は・える【生える】例文一覧 27件

  1. ・・・また実際そのお島婆さんの家と云うのが、見たばかりでも気が滅入りそうな、庇の低い平家建で、この頃の天気に色の出た雨落ちの石の青苔からも、菌ぐらいは生えるかと思うぐらい、妙にじめじめしていました。その上隣の荒物屋との境にある、一抱あまりの葉柳が・・・<芥川竜之介「妖婆」青空文庫>
  2. ・・・草のなかった処に青い草が生える。花のなかった処にあらん限りの花が開く。人は言葉通りに新たに甦って来る。あの変化、あの心の中にうず/\と捲き起る生の喜び、それは恐らく熱帯地方に住む人などの夢にも想い見ることの出来ない境だろう。それから水々しく・・・<有島武郎「北海道に就いての印象」青空文庫>
  3. ・・・ いくち、しめじ、合羽、坊主、熊茸、猪茸、虚無僧茸、のんべろ茸、生える、殖える。蒸上り、抽出る。……地蔵が化けて月のむら雨に托鉢をめさるるごとく、影朧に、のほのほと並んだ時は、陰気が、緋の毛氈の座を圧して、金銀のひらめく扇子の、秋草の、・・・<泉鏡花「木の子説法」青空文庫>
  4. ・・・……そこへ出盛る蕈らしいから、霜を越すという意味か、それともこの蕈が生えると霜が降る……霜を起すと言うのかと、その時、考うる隙もあらせず、「旦那さんどうですね。」とその魚売が笊をひょいと突きつけると、煮染屋の女房が、ずんぐり横肥りに肥った癖・・・<泉鏡花「小春の狐」青空文庫>
  5. ・・・いつも松露の香がたつようで、実際、初茸、しめじ茸は、この落葉に生えるのである。入口に萩の枝折戸、屋根なしに網代の扉がついている。また松の樹を五株、六株。すぐに石ころ道が白く続いて、飛地のような町屋の石を置いた板屋根が、山裾に沈んで見えると、・・・<泉鏡花「古狢」青空文庫>
  6. ・・・お神さんは私を引入れましたが、内に入りますと貴方どうでございましょう、土間の上に台があって、荒筵を敷いてあるんでございますよ、そこらは一面に煤ぼって、土間も黴が生えるように、じくじくして、隅の方に、お神さんと同じ色の真蒼な灯が、ちょろちょろ・・・<泉鏡花「湯女の魂」青空文庫>
  7. ・・・ 秋になると、トシエの家には、山の松茸の生える場所へ持って行って鈴をつけた縄張りをした。他人に松茸を取らさないようにした。 そこへ、僕等はしのびこんだ。そして、その山を隅から隅まで荒らした。 這入って行きしなに縄にふれると、向う・・・<黒島伝治「浮動する地価」青空文庫>
  8. ・・・木の枝は一つが東に向ッて生える、その上の枝は南それから西北という工合に螺旋している。花を能く見玉え、必らず螺形に花びらが出ている。朝顔の花の咲かない間は即ち渦をなしている。釘も螺状の釘が良いのサ。コロック抜きも螺状をなしているから能く突込め・・・<幸田露伴「ねじくり博士」青空文庫>
  9. ・・・頭に白髪が生えるならまだしもだが、どうかすると髯にまで出るように成ったからねえ」「心細いことを云い出したぜ」と相川は腹の中で云った。年をとるなんて、相川に言わせると、そんなことは小欠にも出したくなかった。昔の束髪連なぞが蒼い顔をして、光・・・<島崎藤村「並木」青空文庫>
  10. ・・・おれの頭から鹿の角が生える。誰やらあとから追い掛ける。大きな帽子を被った潜水夫がおれの膝に腰を掛ける。 もうパリイへ行こうと思うことなんぞはおれの頭に無い。差し当りこの包みをどうにか処分しなくてはならない。どうか大地震でもあってくれれば・・・<著:ディモフオシップ 訳:森鴎外「襟」青空文庫>
  11. ・・・その上に自然に生える烏瓜も搦んで、ほとんど隙間のないくらいに色々の葉が密生する。朝戸をあけると赤、紺、水色、柿色さまざまの朝顔が咲き揃っているのはかなり美しい。夕方が来ると烏瓜の煙のような淡い花が繁みの中から覗いているのを蛾がせせりに来る。・・・<寺田寅彦「小さな出来事」青空文庫>
  12. ・・・古いのを抜いちまわないうちに、新しいのが生えるかも知れないね」「とにかく痛い事だろう」と圭さんは話頭を転じた。「痛いに違いないね。忠告してやろうか」「なんて」「よせってさ」「余計な事だ。それより幾日掛ったら、みんな抜ける・・・<夏目漱石「二百十日」青空文庫>
  13. ・・・生える白髪を浮気が染める、骨を斬られりゃ血が染める。と高調子に歌う。シュシュシュと轆轤が回わる、ピチピチと火花が出る。「アハハハもう善かろう」と斧を振り翳して灯影に刃を見る。「婆様ぎりか、ほかに誰もいないか」と髯がまた問をか・・・<夏目漱石「倫敦塔」青空文庫>
  14.  私が茨海の野原に行ったのは、火山弾の手頃な標本を採るためと、それから、あそこに野生の浜茄が生えているという噂を、確めるためとでした。浜茄はご承知のとおり、海岸に生える植物です。それが、あんな、海から三十里もある山脈を隔てた・・・<宮沢賢治「茨海小学校」青空文庫>
  15. ・・・おまえたちが青いけし坊主のまんまでがりがり食われてしまったらもう来年はここへは草が生えるだけ、それに第一スターになりたいなんておまえたち、スターて何だか知りもしない癖に。スターというのはな、本当は天井のお星さまのことなんだ。そらあすこへもう・・・<宮沢賢治「ひのきとひなげし」青空文庫>
  16. ・・・ 女中に「抜毛を竹の根元に埋めると倍になって生えるそうだ」と母が「裏の姫竹の根に埋めておやり」と命じた。 女中はハイハイとうけ合って居たっけがそのまんま忘れて午後になって見ると大根の切っ端やお茶がらと一緒に水口の「古馬けつ」の中に入・・・<宮本百合子「秋毛」青空文庫>
  17. ・・・又、とったあとから生えるかもしれぬ由。そういう体質があるのですって。咲枝は疲れが出て、背中をいたがり、おふろのとき、私がサロメチールを背中じゅうにフーフーいってぬってやります。太郎はこの頃はダッチャン、アアチャン、オバチャン、みんないるので・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  18. ・・・その村の年よりたち、牛や馬、犬、子供たち、ばかの乞食、気味のわるい半分乞食のようなばあさん、それらの人々の生活は、山々の眺望や雑木林の中に生えるきのことともに、繭が鍋の中で煮えている匂いとともにわたしの少女時代の感覚の中に活々と存在していた・・・<宮本百合子「作者の言葉(『貧しき人々の群』)」青空文庫>
  19. ・・・そこに輝やかしきものの源泉があることは当然であるが、それが泉であればあるほど、泉の周囲に生える毒草や飛びこむ害虫がとりのぞかれなければならないのも当然であるまいか。 大衆、民衆というものを、感傷的に一般化して気分的にその現実、日常性との・・・<宮本百合子「全体主義への吟味」青空文庫>
  20. ・・・ 山の多い湖の水の澄んだ村に生える草には姿もその呼名もつり合って居る。     牛乳屋の小僧 この桑野村で始めて牧牛を始めた石井と云う牛乳屋の家に居る小僧なのだ。 七八つの子の体をして居るが年を聞けば十二だそうでいか・・・<宮本百合子「旅へ出て」青空文庫>
  21. ・・・ 年とった人なんかは、「まかないものが生えるなんて、それでさえ一寸妙だのに…… それに違いないきっと魔がさしたんだ」なんかと云ってその日は常よりも読経の時を長くし御線香も倍ほどあげたりして居た。 夜から私達は庭に出る度に・・・<宮本百合子「つぼみ」青空文庫>
  22. ・・・雪の降りよう、作物の育ちよう、そこに生える雑草や虫の生活を眺めることは、そこで暮している人々の生活にある様々の風俗・習慣等の観察からのびて行った目なのである。 小説家としての藤村は明治三十八年脱稿された「破戒」によって、立派な出発をした・・・<宮本百合子「藤村の文学にうつる自然」青空文庫>
  23. ・・・ 日本の新しい歴史教科書『国のあゆみ』がその精神において低劣なのは、あの本のどこにも日本人民のエネルギーの消長が語られていず、まるで秋雨のあと林にきのこが生える、というように日本の社会的推移をのべている点である。毛穴のない人工皮膚のよう・・・<宮本百合子「なぜ、それはそうであったか」青空文庫>
  24. ・・・なぜなら、闇屋は最近の日本の破滅的な生産と経済と官僚主義の間から生えたきのこであり、谷崎、荷風はそんなきのこの生える前からそこに立っていた資本主義社会の発生物であったのだから。 しかし作家の生きてゆく社会的感覚と作品の生きてゆき方――作・・・<宮本百合子「文化生産者としての自覚」青空文庫>
  25. ・・・―― このような豊富で脂濃い生活の獣的な屑を貫いて、「猶新鮮で健康な創造的なものがやっぱり勝を制して芽生えること、明るい人間的な生活に対する我等の再生に対する破壊し難い希望を呼び醒しつつ、善きもの――人間的なものが生い立つ」ロシア民衆の・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの伝記」青空文庫>
  26. ・・・正義派で、その生涯では大した金も残さず、しかもその僅かの財産も、没後は後継の人の非生産的な生活や、いろいろな家族内の紛糾のために何も無くなって、母は晩年、自分の少女時代の思い出のある土地の上に、雑草の生えるのを見て亡くなりました。 結婚・・・<宮本百合子「わが母をおもう」青空文庫>
  27. ・・・従ってそういう庭は、杉苔の生えるにまかせておけば自然にできあがってくる道理である。臨川寺の庭などは、杉苔の生えている土地の土を運んで来て、それを種のようにして一面にふりまいておいただけなのである。しかしその結果として一面に杉苔が生い育ち、む・・・<和辻哲郎「京の四季」青空文庫>