はい‐びょう〔‐ビヤウ〕【肺病】例文一覧 30件

  1. ・・・それから、ナウムブルグやブラッセルを経て、ライプツィッヒを訪れ、千六百五十八年には、スタンフォドのサムエル・ウォリスと云う肺病やみの男に、赤サルビアの葉を二枚に、羊蹄の葉を一枚、麦酒にまぜて飲むと、健康を恢復すると云う秘法を教えてやったそう・・・<芥川竜之介「さまよえる猶太人」青空文庫>
  2. ・・・「この別荘の主人は肺病患者だよ。」 僕等は芒の穂を出した中を「悠々荘」の後ろへ廻って見た。そこにはもう赤錆のふいた亜鉛葺の納屋が一棟あった。納屋の中にはストオヴが一つ、西洋風の机が一つ、それから頭や腕のない石膏の女人像が一つあった。・・・<芥川竜之介「悠々荘」青空文庫>
  3. ・・・我々は彼の純粋にてかつ美しき感情をもって語られた梁川の異常なる宗教的実験の報告を読んで、その遠神清浄なる心境に対してかぎりなき希求憧憬の情を走らせながらも、またつねに、彼が一個の肺病患者であるという事実を忘れなかった。いつからとなく我々の心・・・<石川啄木「時代閉塞の現状」青空文庫>
  4. ・・・ 報知を聞くと斉しく、女は顔の色が変って目が窪んだ、それなりけり。砂利へ寝かされるような蒲団に倒れて、乳房の下に骨が見える煩い方。 肺病のある上へ、驚いたがきっかけとなって心臓を痛めたと、医者が匙を投げてから内証は証文を巻いた、但し・・・<泉鏡花「葛飾砂子」青空文庫>
  5. ・・・あの当時しばらくはどういうものでしょう、それはね、ほんとに嘘のように元気がよくおなんなすッて、肺病なんてものは何でもないものだ。こんなわけのないものはないッてっちゃ、室の中を駈けてお歩行きなさるじゃありませんか。そうしちゃあね、ッてあのをね・・・<泉鏡花「誓之巻」青空文庫>
  6. ・・・ といつも思っていたんだが、もうこの肺病には勝たれない、いや、つまり、お前に負けたのだ。 してみれば、お貞、お前が呪詛殺すんだと、吾がそう思っても、仕方があるまい。 吾はどのみち助からないと、初手ッから断念めてるが、お貞、お前の・・・<泉鏡花「化銀杏」青空文庫>
  7. ・・・ と、訊きかえすと、「あんた、知りはれしまへんのんか。肺病に石油がよう効くということは、今日び誰でも知ってることでんがな」「初耳ですね」「さよか。それやったら、よけい教え甲斐がおますわ」 肺病を苦にして自殺をしようと思い・・・<織田作之助「秋深き」青空文庫>
  8. ・・・「――それもあんた、自家製の特効薬でしてね。わたしが調整してるんですよ」「――そいつア、また。……ものによっては、一服寄進にあずかってもよいが、いったい何に効くんだい?」「――肺病です。……あきれたでしょうがな」「――あきれ・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  9.  家には一銭の金もなく、母親は肺病だった。娘の葉子は何日も飯を食わず、水の引くようにみるみる痩せて、歩く元気もなかったが、母親と相談して夜の町へ十七歳の若さを売りに行くことにした。母親も昔そんな経験があったのだ。 夜、葉・・・<織田作之助「報酬」青空文庫>
  10. ・・・在郷には空いてる家というものはめったにないもんでな、もっとも下の方に一軒いい家があるにはあるが、それがその肺病人がはいった家だで、お前様たちでは入れさせられないて、気を悪くすべと思ってな」 久助爺はこれでたくさんだと言うつもりであった。・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  11. ・・・そしてそれはたいてい肺病で死んだ人の話なのだった。そしてその話をきいているとそれらの人達の病気にかかって死んでいったまでの期間は非常に短かった。ある学校の先生の娘は半年ほどの間に死んでしまって今はまたその息子が寝ついてしまっていた。通り筋の・・・<梶井基次郎「のんきな患者」青空文庫>
  12. ・・・「君は肺病の茶碗を使うのが平気なのかい。咳をするたびにバイキンはたくさん飛んでいるし。――平気なんだったら衛生の観念が乏しいんだし、友達甲斐にこらえているんだったら子供みたいな感傷主義に過ぎないと思うな――僕はそう思う」 言ってしま・・・<梶井基次郎「冬の日」青空文庫>
  13. ・・・ぼくの物心ついた頃、親爺は貧乏官吏から一先ず息をつけていたのですが、肺病になり、一家を挙げて鎌倉に移りました。父はその昔、一世を驚倒せしめた、歴史家です。二十四歳にして新聞社長になり、株ですって、陋巷に史書をあさり、ペン一本の生活もしました・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  14. ・・・「いや、駄目なんだ。」と慶四郎君は断り、「これだ。」と言って白衣の胸を軽く叩く。とたんに、発車。「そうか。酒はどうだい。酒もあるぜ。」と私は足もとの風呂敷包をちょっと持ち上げて見せる。「肺病には煙草は、いけないが、酒は体質に依ってはかえ・・・<太宰治「雀」青空文庫>
  15. ・・・誰でもよい、ここへお金を送って下さい、私は、肺病をなおしたいのだ。ゆうべ、コップでお酒を呑んだ。誰も知らない。  八月十一日。ま白き驟雨。 尚、この四枚の拙稿、朝日新聞記者、杉山平助氏へ、正当の御配慮、おねがい申します。 右・・・<太宰治「創生記」青空文庫>
  16. ・・・「そうだよ」「いつ死んだんだえ?」「つい、この間だ。遼陽の落ちた日の翌日かなんかだったよ」「かわいそうなことをしたね、何だえ、病気は?」「肺病だよ」「それは気の毒なことをしたね」 私はその前に一二度会ったことがあ・・・<田山花袋「『田舎教師』について」青空文庫>
  17.      煙突男 ある紡績会社の労働争議に、若い肺病の男が工場の大煙突の頂上に登って赤旗を翻し演説をしたのみならず、頂上に百何十時間居すわってなんと言ってもおりなかった。だんだん見物人が多くなって、わざわざ遠方から汽・・・<寺田寅彦「時事雑感」青空文庫>
  18. ・・・ 女房にでも逃げられた不幸な肺病患者を想像してみた。それが人づてに、その不貞の妻が玉の井へんにいると聞いて、今それを捜しに出かけるのだと仮定してみる。帽子も羽織も質に入れたくらいなら電車賃がないという事も可能である。あの男の顔つき目つき・・・<寺田寅彦「蒸発皿」青空文庫>
  19. ・・・それでもどこにか不安な念が潜んでいると見えて、時々「ほんとうの肺病だって、なおらないときまった事はないのでしょうね」とこんな事をきいた事もある。またある時は「あなた、かくしているでしょう、きっとそうだ、あなたそうでしょう」とうるさく聞きなが・・・<寺田寅彦「どんぐり」青空文庫>
  20. ・・・虎列剌病博士とか腸窒扶斯博士とか赤痢博士とかもっと判然と領分を明らかにした方が善くはないかと思う。肺病患者が赤痢の論文を出して博士になった医者の所へ行ったって差支はないが、その人に博士たる名誉を与えたのは肺病とは没交渉の赤痢であって見れば、・・・<夏目漱石「道楽と職業」青空文庫>
  21. ・・・その上あの煙は肺病によくない。――しかし私はそんな事は忘れて一種の感を得た。その感じは取も直さず、意志の発現に対して起る感じの一部分であります。砲兵工厰の煙ですらこうだから真正の heroism に至っては実に壮烈な感じがあるだろうと思いま・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  22. ・・・正岡さんは肺病だそうだから伝染するといけないおよしなさいと頻りにいう。僕も多少気味が悪かった。けれども断わらんでもいいと、かまわずに置く。僕は二階に居る、大将は下に居る。其うち松山中の俳句を遣る門下生が集まって来る。僕が学校から帰って見ると・・・<夏目漱石「正岡子規」青空文庫>
  23. ・・・私は工場で余り乾いた空気と、高い温度と綿屑とを吸い込んだから肺病になったんだ。肺病になって働けなくなったから追い出されたんだ。だけど使って呉れる所はない。私が働かなけりゃ年とったお母さんも私と一緒に生きては行けないんだのに」そこで彼女は数日・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  24. ・・・尤もこれは肺病患者であると、胸を圧せられるなども他の人よりは幾倍も窮屈な苦しい感じがするのであろう。 或時世界各国の風俗などの図を集めた本を見ていたら、其中に或国の王の死骸が棺に入れてある図があった。其棺は普通よりも高い処に置いてあって・・・<正岡子規「死後」青空文庫>
  25. ・・・その武者の顔をよくよく見て居る内に、それは面頬でなくて、口に呼吸器を掛けて居る肺病患者と見え出した。その次はすっかり変って般若の面が小く見えた。それが消えると、癩病の、頬のふくれた、眼を剥いだような、気味の悪い顔が出た。試にその顔の恰好をい・・・<正岡子規「ランプの影」青空文庫>
  26. ・・・そして工場に二年ぐらい働いていると悪い労働条件のために肺病となるものの率が多く、その娘たちは田舎の家へかえって不幸のうちに死んでしまう。工場ではそれに対して責任を負わない。工場の衛生問題、早期発見などということは関心をもたれなかった。紡績工・・・<宮本百合子「衣服と婦人の生活」青空文庫>
  27. ・・・ 詩人だったひとは、持病があったところへ肺病がだんだんわるくなって遂に生きられなかったのですが、動坂のおばさんだったひとやそのほかの友達たちが最後まで想像されないほどの親切をつくしました。死ぬ二、三日前に撮った写真では、タオル寝間着――・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  28. ・・・それに実生活の上でも、籍を社会党に置いている。Artzibaschew は個人主義の元祖 Stirner を崇拝していて、革命家を主人公にした小説を多く出す。これも危険である。それに肺病で体が悪くなって、精神までが変調を来している。 フ・・・<森鴎外「沈黙の塔」青空文庫>
  29. ・・・ デュウゼは薔薇の花を造りながら、田舎の別荘で肺病を養っている。僕はどうかして一度逢ってみたいと思う。でなくとも舞台の上の絶妙な演技を味わってみたいと思う。 シモンズの書いた所によると、デュウゼは自分の好きな人と話をする時には、・・・<和辻哲郎「エレオノラ・デュウゼ」青空文庫>
  30. ・・・私が明日にも肺病にかかるかも知れない事は何ゆえに確実でないのか。――私は未来を知らない、死の迫って来る時期をも知らない。「きっと永生きする、」というのはただ私の希望に過ぎないのだ。虫のいい予感に過ぎないのだ。それに何ゆえ私は「死」を自分に近・・・<和辻哲郎「停車場で感じたこと」青空文庫>