうねと曲りながら走って行った。 或る日私は、軽便鉄道を途中で下車し、徒歩でU町の方へ歩いて行った。それは見晴し・・・<萩原朔太郎「猫町」青空文庫>
  27. ・・・細工に漆を塗てその品位を増す者あり、或は戸障子等を作て本職の大工と巧拙を争う者あり、しかのみならず、近年に至ては手業の外に商売を兼ね、船を造り荷物を仕入れて大阪に渡海せしむる者あり、或は自からその船に乗る者あり。 もとより下士の輩、悉皆・・・<福沢諭吉「旧藩情」青空文庫>
  28. ・・・一人のためには輿は乗るもので、一人のためには輿は肩から血を出すものだ。一人のためには犬は庭へ出て輪を潜って飛ばせて見て楽むもので、一人のためには食物をやって介抱をするものだ。僕の魂の生み出した真珠のような未成品の感情を君は取て手遊にして空中・・・<著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外「痴人と死と」青空文庫>
  29. ・・・の出る山路かな  同古寺の桃に米蹈む男かな  同時鳥大竹藪を漏る月夜  同さゝれ蟹足はひ上る清水かな  同荒海や佐渡に横ふ天の川  同猪も共に吹かるゝ野分かな  同鞍壺に小坊主乗るや大根引  同塩鯛の歯茎も寒し魚・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  30. ・・・どうしてって風力計がくるくるくるくる廻っていて僕たちのレコードはちゃんと下の機械に出て新聞にも載るんだろう。誰だっていいレコードを作りたいからそれはどうしても急ぐんだよ。けれども僕たちの方のきめでは気象台や測候所の近くへ来たからって俄に急い・・・<宮沢賢治「風野又三郎」青空文庫>