ばい‐かい【媒介】例文一覧 30件

  1. ・・・しかしそれは結局食欲をそそる媒介になるばかりだった。二人は喰い終ってから幾度も固唾を飲んだが火種のない所では南瓜を煮る事も出来なかった。赤坊は泣きづかれに疲れてほっぽり出されたままに何時の間にか寝入っていた。 居鎮まって見ると隙間もる風・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  2. ・・・もとより倫理学は学としての約束上概念を媒介としなければならぬ。文芸の如く具象的であることはできない。しかしすぐれた倫理学を熟読するならば、いかに著者の人間が誠実に、熱烈に、条理をつくして、その全容を表現しているかを見出して、敬慕の念を抱かず・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  3. ・・・ もとより夫婦を結ぶ運命は恋愛を通してあらわれ、恋愛の心理は無意識選択のはたらきを媒介とする。しかし二人の結合を不可離的に感ぜしめる契機はこの選択になくして、かの運命にあるのだ。 私のこのような信念からは、青年学生への、実際的に有益・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  4. ・・・このごろは結婚も恋愛結婚でなく、媒介結婚がいいなどという説がかなり行なわれているようだが、私は全然反対である。結婚はどこまでも恋愛から入らねばならぬ。こういう生命の本道というものをゆがめるところから、どんな大きな間違いが結果するであろうか。・・・<倉田百三「女性の諸問題」青空文庫>
  5. ・・・そのおかげで、何かの機会に蠅以外の媒介によって、多量のばいきんを取り込んだときでも、それにたえられるだけの資格がそなわっているのかもしれない。換言すれば、蠅はわれわれの五体をワクチン製造所として奉職する技師技手の亜類であるかもしれないのであ・・・<寺田寅彦「蛆の効用」青空文庫>
  6. ・・・そのおかげで、何かの機会にはえ以外の媒介によって多量の黴菌を取り込んだときでもそれに堪えられるだけの資格が備わっているのかもしれない。換言すればはえはわれわれの五体をワクチン製造所として奉職する技師技手の亜類であるかもしれないのである。・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  7. ・・・職業紹介所と結婚媒介所はいまだないようであるが、そのうちに出来てもよさそうなものである。今でも見合いのランデヴーには毎日のように利用されているくらいである。球戯場などもあっても差支えはない。 しかし百貨店の可能性がまだどれほど残されてい・・・<寺田寅彦「夏」青空文庫>
  8. ・・・すなわちこの際における情操は、感覚物そのものを目的物として見た時に起るので、これを道具に使って、その媒介によって、感覚物以外の或るものに対して起す情操と混同してはならんのであります。物我のうち物に対する理想と情操とは以上で大抵御分りにな・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  9. ・・・われは去る、われを伝うるものは残ると思うは、去るわれを傷ましむる媒介物の残る意にて、われその者の残る意にあらざるを忘れたる人の言葉と思う。未来の世まで反語を伝えて泡沫の身を嘲る人のなす事と思う。余は死ぬ時に辞世も作るまい。死んだ後は墓碑も建・・・<夏目漱石「倫敦塔」青空文庫>
  10. ・・・而してかかる多と一との媒介として、共栄圏という如き特殊的世界が要求せられるのである。 我国民の思想指導及び学問教育の根本方針は何処までも深く国体の本義に徹して、歴史的現実の把握と世界的世界形成の原理に基かねばならない。英米的思想の排・・・<西田幾多郎「世界新秩序の原理」青空文庫>
  11. ・・・何処までも自己の中に自己否定を含み、自己否定を媒介として働くものというのは、自己自身を対象化することによって働くものでなければならない。表現するものが表現せられるものであり、自己表現的に働く、即ち知って働くものが、真に自己自身の中に無限の否・・・<西田幾多郎「デカルト哲学について」青空文庫>
  12. ・・・都て是れ双方の感情を害する媒介たるに反し、遠く相離れて相互に見るが如く見ざるが如くして、相互に他の内事秘密に立入らざれば、新旧恰も独立して自から家計経営の自由を得るのみならず、其遠ざかるこそ相引くの道にして、遠目に見れば相互に憎からず、舅姑・・・<福沢諭吉「新女大学」青空文庫>
  13. ・・・しめ、今年今月の政治の方向と今年今月の教育の組織とを併行せしめて、教育の即効を今年今月に見んとするときは、その教育は如何様にして何の書を読ましめ何の学芸を授くるも、純然たる政治教育となりて、社会物論の媒介たるべきのみ。 昔者、旧水戸藩に・・・<福沢諭吉「政事と教育と分離すべし」青空文庫>
  14. ・・・倫理道徳の書にして尊信の一大要義を欠くときは、たとえこれを教うるも、いたずらに論議批評の媒介となりて、学生中においても、ひそかに是非喋々の言を聞くことあるべし。 ここにおいてか、これを教うる者は、もとより少年学生輩の是非論を許すべきに非・・・<福沢諭吉「読倫理教科書」青空文庫>
  15. ・・・これまたその功名の価を損ずるところのものにして、要するに二氏の富貴こそその身の功名を空うするの媒介なれば、今なお晩からず、二氏共に断然世を遁れて維新以来の非を改め、以て既得の功名を全うせんことを祈るのみ。天下後世にその名を芳にするも臭にする・・・<福沢諭吉「瘠我慢の説」青空文庫>
  16. ・・・ 更に、その愛という言葉が、人間同士の思いちがいや、だましあいの媒介物となったのは、いつの頃からでしょう。そして、愛という字が近代の偽善と自己欺瞞のシムボルのようになったのはいつの時代からでしょうか。三文文士がこの字で幼稚な読者をごまか・・・<宮本百合子「愛」青空文庫>
  17. ・・・ですから、出版綱領実践委員会はエログロ出版取締のためという名目に乗ぜられて、新しい出版取締法をつくられる媒介になることはしまいとしました。これは正しい態度でした。 ところが、一年経ったらエログロ出版者たちは、おかしな風に右ねじりをはじめ・・・<宮本百合子「新しい抵抗について」青空文庫>
  18. ・・・人間が人間を生かし殺す力の媒介物たる金銭というものの魔術性をあらわにし、それが近代社会を支配する大怪物として蓄積されてゆく過程を明らかにして、人間性の勝利の実質、生産する者が生産を掌握することの自然さを示した社会科学者たちの業績と、それを実・・・<宮本百合子「現代の主題」青空文庫>
  19. ・・・心のしんでは、そして頭では、ひどくこれから書く小説のことについて集注的になりながら、何かそのための媒介物のようにこうやってこの手紙を書き、段々心持の落付きを深く感じつつあるの。 私の机の上には又、レビタンというチェホフ時代の風景画家の描・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  20. ・・・桜の園を媒介として、我々は、ロシアの異様に独特な魂が、現在、自分の魂の一部分をどんな眼で眺めているか、その眼付を理解することができるのだ。ガーエフは、緑色羅紗の上でおとなしく小さな白い球を転して一生を終った。今ロシア人は、ひろいグラウンドへ・・・<宮本百合子「シナーニ書店のベンチ」青空文庫>
  21. ・・・デスデモーナのハンカチーフは、イヤゴーのその詭計の媒介物としてつかわれた。オセロの嫉妬をかきたてるために罪ふかい一枚の布きれとして利用される。デスデモーナはそのハンカチーフをぬすまれ、しかもそれを男にやったように、イヤゴーに仕組まれた。・・・<宮本百合子「デスデモーナのハンカチーフ」青空文庫>
  22. ・・・しかし、まとまるためには微妙きわまる媒介体がいるのよ。それは、理窟じゃないわ、ただの理窟じゃないわ。実に人間らしい情理が一つになったものだわ――そうでしょう?」 重吉の床のわきで羽織のほころびをつくろいながら、ひろ子はそんなことを熱心に・・・<宮本百合子「風知草」青空文庫>
  23. ・・・ 危険なる洋書が自然主義を媒介した。危険なる洋書が社会主義を媒介した。翻訳をするものは、そのまま危険物の受売をするのである。創作をするものは、西洋人の真似をして、舶来品まがいの危険物を製造するのである。 安寧秩序を紊る思想は、危険な・・・<森鴎外「沈黙の塔」青空文庫>
  24. ・・・あとには男子に、短い運命を持った棟蔵と謙助との二人、女子に、秋元家の用人の倅田中鉄之助に嫁して不縁になり、ついで塩谷の媒介で、肥前国島原産の志士中村貞太郎、仮名北有馬太郎に嫁した須磨子と、病身な四女歌子との二人が残った。須磨子は後の夫に獄中・・・<森鴎外「安井夫人」青空文庫>
  25. ・・・この新しい時代を代表するものは、政治化した土一揆や宗教一揆に現われているような民衆の運動、足軽の進出に媒介せられた新しい武士団の勃興、ひいては群雄の勃興である。ここではまず第一の民衆に視点を置いて、その中にどういう思想が動いていたかを問題と・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>
  26. ・・・我々はそれに媒介せられながらその媒介を忘れて直接に表現せられたものを見ることができる。著者の文章は、なお時々夾雑物を感じさせるとはいえ、著しくこの理想に近づいて来たように思う。これは著者の人格的生活における近来の進境を物語るものにほかならぬ・・・<和辻哲郎「『青丘雑記』を読む」青空文庫>
  27. ・・・人々は漱石に対する敬愛によって集まっているのではあるが、しかしこの敬愛の共同はやがて友愛的な結合を媒介することになる。人々は他の場合にはそこまで達し得なかったような親しみを、漱石のおかげで互いに感じ合うようになる。従ってこの集まりは友情の交・・・<和辻哲郎「漱石の人物」青空文庫>
  28. ・・・生の外現としての表情を媒介とすることなく、直接に作者の生が現われるのである。そのためには表情が殺されなくてはならない。ちょうど水墨画の溌剌とした筆触が描かれる形象の要求する線ではなくして、むしろ形象の自然性を否定するところに生じて来るごとく・・・<和辻哲郎「能面の様式」青空文庫>
  29. ・・・そこにおのずから、人形の首の運動が演技様式発展の媒介者として存することを見いだし得るであろう。 あるいはまた人形の肩の動作である。これもまた首の動作に連関して人形の構造そのものの中に重大な地位を占めている。人形使いはたとえば右肩をわずか・・・<和辻哲郎「文楽座の人形芝居」青空文庫>
  30. ・・・手紙、伝言等の言語的表現がその媒介をしてくれる。しかしその場合にはただ相手の顔を知らないだけであって、相手に顔がないと思っているのではない。多くの場合には言語に表現せられた相手の態度から、あるいは文字における表情から、無意識的に相手の顔が想・・・<和辻哲郎「面とペルソナ」青空文庫>