はい‐せき【排斥】例文一覧 30件

  1. ・・・父は私たちが芸術に携わることは極端に嫌って、ことに軽文学は極端に排斥した。私たちは父の目を掠めてそれを味わわなければならなかったのを記憶する。 父の生い立ちは非常に不幸であった。父の父、すなわち私たちの祖父に当たる人は、薩摩の中の小藩の・・・<有島武郎「私の父と母」青空文庫>
  2. ・・・そういう趣味ならば、すくなくとも私にとっては極力排斥すべき趣味である。一事は万事である。「ああ淋しい」を「あな淋し」といわねば満足されぬ心には、無用の手続があり、回避があり、ごまかしがある。それらは一種の卑怯でなければならぬ。「趣味の相違だ・・・<石川啄木「弓町より」青空文庫>
  3. ・・・河東節の批評はほぼ同感であったが、私が日本の俗曲では何といっても長唄であると長唄礼讃を主張すると、長唄は奥さん向きの家庭音曲であると排斥して、何といっても隅田河原の霞を罩めた春の夕暮というような日本民族独特の淡い哀愁を誘って日本の民衆の腸に・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  4. ・・・しかしそのために雷霆の如く怒号する野の予言者を排斥してはならない。質素な襟飾をつけた謙遜な教授は尊敬すべきであるが、そのために舌端火を吐く街頭の闘士を軽蔑することはできぬ。むしろわれわれが要望するのは最も柔和なる者の獅子吼である。最も優美な・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  5. ・・・しかしながら現代の男女としてはかような情緒にほだされていわゆる濡れ場めいた感情過多の陥穽に陥るようなことはその気稟からも主義からも排斥すべきであって、もっと積極的に公共の建設的動機と知性とをもって明るく賢く快活に生きるべきであろう。 さ・・・<倉田百三「人生における離合について」青空文庫>
  6. ・・・そして青年を見くびったような顔をして、口に排斥するような笑を浮べた。ほんに馬鹿な事をした。向うで人に憐を乞うようなものに、あべこべにこっちから憐を乞おうとしたとは。さて老人はその場に立っていながら、忽ち体を背後へ向けた。それは自分の顔に表れ・・・<著:シュミットボンウィルヘルム 訳:森鴎外「鴉」青空文庫>
  7. ・・・廿世紀の写実とは、あるいは概念の肉化にあるのかも知れませんし、一概に、甘い大げさな形容詞を排斥するのも当るまいと思います。人は世俗の借金で自殺することもあれば、また概念の無形の恐怖から自殺することだってあるのです。決闘の次第は次回で述べます・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  8. ・・・ユダヤ人種排斥という日本人にはちょっと分らない、しかし多くのドイツ人には分りやすい原理に、幾分は別の妙な動機も加わって、一団のアインシュタイン排斥同盟のようなものが出来た。勿論大多数は物理学者以外の人で、中にはずいぶんいかがわしい人も交じっ・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  9. ・・・が横行して結果は無意味に終るにきまっているが、排斥する方の投票だと、その結果は存外多少の参考になるかもしれない。そうして最後に残った絵だけをもう一遍陳列してみたらどんなことになるか。これは試しに一度やってみる価値があるかもしれない。・・・<寺田寅彦「異質触媒作用」青空文庫>
  10. ・・・ 科学者の中にはただ忠実な個々のスケッチを作るのみをもって科学者本来の務めと考え、すべての総合的思索を一概に投機的とし排斥する人もあるかもしれない。また反対に零細のスケッチを無価値として軽侮する人もあるかもしれないが、科学というものの本・・・<寺田寅彦「科学者と芸術家」青空文庫>
  11. ・・・しかしその半面の随伴現象としていわゆる骨董趣味を邪道視し極端に排斥し、ついには巧利を度外視した純知識慾に基づく科学的研究を軽んずるような事があってはならぬと思う。直接の応用は眼前の知識の範囲を出づる事は出来ない。従ってこれには一定の限界があ・・・<寺田寅彦「科学上の骨董趣味と温故知新」青空文庫>
  12. ・・・中でいちばん年とった純下町型のYどんは時々露骨に性的な話題を持ち出して若い文学少年たちから憤慨排斥された。夜の三時ごろまでも表の人通りが絶えず、カンテラの油煙が渦巻いていた。明け方近くなっても時々郵便局の馬車がけたたましい鈴の音を立てて三原・・・<寺田寅彦「銀座アルプス」青空文庫>
  13. ・・・ ついでながら、断片的な通俗科学的読み物は排斥すべきものだというような事を新聞紙上で論じた人が近ごろあったようであるが、あれは少し偏頗な僻論であると私には思われた。どんな瑣末な科学的知識でも、その背後には必ずいろいろな既知の方則が普遍的・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  14. ・・・このような障害の根を絶つためには、一般の世間が平素から科学知識の水準をずっと高めてにせ物と本物とを鑑別する目を肥やしそして本物を尊重しにせ物を排斥するような風習を養うのがいちばん近道で有効ではないかと思ってみた。そういう事が不可能ではない事・・・<寺田寅彦「断水の日」青空文庫>
  15. ・・・日頃田崎と仲のよくない御飯焚のお悦は、田舎出の迷信家で、顔の色を変えてまで、お狐さまを殺すはお家の為めに不吉である事を説き、田崎は主命の尊さ、御飯焚風情の嘴を入れる処でないと一言の下に排斥して仕舞った。お悦は真赤な頬をふくらし乳母も共々、私・・・<永井荷風「狐」青空文庫>
  16. ・・・崇高の感がないから排斥すべしと云うのは、文学と崇高の感と内容において全部一致した暁でなければ云えぬ事である。一九に点を与えるときには滑稽が下卑であるから五十とか、諧謔が自然だから九十とかきめなければならぬ。メリメのカルメンはカルメンと云う女・・・<夏目漱石「作物の批評」青空文庫>
  17. ・・・いやしくも理想を排斥しては自己の生活を否定するのと同様の矛盾に陥りますから、私はけっしてそう云う方面の論者として諸君に誤解されたくない。ただ私の御注意申し上げたいのは輓近科学上の発見と、科学の進歩に伴って起る周密公平の観察のために道徳界にお・・・<夏目漱石「文芸と道徳」青空文庫>
  18. ・・・これを逆にいうと、そういう絵を排斥しているのが文展である。こういう訳であるから、それが一列一帯にチャンと御手際だけは出来ておらないといけない。御手際が出来てない物は皆落第する――のですかどうか分らないが、とにかくそういうことを私は文展におい・・・<夏目漱石「模倣と独立」青空文庫>
  19. ・・・よし存在してもすぐ他から排斥され踏み潰されるにきまっているからです。私はあなたがたが自由にあらん事を切望するものであります。同時にあなたがたが義務というものを納得せられん事を願ってやまないのであります。こういう意味において、私は個人主義だと・・・<夏目漱石「私の個人主義」青空文庫>
  20. ・・・真実在を論ずるものは、形而上学的として排斥せられてしまった。 然らば真実在とは如何なるものであろうか。それは先ずそれ自身に於てあるもの、自己の存在に他の何物をも要せないものでなければならない。しかし真にそれ自身によってあるものは、自己自・・・<西田幾多郎「デカルト哲学について」青空文庫>
  21. ○十年ほど前に僕は日本画崇拝者で西洋画排斥者であった。その頃為山君と邦画洋画優劣論をやったが僕はなかなか負けたつもりではなかった。最後に為山君が日本画の丸い波は海の波でないという事を説明し、次に日本画の横顔と西洋画の横顔とを並べ画いてそ・・・<正岡子規「画」青空文庫>
  22. ・・・むしろ排斥せられたのがこの紀行の旨い所以ではあるまいか。血達磨の紀行には時として人を驚かすような奇語奇文奇行がないではないが、惜しい事には文字に不穏当な処が多い。殊にその豪傑志士を気取る処は俗受けのする処であってその実その紀行の大欠点である・・・<正岡子規「徒歩旅行を読む」青空文庫>
  23. ・・・しかれどもその芭蕉を尊崇するに至りては衆口一斉に出づるがごとく、檀林等流派を異にする者もなお芭蕉を排斥せず、かえって芭蕉の句を取りて自家俳句集中に加うるを見る。ここにおいてか芭蕉は無比無類の俳人として認められ、また一人のこれに匹敵する者ある・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  24. ・・・、個々の具象性の分析、綜合から客観的現実への総括を、あるいはその逆の作用をみずみずしく営み得るはずのプロレタリア作家ともあるものが、自分のしゃべる言葉に対する大衆的反応を刻々感得することなく、自身を「排斥された異端者」と文学的に詠嘆するに至・・・<宮本百合子「一連の非プロレタリア的作品」青空文庫>
  25. ・・・なぜなら、その帝国主義排斥のまとになって殉教した人々は善良かつ悪意のない人々であったからである――彼等は盲目的であったが、そのために善良かつ悪意のなかったことに累を及ぼす筈がない。」そして、バックは「これ等二つのもの――理性と心の声は決して・・・<宮本百合子「中国に於ける二人のアメリカ婦人」青空文庫>
  26. ・・・ 利己主義は倫理上に排斥しなくてはならない。個人主義という広い名の下に、いろいろな思想を籠めておいて、それを排斥しようとするのは乱暴である。 無政府主義と、それといっしょに芽ざした社会主義との排斥をするために、個人主義という漠然たる・・・<森鴎外「文芸の主義」青空文庫>
  27. ・・・あらゆる排斥運動や呪詛が女御の上に集中してくる。ついに深山に連れて行かれ、首を切られることになる。その直前にこの后は、山中において王子を産んだ。そうして、首を切られた後にも、その胴体と四肢とは少しも傷つくことなく、双の乳房をもって太子を哺ん・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>
  28. ・・・偶像は礼拝せらるべき神であった限りにおいて、当然パウロの排斥を受くべきであった。しかし美のゆえに礼拝せらるべき芸術品としては、確かにパウロから不当な取り扱いを受けた。今やその不当な取り扱いは償われ、ただ芸術品としての威厳をもって人々の上に臨・・・<和辻哲郎「『偶像再興』序言」青空文庫>
  29. ・・・彼らは多くの心境を理解し得ないがゆえに、排斥する。しかし理解すればとても頭があがらなくなるようなものを、不理解のゆえに排斥するのは、彼ら自身にとってもむしろ悲惨ではないか。私は思いついたままにドストイェフスキイの例を引こう。この作家が人間の・・・<和辻哲郎「「自然」を深めよ」青空文庫>
  30. ・・・他人の気を兼ねるという気持ちは、そういう所へ押しつけられる体験を持たないわれわれには、単に因襲的なものとして、あるいは無性格のしるしとして、排斥されてしまったのである。 しかし少年時代からこの苦労をなめて来た藤村にとっては、それは、思想・・・<和辻哲郎「藤村の個性」青空文庫>