ばい‐きん【×黴菌】例文一覧 12件

  1. ・・・しかれどもコレラも黴菌病なりしを知り、すこぶる安堵せるもののごとし。 我ら会員は相次いでナポレオン、孔子、ドストエフスキイ、ダアウィン、クレオパトラ、釈迦、デモステネス、ダンテ、千の利休等の心霊の消息を質問したり。しかれどもトック君は不・・・<芥川竜之介「河童」青空文庫>
  2. ・・・ なかなかどうして、歯科散が試験薬を用いて、立合の口中黄色い歯から拭取った口塩から、たちどころに、黴菌を躍らして見せるどころの比ではない。 よく売れるから、益々得意で、澄まし返って説明する。 が、夜がやや深く、人影の薄くなったこ・・・<泉鏡花「露肆」青空文庫>
  3. ・・・巷の百万の屋根屋根は、皆々、同じ大きさで同じ形で同じ色あいで、ひしめき合いながらかぶさりかさなり、はては黴菌と車塵とでうす赤くにごらされた巷の霞のなかにその端を沈没させている。君はその屋根屋根のしたの百万の一律な生活を思い、眼をつぶってふか・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」青空文庫>
  4. ・・・これはひょっとしたら、単純な結膜炎では無く、悪質の黴菌にでも犯されて、もはや手おくれになってしまっているのではあるまいかとさえ思われ、別の医者にも診察してもらったが、やはり結膜炎という事で、全快までには相当永くかかるが、絶望では無いと言う。・・・<太宰治「薄明」青空文庫>
  5. ・・・私は、この緑の風呂敷を、電燈を覆うのに使用したわけは、けれども、その不潔の風呂敷の黴菌を、電球の熱でもって消毒しよう、そうして消毒してから、ながくわが家のものとして使用しようなどの下心からではない。そんなことは無い。私には全くそんな悪心がな・・・<太宰治「春の盗賊」青空文庫>
  6. ・・・ 流感は初期にかかると軽いが後になるほど悪性だとよく人が云う。黴菌がだんだん悪ずれがして来て黴菌の「ヒト」が悪くなるせいでもなさそうである。 流行の初期に慌てて罹る人は元来抵抗力の弱い人ではないかと思う。そういう弱い人は、ちょっと少・・・<寺田寅彦「変った話」青空文庫>
  7. ・・・これは人工的加工でこしらえたものも多いようであるが、もとはやはり天然の植物黴菌か何かでできたものがあるのではないかと思われる。そう言えば培養された黴菌の領土の型式の中にも多少類似のものがあったように思うが、これも何かの思い違いかもしれない。・・・<寺田寅彦「自然界の縞模様」青空文庫>
  8. ・・・これは化膿しないためだと言うが、墨汁の膠質粒子は外からはいる黴菌を食い止め、またすでに付着したのを吸い取る効能があるかもしれない。 寒中には着物を後ろ前に着て背筋に狭い窓をあけ、そうして火燵にかじりついてすえてもらった。神経衰弱か何かの・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  9. ・・・ これも近頃聞いた話であるが、稲の生長を助けるアゾトバクテルという黴菌がある。また同じような作用をする原生動物がある。ところが最近の日本の学者の研究によると、この二つのものを別々でなく同時に作用させると両方の作用が単に加算的でなくてそれ・・・<寺田寅彦「マーカス・ショーとレビュー式教育」青空文庫>
  10. ・・・に関する一節があって、そこには風土病と気候の関係が論ぜられ、また伝染病の種子としての黴菌のごときものが認められる。 最後にアゼンスにおける疫病流行当時の状況がリアルな恐ろしさをもって描き出されている。マンローによればこれはおもにツキジデ・・・<寺田寅彦「ルクレチウスと科学」青空文庫>
  11. ・・・ 暗い、暑い、息詰る、臭い、ムズムズする、悪ガスと、黴菌に充ちた、水夫室だった。 病人は、彼のベッドから転げ落ちた。 彼は「酔っ払って」いた。 彼の腹の中では、百パーセントのアルコールよりも、「ききめ」のある、コレラ菌が暴れ・・・<葉山嘉樹「労働者の居ない船」青空文庫>
  12. ・・・集るものは瓦と黴菌と空壜と、市場の売れ残った品物と労働者と売春婦と鼠とだ。「俺は何事を考えねばならぬのか。」と彼は考えた。 彼は十銭の金が欲しいのだ。それさえあれば、彼は一日何事も考えなくて済むのである。考えなければ彼の病は癒るのだ・・・<横光利一「街の底」青空文庫>