ばい‐てん【売店】例文一覧 22件

  1. ・・・ただやはり顔馴染みの鎮守府司令長官や売店の猫を見た時の通り、「いるな」と考えるばかりである。しかしとにかく顔馴染みに対する親しみだけは抱いていた。だから時たまプラットフォオムにお嬢さんの姿を見ないことがあると、何か失望に似たものを感じた。何・・・<芥川竜之介「お時儀」青空文庫>
  2. ・・・そして、売店で買物をしていた女の方に向って、「糸枝!」 と、名をよんだ。「はい」 女が来ると、「もう直き、汽車が来るよって、いまのうち挨拶させて貰い」「はい」 女はいきなりショールをとって、長ったらしい挨拶を私に・・・<織田作之助「秋深き」青空文庫>
  3. ・・・わけてもその夜は、お店の手代と女中が藪入りでうろつきまわっているような身なりだったし、ずいぶん人目がはばかられた。売店で、かず枝はモダン日本の探偵小説特輯号を買い、嘉七は、ウイスキイの小瓶を買った。新潟行、十時半の汽車に乗りこんだ。 向・・・<太宰治「姥捨」青空文庫>
  4. ・・・細君はその場でいきをひきとり、左官屋は牢へ行き、左官屋の十歳ほどの息子が、このあいだ駅の売店のまえで新聞を買って読んでいた。僕はその姿を見た。けれども、僕の君に知らせようとしている生活は、こんな月並みのものでない。 こっちへ来給え。この・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」青空文庫>
  5. ・・・ 市場を出て主人の煙草を買いに駅の売店に行く。町の様子は、少しも変っていない。ただ、八百屋さんの前に、ラジオニュウスを書き上げた紙が貼られているだけ。店先の様子も、人の会話も、平生とあまり変っていない。この静粛が、たのもしいのだ。きょう・・・<太宰治「十二月八日」青空文庫>
  6. ・・・海岸に売店一つなく、太平洋の真中から吹いて来る無垢の潮風がいきなり松林に吹き込んでこぼれ落ちる針葉の雨に山蟻を驚かせていた。 明治三十五年の夏の末頃逗子鎌倉へ遊びに行ったときのスケッチブックが今手許に残っている。いろいろないたずら書きの・・・<寺田寅彦「海水浴」青空文庫>
  7. ・・・田舎では鎮守の祭りや市日の売店があった。西洋でもおそらく同様であったろうと想像される。ドイツやフランスの田舎の町の「市」の光景は実によく自分の子供のころの田舎の市のそれと似かよったものをもっていたようである。 子供の時分にそうした市の露・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  8. ・・・ 売店で煙草を買っていると、隣の喫茶室で電話をかけている女の声が聞こえる。「猫のオルガン六つですか」と何遍も駄目をおしている。「猫のオルガン」が何のことだか分からないが多分おもちゃのことらしい。何となしこの小春日にふさわしい長閑なものの・・・<寺田寅彦「初冬の日記から」青空文庫>
  9. ・・・日曜ごとにK市の本町通りで開かれる市にいつもきまって出現した、おもちゃや駄菓子を並べた露店、むしろの上に鶏卵や牡丹餅や虎杖やさとうきび等を並べた農婦の売店などの中に交じって蓄音機屋の店がおのずからな異彩を放っていた。 器械から出る音のエ・・・<寺田寅彦「蓄音機」青空文庫>
  10. ・・・たぶんみやげにでもするつもりでB教授が箱根あたりの売店で買い込んであったものかと思われた。せっかくの形見ではあるがどうも自分の趣味に合わないので、押し入れの中にしまい込んだままに年を経た。大掃除のときなどに縁側に取り出されているこの銅の虎を・・・<寺田寅彦「B教授の死」青空文庫>
  11. ・・・ 大学の玄関の左側にはちょっとした売店があって文具や、それから牛乳パンくらいを売っていたような気がする。オペラ、芝居、それから学生見学団のビラなどが貼ってあった。十時頃にはよく玄関でシンケン・ブロートの立喰いをしながらそんなビラを読んで・・・<寺田寅彦「ベルリン大学(1909-1910)」青空文庫>
  12. ・・・小学時代に、夏が来ると南磧に納涼場が開かれて、河原の砂原に葦簾張りの氷店や売店が並び、また蓆囲いの見世物小屋がその間に高くそびえていた。昼間見ると乞食王国の首都かと思うほどきたないながめであったが、夜目にはそれがいかにも涼しげに見えた。父は・・・<寺田寅彦「涼味数題」青空文庫>
  13. ・・・ 後から、駅の待合室へ行って見たが、そんな名物の売店なし。又電燈でぼんやり照らされている野天のプラットフォームへ出て、通りかかった国家保安部の制服をきた男に、 ――あなたそれどこでお買いになりました? 私売店をさがしてるんですが――・・・<宮本百合子「新しきシベリアを横切る」青空文庫>
  14. ・・・農場の広っぱに国立出版所の赤い星で飾った売店があって、本や雑誌をうっている。 働くばかりではない。文化も高まって来るのがソヴェト同盟の農民の生活である。私は、クリミヤ地方を旅行した時見た農民のための療養院の話もした。海に、面して眺望絶佳・・・<宮本百合子「今にわれらも」青空文庫>
  15. ・・・洒落た鎌と槌との飾りをつけた小屋に、国立出版所の売店が本をならべている。―― 大体ソヴェト同盟の五ヵ年計画は、いろいろと予想外の飛躍をもって進展しているが、例えば農村における集団農場化の問題がある。 これは、ソヴェト同盟の最も積極的・・・<宮本百合子「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」青空文庫>
  16. ・・・―― 一月の二十三日に行ったとき、売店から梅の鉢を入れるよう頼んだのですが、どんな梅がはいりましたろう。この家の庭に山茶花はあるが梅はありません。門を入ったところには、それでも赤松が一本あるの。私は、ホラ先動坂の家へ咲枝[自注3]が持っ・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  17. ・・・在、感じている日本文学のもの足りなさは、それが未熟だからでも、稚拙だからでもなく、それどころか、どの作品も趣向はそれぞれにこらしてあって、手綺麗に色もとりどりであるけれども、そのあまりにも多くが、駅の売店につられている派手なセロファン人形だ・・・<宮本百合子「「下じき」の問題」青空文庫>
  18. ・・・―― 我々は閉めかけた場内の売店で、燻肉ののったパンをたべ茶を飲んだ。椅子が逆にテーブルの上にのっている。コップでレモンの輪が黄いろい。 この演出に、我々はクニッペルやスタニスラフスキー、カチャロフその他昔から深い繋りを作品と持って・・・<宮本百合子「シナーニ書店のベンチ」青空文庫>
  19. ・・・ 一つは、電気器具販売店、一つは、仏蘭西香水の売店。 どちらも一階の往来に面した処にあった。真鍮の太い手摺にぴったりよって立ち、私は、ぼんやり空想の世界に溶け込む。 ああ、あの高貴そうな金唐草の頸長瓶に湛えられている、とろりとし・・・<宮本百合子「小景」青空文庫>
  20. ・・・その濃い枝の下に、新聞雑誌の売店、赤い果物汁飲料のガラス瓶。 古いくり形飾を窓枠につけたロシア風な小家。それを曲って、わきの空地に馬糞がある。蠅がとんでいる。――町はずれである。 二人の日本女は、右手に見える白い大拱門を入って行った・・・<宮本百合子「スモーリヌイに翻る赤旗」青空文庫>
  21. ・・・チャンと売店があって、あっためるばかりの料理がいろいろガラス棚に並んでいる。子供のための献立、病人のための献立と分れている。工場からひけて来たソヴェト同盟のお神さん、連盟のお神さん連がつめかけて、重ね鍋に料理を買っている。別な食堂の入口から・・・<宮本百合子「ソヴェト労働者の解放された生活」青空文庫>
  22. ・・・ 尾世川は売店に行き、いつもの朝日ではなく、今日は金口のアルマを買った。彼は藍子のかけている待合室のベンチの腕木にちょっと斜かいに腰かけ、片肱にステッキをかけ、派手な箱から一本その金口をぬき、さも旅立ちの前らしい面持ちで四辺を眺めながら・・・<宮本百合子「帆」青空文庫>