は‐がき【葉書/端書】例文一覧 30件

  1. ・・・僕は黒い枠のついた一枚の葉書を眺めた時、悲しさよりもむしろはかなさを感じた。「なおまた故人の所持したる書籍は遺骸と共に焼き棄て候えども、万一貴下より御貸与の書籍もその中にまじり居り候節は不悪御赦し下され度候。」 これはその葉書の隅に・・・<芥川竜之介「彼」青空文庫>
  2. ・・・着物を雨で濡らす心配があるか、ライン河の入日の画端書に感嘆の声を洩らす時のほかは、滅多に雲の影などへ心を止めないのも不思議ではない。いわんや今は薔薇の花の咲き乱れている路に、養殖真珠の指環だの翡翠まがいの帯止めだのが――以下は前に書いた通り・・・<芥川竜之介「葱」青空文庫>
  3. B おい、おれは今度また引越しをしたぜ。A そうか。君は来るたんび引越しの披露をして行くね。B それは僕には引越し位の外に何もわざわざ披露するような事件が無いからだ。A 葉書でも済むよ。B しかし今度のは葉書では済まん。・・・<石川啄木「一利己主義者と友人との対話」青空文庫>
  4. ・・・ と主人は此方に手を伸ばすと、見得もなく、婦人は胸を、はらんばいになるまでに、ずッと出して差置くのを、畳をずらして受取って、火鉢の上でちょっと見たが、端書の用は直ぐに済んだ。 机の上に差置いて、「ほんとに御苦労様でした。」「・・・<泉鏡花「女客」青空文庫>
  5. ・・・ ――さあ、その残暑の、朝から、旱りつけます中へ、端書が来ましてね。――落目もこうなると、めったに手紙なんぞ覗いた事のないのに、至急、と朱がきのしてあったのを覚えています。ご新姐あてに、千葉から荷が着いている。お届けをしようか、受取りに・・・<泉鏡花「木の子説法」青空文庫>
  6. ・・・明日帰る時の用意に発車時間を見て置くのと、直江津なる友人へ急用の端書を出すためである。 キロキロと笛が鳴る。ピューと汽笛が応じて、車は闇中に動き出した。音ばかり長い響きを曳いて、汽車は長岡方面へ夜のそくえに馳せ走った。 予は此の停車・・・<伊藤左千夫「浜菊」青空文庫>
  7. ・・・ 早速社へ宛てて、今送った原稿の掲載中止を葉書で書き送ってその晩は寝ると、翌る朝の九時頃には鴎外からの手紙が届いた。時間から計ると、前夜私の下宿へ来られて帰ると直ぐ認めて投郵したらしいので、文面は記憶していないが、その意味は、私のペン・・・・<内田魯庵「鴎外博士の追憶」青空文庫>
  8. ・・・丁度印刷が出来て来た答礼の葉書の上書きを五人の店員が精々と書いていた。其間に広告屋が来る。呉服屋が来る。家具屋が来る。瓦斯会社が来る。交換局が来る。保険会社が来る。麦酒の箱が積まれる。薦被りが転がり込む。鮨や麺麭や菓子や煎餅が間断なしに持込・・・<内田魯庵「灰燼十万巻」青空文庫>
  9. ・・・ 配達夫の立ち去った後で、お光はようやく店に出て、框際の端書を拾って茶の間へ帰ったが、見ると自分の名宛で、差出人はかのお仙ちゃんなるその娘の母親。文言は例のお話の縁談について、明日ちょっとお伺いしたいが、お差支えはないかとの問合せで、配・・・<小栗風葉「深川女房」青空文庫>
  10. ・・・ 女も笑ったくらい、どこまでが本当で、どこまでが嘘か判らぬような身の上ばなしでしたが、しかし、七つの年までざっと数えて六度か七度、預けられた里をまるで附箋つきの葉書みたいに転々と移ってきたことだけはたしかで、放浪のならわしはその時もう幼・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  11. ・・・なお、売れても売れなくても、必ず四十円の固定給は支給する云々の条件に、申し分がなく、郵便屋がこぼすくらい照会の封書や葉書が来た。 早速丹造は返事を出して曰く、――御申込みにより、貴殿を川那子商会支店長に任命する。ついては身元保証金として・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  12. ・・・もう一人の従弟のT君はこの春突然やってきて二晩泊って行ったが、つい二三日前北海道のある市の未決監から封緘葉書のたよりをよこした。 ――その後は御無沙汰しておりました。七月号K誌おみくじの作を拝見し、それに対するいたずら書きさしあげて以来・・・<葛西善蔵「父の出郷」青空文庫>
  13. ・・・「追而葬式の儀はいっさい簡略いたし――と葉書で通知もしてあるんだから、いっそ何もかも略式ということにしてふだんのままでやっちまおうじゃないか。せっかく大事なお経にでもかかろうというような場合に、集った人に滑稽な感じを与えても困るからね」・・・<葛西善蔵「父の葬式」青空文庫>
  14. ・・・ 彼はある日葉書へそんなことを書いてしまった、もちろん遊戯ではあったが。そしてこの日頃の昼となし夜となしに、時どきふと感じる気持のむずかゆさを幾分はかせたような気がした。夜、静かに寝られないでいると、空を五位が啼いて通った。ふと・・・<梶井基次郎「城のある町にて」青空文庫>
  15. ・・・郵便局で葉書を買って、家へ金の礼と友達へ無沙汰の詫を書く。机の前ではどうしても書けなかったのが割合すらすら書けた。 古本屋と思って入った本屋は新しい本ばかりの店であった。店に誰もいなかったのが自分の足音で一人奥から出て来た。仕方なしに一・・・<梶井基次郎「泥濘」青空文庫>
  16. ・・・ポケットから二三枚の二ツに折った葉書と共に、写真を引っぱり出した時、伍長は、「この写真を何と云って呉れたい?」とへへら笑うように云った。「何も云いやしません。」「こいつにでもなか/\金を入れとるだろう。……偽せ札でもこしらえんけ・・・<黒島伝治「穴」青空文庫>
  17. ・・・ 翌日の午後、従弟から葉書が来た。県立中学に多分合格しているだろうが、若し駄目だったら、私立中学の入学試験を受けるために、成績が分るまで子供は帰らせずに、引きとめている。ということだった。「もう通らなんだら、私立を受けさしてまで中学・・・<黒島伝治「電報」青空文庫>
  18. ・・・健吉からは時々検印の押さった封緘葉書が来た。それが来ると、母親はお安に声を出して読ませた。それから次の日にモウ一度読ませた。次の手紙が来る迄、その同じ手紙を何べんも読むことにした。         * とり入れの済んだ頃、母親とお安・・・<小林多喜二「争われない事実」青空文庫>
  19. ・・・書信 封緘葉書二枚。着物の宅下げ願。 運動は一日一度――二十分。入浴は一週二度、理髪は一週一度、診察が一日置きにある。一日置きに診察して貰えるので、時にはまるで「お抱え医者」を侍らしているゼイタクな気持を俺だちに起させること・・・<小林多喜二「独房」青空文庫>
  20. ・・・十二分に参りて元からが不等辺三角形の眼をたるませどうだ山村の好男子美しいところを御覧に供しようかねと撃て放せと向けたる筒口俊雄はこのごろ喫み覚えた煙草の煙に紛らかしにっこりと受けたまま返辞なければ往復端書も駄目のことと同伴の男はもどかしがり・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  21. ・・・しかしおげんは久しぶりで東京の方に居る弟の熊吉に宛てた葉書を書く気になったほど、心持の好い日を迎えた。おげんは女らしい字を書いたが、とかく手が震えて、これまでめったに筆も持たなかった。書いて見れば、書けて、その弟にやる葉書を自分で眺めても、・・・<島崎藤村「ある女の生涯」青空文庫>
  22. ・・・私は、かねて山田君から教えられていた先方のお家へ、速達の葉書を発した。ただいま友人、大隅忠太郎君から、結納ならびに華燭の典の次第に就き電報を以て至急の依頼を受けましたが、ただちに貴門を訪れ御相談申上げたく、ついては御都合よろしき日時、ならび・・・<太宰治「佳日」青空文庫>
  23. ・・・もう幾月か立ったので、なんに附けても悪く言う。葉書が来ない。そりゃ高慢になった。来た。そりゃ見せびらかす。チルナウエルの身になっては、どうして好いか分からない。 竜騎兵中尉も消え失せたようにいなくなった。いつも盛んな事ばかりして、人に評・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  24. ・・・ラインゴルドで午食をして、ヨスチイで珈琲を飲んで、なんにするという思案もなく、赤い薔薇のブケエを買って、その外にも鹿の角を二組、コブレンツの名所絵のある画葉書を百枚買った。そのあとでエルトハイムに寄って新しい襟を買ったのであった。 晩に・・・<著:ディモフオシップ 訳:森鴎外「襟」青空文庫>
  25. ・・・よごれた畳破れた建具を見まわしていたが、急に思いついて端書を書いた、久し振りで黒田にこんな事を書いてやった。……東京は雪がふった。千駄木の泥濘はまだ乾かぬ。これが乾くと西風が砂を捲く。この泥に重い靴を引きずり、この西風に逆らうだけで・・・<寺田寅彦「イタリア人」青空文庫>
  26. ・・・返事には端書が一枚来た。その文句は、有難う、いずれ拝顔の上とか何とかあるだけで、すこぶる簡単かつあっさりしていた。ちっとも「其面影」流でないのには驚いた。長谷川君の書に一種の風韻のある事もその時始めて知った。しかしその書体もけっして「其面影・・・<夏目漱石「長谷川君と余」青空文庫>
  27. ・・・それから勲章をお貰いになったお祝を申上げた時、お葉書を一度下さいましたっけ。それにわたくしはどうでございましょう。 わたくしはあなたの記念を心の隅の方に、内証で大切にしまって置いて、昔のようになんの幸福もなしに暮らしていました。それから・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  28. ・・・の中扉のカットを挿入 1 どんぐりと山猫山猫拝と書いたおかしな葉書が来たので、こどもが山の風の中へ出かけて行くはなし。必ず比較をされなければならないいまの学童たちの内奥からの反響です。 2 狼森と笊森、盗森人と森・・・<宮沢賢治「『注文の多い料理店』新刊案内」青空文庫>
  29. ・・・ 女中に、 私の処へ手紙が来てないかい。ときく。書生にも同じ事を聞く。 十二時すぎに、待ち兼ねて居たものが来た。 葉書の走り書きで、今日の午後に来ると云ってよこしたんで急に書斎でも飾って見る気になる。 机の引・・・<宮本百合子「秋風」青空文庫>
  30. ・・・これを記している処へ、丁度宮崎虎之助さんの葉書が来た。「合掌礼拝。森君よ。ずっと向うに見えて居るのは何でしょう。あれは死ですね。最も賢き人は死を確と認めて居ますね。十二月七日。祈祷。」 次にわたくしは芥川氏に聞いた二三の雑事をしるして置・・・<森鴎外「細木香以」青空文庫>