はく‐じょう〔‐ジヤウ〕【白状】例文一覧 30件

  1. ・・・「さあ、正直に白状おし。お前は勿体なくもアグニの神の、声色を使っているのだろう」 さっきから容子を窺っていても、妙子が実際睡っていることは、勿論遠藤にはわかりません。ですから遠藤はこれを見ると、さては計略が露顕したかと思わず胸を躍ら・・・<芥川竜之介「アグニの神」青空文庫>
  2. ・・・何しろ主人役が音頭をとって、逐一白状に及ばない中は、席を立たせないと云うんだから、始末が悪い。そこで、僕は志村のペパミントの話をして、「これは私の親友に臂を食わせた女です。」――莫迦莫迦しいが、そう云った。主人役がもう年配でね。僕は始から、・・・<芥川竜之介「片恋」青空文庫>
  3. ・・・瀬古  そうしておはぎはあんこのかい、きなこのかい、それとも胡麻……白状おし、どれをいくつ……沢本  瀬古やめないか、俺はほんとうに怒るぞ。飢じい時にそんな話をする奴が……ああ俺はもうだめだ。三日食わないんだ、三日。瀬古  沢本・・・<有島武郎「ドモ又の死」青空文庫>
  4. ・・・と問われました。僕は顔を真赤にして「ええ」と白状するより仕方がありませんでした。「そんなら又あげましょうね。」 そういって、先生は真白なリンネルの着物につつまれた体を窓からのび出させて、葡萄の一房をもぎ取って、真白い左の手の上に粉の・・・<有島武郎「一房の葡萄」青空文庫>
  5. ・・・ 僕はここで白状するが、この時の僕は慥に十日以前の僕ではなかった。二人は決してこの時無邪気な友達ではなかった。いつの間にそういう心持が起って居たか、自分には少しも判らなかったが、やはり母に叱られた頃から、僕の胸の中にも小さな恋の卵が幾個・・・<伊藤左千夫「野菊の墓」青空文庫>
  6. ・・・予も腹のどん底を白状すると、お繁さんから今年一月の年賀状の次手に、今年の夏も是非柏崎へお越しを願いたい。今一度お目に掛って信仰上のお話など伺いたく云々とあったに動かされてきたと云ってもよい位だ。其に来て見れば、お繁さんが居ないのだから……。・・・<伊藤左千夫「浜菊」青空文庫>
  7. ・・・僕は裁判をしてこっちが羞恥を感じて赤面したが、女はシャアシャアしたもんで、平気でベラベラ白状した。職業的堕落婦人よりは一層厚顔だ。口の先では済まない事をした、申訳がありませんといったが、腹の底では何を思ってるか知れたもんじゃない。良心がまる・・・<内田魯庵「三十年前の島田沼南」青空文庫>
  8. ・・・正直に平たく白状さしたなら自分の作った脚色を餅に搗いた経験の無い作者は殆んどなかろう。長篇小説の多くが尻切蜻蜒である原因の過半はこれである。二十八年の長きにわたって当初の立案通りの過程を追って脚色の上に少しも矛盾撞着を生ぜしめなかったのは稀・・・<内田魯庵「八犬伝談余」青空文庫>
  9. ・・・さあ白状してしまえ。みなその品物をここへおいてゆけ。」といいながら飛び出してきました。「いいえ、盗んだり、拾ってきたりしたものではありません。あの沖にきている船からもらってきたのです。」と泣きながらいったのです。けれど若者らは無・・・<小川未明「黒い旗物語」青空文庫>
  10. ・・・今だからこそ白状するが、原因はお千鶴だ。と、こう言えば、お前はびっくりするだろうが、当時おれもまだ三十七歳、若かった、惚れていたのだ。 ところが、この博労町の金米糖屋の娘は余程馬鹿な娘で、相手もあろうにお前のものになってしまった。それも・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  11. ・・・が悪いことは続くもので、その年の冬、椙が八年ぶりにひょっくり戻ってくるとお光を見るなり抱き寄せて、あ、この子や、この子や、ねえさんこの子はあての子どっせ、七年前に寺田屋の軒先へ捨子したのは今だからこそ白状するがあてどしたんえという椙の言葉に・・・<織田作之助「螢」青空文庫>
  12. ・・・ 妙なことを白状しましょうか。と辰弥は微笑みて、私はあなたの琴を、この間の那須野のほかに、まあ幾度聞いたとお思いなさる。という。またそのようなことを、と光代は逃ぐるがごとく前へ出でしが、あれまあちょいと御覧なさいまし。いい景色のところへ・・・<川上眉山「書記官」青空文庫>
  13. ・・・僕は平気で白状しますが幾度僕は少女を思うて泣いたでしょう。幾度その名を呼で大空を仰いだでしょう。実にあの少女の今一度この世に生き返って来ることは僕の願です。「しかし、これが僕の不思議なる願ではない。僕の真実の願ではない。僕はまだまだ大な・・・<国木田独歩「牛肉と馬鈴薯」青空文庫>
  14. ・・・実は――もう白状してもいいから言うが――実は僕近ごろ自分で自分を疑い初めて、果たしておれに美術家たるの天才があるのだろうか、果たしておれは一個の画家として成功するだろうかなんてしきりと自脈を取っていたのサ。断然この希望をなげうってしまうかと・・・<国木田独歩「郊外」青空文庫>
  15. ・・・そのために、逮捕せられ、あらゆるひどい拷問に付せられたが、共犯者を白状しなかった。 以上は、「義人ジミー」のホンの荒筋である。枚数が長くなることが気になって非常に不完全にしか書けなかった。 こゝには、インタナショナルの精神と、帝国主・・・<黒島伝治「反戦文学論」青空文庫>
  16. ・・・ 老人は、身動きも出来ないように七八本の頑固な手で掴まれている二人の傍へ近づいて執拗に、白状させねばおかないような眼つきをして、何か露西亜語で訊ねた。 吉田も小村も露西亜語は分らなかった。でも、老人の眼つきと身振りとで、老人が、彼等・・・<黒島伝治「雪のシベリア」青空文庫>
  17. ・・・もうこうなっちゃあ智慧も何も、有ったところで役に立たねえ、有体に白状すりゃこんなもんだ。 女房は眉を皺めながら、「それもそうだろうが汝そうして当らない時はどうするつもりだエ。「ハハハ、どうもならねえそう聞かれちゃあ。生きてる中は・・・<幸田露伴「貧乏」青空文庫>
  18. ・・・獲て言うなお前言うまいあなたの安全器を据えつけ発火の予防も施しありしに疵もつ足は冬吉が帰りて後一層目に立ち小露が先月からのお約束と出た跡尾花屋からかかりしを冬吉は断り発音はモシの二字をもって俊雄に向い白状なされと不意の糺弾俊雄はぎょッとした・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  19. ・・・率直に白状してしまった。「僕にやらせて下さい。僕に、」ろくろく考えもせず、すぐに大声あげて名乗り出たのは末弟である。がぶがぶ大コップの果汁を飲んで、やおら御意見開陳。「僕は、僕は、こう思いますねえ。」いやに、老成ぶった口調だったので、み・・・<太宰治「愛と美について」青空文庫>
  20. ・・・ちゃんと白状していやがるのだ。ペテロに何が出来ますか。ヤコブ、ヨハネ、アンデレ、トマス、痴の集り、ぞろぞろあの人について歩いて、脊筋が寒くなるような、甘ったるいお世辞を申し、天国だなんて馬鹿げたことを夢中で信じて熱狂し、その天国が近づいたな・・・<太宰治「駈込み訴え」青空文庫>
  21. ・・・何もかも白状した。しかし裁判官達には、おれがなぜそんな事をしたか分からない。「襟だって価のある物品ではありませんか」と、裁判官も検事も云うのである。「あいつはわたくしを滅亡させたのです。わたくしの生涯を破壊したのです。あいつが最初電・・・<著:ディモフオシップ 訳:森鴎外「襟」青空文庫>
  22. ・・・と実際のところを白状する。「それでも主人さ。これが俺のうちだと思えば何となく愉快だろう。所有と云う事と愛惜という事は大抵の場合において伴なうのが原則だから」と津田君は心理学的に人の心を説明してくれる。学者と云うものは頼みもせぬ事を一々説・・・<夏目漱石「琴のそら音」青空文庫>
  23. ・・・「真剣のところを白状しなくっちゃいけないよ。いいかげんなことを言って引っ張るくらいなら、いっそきっぱり今のうちに断わるほうが得策だから」「いまさら断わるなんて、僕はごめんだなあ。実際叔父さん、僕はあの人が好きなんだから」 重吉の・・・<夏目漱石「手紙」青空文庫>
  24. ・・・ 私は白状する。実に苦しいことだが白状する。――若しこの横われるものが、全裸の女でなくて全裸の男だったら、私はそんなにも長く此処に留っていたかどうか、そんなにも心の激動を感じたかどうか―― 私は何ともかとも云いようのない心持ちで興奮・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  25. ・・・わたくしはただいま白状いたします。わたくしはもう十六年前にあなたに恋をいたしていました。あなたが高等学校をお出になったばっかりの世慣れない青年でいらっしゃった時、わたくしはもうあなたに恋をいたしていました。しかしわたくしはあなたに誓います。・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  26. ・・・なお正直にも彼は銭を多く貰いし時の思いがけなきうれしさをも白状せり。仙人のごとき仏のごとき子供のごとき神のごとき曙覧は余は理想界においてこれを見る、現実界の人間としてほとんど承認するあたわず。彼の心や無垢清浄、彼の歌や玲瓏透徹。 貧、か・・・<正岡子規「曙覧の歌」青空文庫>
  27. ・・・ この宣伝書を読んでしまったときは、白状しますが、私たちはしばらくしんとしてしまったのです。どうも理論上この反対者の主張が勝っているように思われたのであります。それとて、私も、又トルコから来たその六人の信者たちも、ビジテリアンをやめ・・・<宮沢賢治「ビジテリアン大祭」青空文庫>
  28. ・・・ほんとに白状しよう、わきを向いて居なされ――、お互さまじゃよ!第二の精霊 わしの目玉の黒い内はハハハハ…… マ良いワ、があのシリンクスの美くしさと云うたら……ま十年若かったらトナ、お互に思うのも無理であるまいと自分できめて居るのじゃ・・・<宮本百合子「葦笛(一幕)」青空文庫>
  29. ・・・スチルネルと同じように、Hegel を本尊にしてはいるが、ヘエゲルの本を本当に読んだのではないと、後で自分で白状している。スチルネルが鋭い論理で、独創の議論をしたのとは違って、大抵前人の言った説を誇張したに過ぎない。有名な、占有は盗みだとい・・・<森鴎外「食堂」青空文庫>
  30. ・・・しかし彼らには貧乏であるという事のほかになんにも白状すべきことがない。彼らは黙って静かにその苦しみに堪える。むしろある遠隔な土地へ行くためにはその苦しみが当然であることを感じている。たとえ眠られぬ真夜中に、堅い腰掛けの上で痛む肩や背や腰を自・・・<和辻哲郎「停車場で感じたこと」青空文庫>