は‐いしゃ【歯医者】例文一覧 13件

  1. ・・・ ところが飯を食って、本郷の歯医者へ行ったら、いきなり奥歯を一本ぬかれたのには驚いた。聞いて見ると、この歯医者の先生は、いまだかつて歯痛の経験がないのだそうである。それでなければ、とてもこんなに顔のゆがんでいる僕をつかまえて辣腕をふるえ・・・<芥川竜之介「田端日記」青空文庫>
  2. ・・・見る見る歯医者の家の前を通り過ぎて、始終僕たちをからかう小僧のいる酒屋の天水桶に飛び乗って、そこでまたきりきり舞いをして桶のむこうに落ちたと思うと、今度は斜むこうの三軒長屋の格子窓の中ほどの所を、風に吹きつけられたようにかすめて通って、それ・・・<有島武郎「僕の帽子のお話」青空文庫>
  3. ・・・隣の家は歯医者らしく、二階の部屋で白い診療衣を着た医者が黙々と立ち働いているのが見えました。治療してもらっているのはどこかの奥さんらしくアッパッパを着て、スリッパをはいた両足をきちんと揃えて、仰向いています。何か日々の営みのなつかしさを想わ・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  4. ・・・まず、歯医者へ通いはじめました。あなたは虫歯が多くて、お笑いになると、まるでおじいさんのように見えましたが、けれどもあなたは、ちっとも気になさらず、私が、歯医者へおいでになるようにおすすめしても、いいよ、歯がみんな無くなりゃあ総入歯にするん・・・<太宰治「きりぎりす」青空文庫>
  5. ・・・ 私は、まっすぐに走りだした。歯医者。小鳥屋。甘栗屋。ベエカリイ。花屋。街路樹。古本屋。洋館。走りながら私は自分が何やらぶつぶつ低く呟いているのに気づいた。――走れ、電車。走れ、佐野次郎。走れ、電車。走れ、佐野次郎。出鱈目な調子をつけて繰り・・・<太宰治「ダス・ゲマイネ」青空文庫>
  6. ・・・ありがとうございます、という老生の声は、獣の呻き声にも似て憂愁やるかた無く、あの入歯を失わば、われはまた二箇月間、歯医者に通い、その間、一物も噛む事かなわず、わずかにお粥をすすって生きのび、またわが面貌も歯の無き時はいたく面変りてさらに二十・・・<太宰治「花吹雪」青空文庫>
  7. ・・・こんなところへ来るにはね、まず歯医者にひとつき通ってから、おいでなさいだ。」と、ひどい事を言った。私の歯は、ぼろぼろに欠けているのである。私は返事に窮して、お勘定をたのんだ。さすがに、それから五、六日、外出したくなかった。静かに家で読書した・・・<太宰治「容貌」青空文庫>
  8. ・・・十歳ぐらいのころ初めて歯医者の手術椅子一名拷問椅子にのせられたとき、痛くないという約束のが飛び上がるほど痛くて、おまけにそのあとの痛みが手術前の痛みに数倍して持続したので、子供心にひどく腹が立って母にくってかかり、そうしてその歯医者の漆黒な・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  9. ・・・或者は代言人の玄関番の如く、或者は歯医者の零落の如く、或者は非番巡査の如く、また或者は浪花節語りの如く、壮士役者の馬の足の如く、その外見は千差万様なれども、その褌の汚さ加減はいずれもさぞやと察せられるものばかりである。彼らはまた己れが思想の・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  10. ・・・爾薩待(農民等 黙然農民二「いま、もぐり歯医者でも懲役になるもの、人欺して、こったなごとしてそれで通るづ筈なぃがべじゃ。」爾薩待農民二「六人さ、まるっきり同じごと言って偽こいで、そしてで威張って、診察料よ・・・<宮沢賢治「植物医師」青空文庫>
  11. ・・・ところが働きながら歯医者へ通うことは時間の都合で不便だから、とうとうわたし達は工場へ歯科診療所をこしらえることにしたんです。二年計画でやったんです。みんなよろこんでいますよ。――わたしたちは誰しも早く婆さんになってしまいたくはないものね」・・・<宮本百合子「明るい工場」青空文庫>
  12. ・・・往きに私の歯医者を紹介する約束があった。飯田橋で三時すぎYと落ち合い、万世橋行の電車に乗った。「網野さんに行く先まだ秘密なのよ」「え?――何処です――銀座の方じゃあないんですか」「違うらしいわ」 網野さんは九月中から暫く東京・・・<宮本百合子「九月の或る日」青空文庫>
  13. ・・・春江は歯医者にでも行って居た為に助かる。 ◎国男は一日の朝、小田原養生館を立ち大船迄来、鎌倉へ行こうとして居るとき、震災に会い歩いて鎌倉へ行った。為に、被害の甚大な二点を幸運にすりぬけて助かった。 ◎木村兄弟が来、長男の男が上の男の・・・<宮本百合子「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」青空文庫>