はく‐しょく【白色】例文一覧 21件

  1. ・・・庭は常に春の如く、かなり広い庭は、ことごとく打ちたがやされて畑になってはいるが、この主人、ただの興覚めの実利主義者とかいうものとは事ちがい、畑のぐるりに四季の草花や樹の花を品よく咲かせ、庭の隅の鶏舎の白色レグホンが、卵を産む度に家中に歓声が・・・<太宰治「家庭の幸福」青空文庫>
  2. ・・・あくまで之を摂取すれば、烏賊の細胞が彼女の肉体の細胞と同化し、柔軟、透明の白色の肌を確保するに到るであろうという、愚かな迷信である。けれども、不愉快なことには、彼女は、その試みに成功したという風聞がある。もう、ここに到っては、なにがなんだか・・・<太宰治「女人訓戒」青空文庫>
  3. ・・・ 街道には久しく村落がないが、西方には楊樹のやや暗い繁茂がいたるところにかたまって、その間からちらちら白色褐色の民家が見える。人の影はあたりを見まわしてもないが、青い細い炊煙は糸のように淋しく立ちがる。 夕日は物の影をすべて長く曳く・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  4. ・・・となく少しずつちがった形式で繰り返されながら、あらゆる異種の要素がおのずから消化され同化され、無秩序の混乱から統整の固有文化が発育して来ると、たとえだれがどんなに骨を折ってみても、日本全体を赤色にしろ白色にしろただの一色に塗りつぶそうという・・・<寺田寅彦「カメラをさげて」青空文庫>
  5. ・・・ 原理の白色光に照らされた時に万象は各自に特有な色彩を現わして柳は緑に花は紅に見える。しかし緑色の宣伝する人は太陽の前に緑色ガラスのスクリーンをかけて、世の中を緑色にしてしまおうと考えているかのように見える場合がある。もしも花が緑になら・・・<寺田寅彦「神田を散歩して」青空文庫>
  6. ・・・従って白色光を組成する各種の波のうちでも青や紫の波が赤や黄の波よりも多く散らされる。それで塵の層を通過して来た白光には、青紫色が欠乏して赤味を帯び、その代りに投射光の進む方向と直角に近い方向には、青味がかった色の光が勝つ道理である。遠山の碧・・・<寺田寅彦「塵埃と光」青空文庫>
  7. ・・・ これに反して目のほうでは白色の中から赤や緑を抜き出す事が不可能であり、画面から汚点を除却して見る事はどうしてもできない。 このような本質的の区別がありはするが、蓄音機のあまりにはなはだしい雑音はやはり耳ざわりには相違ない。しかし一・・・<寺田寅彦「蓄音機」青空文庫>
  8. ・・・トルストイのおとぎ話に牛乳の白色という観念を盲者に理解させようとしてむだ骨折りをする話がある。雪のようだと言えばそんなに冷たいかとこたえ白うさぎのようだと言えばそんなに毛深い柔らかいのかと聞きかえした。 それでもし生まれつき盲目でその上・・・<寺田寅彦「物理学と感覚」青空文庫>
  9. ・・・純潔な白色でさえついに余の眼には触れずに済んだ。先生の食卓には常の欧洲人が必要品とまで認めている白布が懸っていなかった。その代りにくすんだ更紗形を置いた布がいっぱいに被さっていた。そうしてその布はこの間まで余の家に預かっていた娘の子を嫁づけ・・・<夏目漱石「ケーベル先生」青空文庫>
  10. ・・・画を専門になさる、あなた方の方から云うと、同じ白色を出すのに白紙の白さと、食卓布の白さを区別するくらいな視覚力がないと視覚の発達した今日において充分理想通りの色を表現する事ができないと同様の意義で、――文学者の方でも同性質、同傾向、同境遇、・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  11. ・・・なんでもかまわないから、白色のものさえあればよい。ネギの白味、豚の白味、茶碗の欠片、白墨など。細い板の上にそれらのどれかをくくりつけ、先の方に三本ほど、内側にまくれたカギバリをとりつける。そして、オモリをつけて沈めておくと、タコはその白いも・・・<火野葦平「ゲテ魚好き」青空文庫>
  12. ・・・壁の貼紙は明色、ほとんど白色にして隠起せる模様及金箔の装飾を施せり。主人クラウヂオ。(独窓の傍に座しおる。夕陽夕陽の照す濡った空気に包まれて山々が輝いている。棚引いている白雲は、上の方に黄金色の縁を取って、その影は灰色に見えている。・・・<著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外「痴人と死と」青空文庫>
  13. ・・・なるほどやっぱり陳氏だ、お経にある青色青光、黄色黄光、赤色赤光、白色白光をやったんだなと、私はつくづく感心してそれを見上げました。全くその蓮華のはなびらは、ニュウファウンドランド島、ヒルテイ村ビジテリアン大祭の、新鮮な朝のそらを、かすかに光・・・<宮沢賢治「ビジテリアン大祭」青空文庫>
  14. ・・・ ブルジョア国の革命的プロレタリアートは、同じ頃、盛んにメーデー闘争の準備のために白色テロルと争いながら活躍している。 が、プロレタリアートが勝利したソヴェト同盟では、ほんとに解放されたプロレタリアート祝祭準備だ。 八時間労働が・・・<宮本百合子「勝利したプロレタリアのメーデー」青空文庫>
  15.  荒漠たる原野――殊に白雪におおわれて無声の呪われた様な高原に次第次第に迫って来る夜はまことに恐ろしいほど厳然とした態度をもって居る。 灰色と白色との合するところに細く立木が並んで居るほか植物は影さえもなく町に通わなけれ・・・<宮本百合子「どんづまり」青空文庫>
  16. ・・・ 日本のように、資本主義独裁と白色テロールの旺盛なところで、階級闘争は激化し、イディオロギー的差異は有無を云わせず作家の陣営を決定しつつある。既に一九二七年、右翼的固執を示した労芸の内部の情勢が三年間停止している筈はない。前田河が発表す・・・<宮本百合子「ニッポン三週間」青空文庫>
  17. ・・・革命十四年目にあるソヴェト・ロシアの絵は、勝利したプロレタリアート管理の下に拡大されつつある生産を農業の集団化を記念碑的に表現している。白色テロルと戦いつつある日本の上野におけるプロレタリア美術展の画は、日常闘争の報告と、階級意識への熱心な・・・<宮本百合子「プロレタリア美術展を観る」青空文庫>
  18. ・・・一九二九年来プロレタリア解放運動における革命的プロレタリアートの役割、実力、指導権が、ひどい白色テロに抗して強化されつつある。その革命的大衆によって、「ナップ」は実践によって唯一の彼らの階級的芸術団体と認められたのだ、と。 これは、五ヵ・・・<宮本百合子「文芸時評」青空文庫>
  19. ・・・乾けば素焼のように素朴な白色を現した。だが、その表面に一度爪が当ったときは、この湿疹性の白癬は、全図を拡げて猛然と活動を開始した。 或る日、ナポレオンは侍医を密かに呼ぶと、古い太鼓の皮のように光沢の消えた腹を出した。侍医は彼の傍へ、恭謙・・・<横光利一「ナポレオンと田虫」青空文庫>
  20. ・・・花びらのとがった先だけが紅色に薄くぼかされていて、あとの大部分は白色である。この手の花が最も普通であったように思う。しかし舟が、葉や花を水に押し沈めながら進んで行くうちに、何となく周囲の様子が変わってくる。いつの間にか底紅の花の群落へ突入し・・・<和辻哲郎「巨椋池の蓮」青空文庫>
  21. ・・・その黄色や白色は非常に鮮やかで輝いて見える。さらにまれには、しめじ茸の一群を探しあてることもある。その鈍色はいかにも高貴な色調を帯びて、子供の心に満悦の情をみなぎらしてくれる。そうしてさらに一層まれに、すなわち数年の間に一度くらい、あの王者・・・<和辻哲郎「茸狩り」青空文庫>