はく‐ふ【白布】例文一覧 15件

  1. ・・・白衣に白布の顱巻したが、面こそは異形なれ。丹塗の天狗に、緑青色の般若と、面白く鼻の黄なる狐である。魔とも、妖怪変化とも、もしこれが通魔なら、あの火をしめす宮奴が気絶をしないで堪えるものか。で、般若は一挺の斧を提げ、天狗は注連結いたる半弓に矢・・・<泉鏡花「茸の舞姫」青空文庫>
  2. ・・・が、鳥旦那は――鷺が若い女になる――そんな魔法は、俺が使ったぞ、というように知らん顔して、遠めがねを、それも白布で巻いたので、熟とどこかの樹を枝を凝視めていて、ものも言わない。 猟夫は最期と覚悟をした。…… そこで、急いで我が屋へ帰・・・<泉鏡花「神鷺之巻」青空文庫>
  3. ・・・あとへ続くと、須弥壇も仏具も何もない。白布を蔽うた台に、経机を据えて、その上に黒塗の御廚子があった。 庫裡の炉の周囲は筵である。ここだけ畳を三畳ほどに、賽銭の箱が小さく据って、花瓶に雪を装った一束の卯の花が露を含んで清々しい。根じめとも・・・<泉鏡花「燈明之巻」青空文庫>
  4. ・・・ 新所帯の仏壇とてもないので、仏の位牌は座敷の床の間へ飾って、白布をかけた小机の上に、蝋燭立てや香炉や花立てが供えられてある。お光はその前に坐って、影も薄そうなションボリした姿で、線香の煙の細々と立ち上るのをじっと眺めているところへ、若・・・<小栗風葉「深川女房」青空文庫>
  5. ・・・それから電灯がついて三十人に近い会衆は白布のテーブルを間にして、両側の椅子に席を取った。 主催笹川の左側には、出版屋から、特に今晩の会の光栄を添えるために出席を乞うたという老大家のH先生がいる。その隣りにはモデルの一人で発起人となった倉・・・<葛西善蔵「遁走」青空文庫>
  6. ・・・ 勿論、彼等は、もう、白布の袋の外観によって、内容を判断し得るほど、慰問袋には馴れていた。彼等は、あまりにふくらんだ、あまりに嵩ばったやつを好まなかった。そういう嵩ばったやつには、仕様もないものがつめこまれているのにきまっていた。 ・・・<黒島伝治「前哨」青空文庫>
  7. ・・・同じく祭りのための設けとは知られながら、いと長き竿を鉾立に立てて、それを心にして四辺に棒を取り回し枠の如くにしたるを、白布もて総て包めるものありて、何とも悟り得ず。打見たるところ譬えば糸を絡う用にすなるいとわくというもののいと大なるを、竿に・・・<幸田露伴「知々夫紀行」青空文庫>
  8. ・・・アグリパイナは折しも朝の入浴中なりしを、その死の確報に接し、ものも言わずに浴場から躍り出て、濡れた裸体に白布一枚をまとい、息ひきとった婿君の部屋のまえを素通りして、風の如く駈け込んでいった部屋は、ネロの部屋であった。三歳のネロをひしと抱きし・・・<太宰治「古典風」青空文庫>
  9. ・・・ 姉の左腕の傷はまだ糸が抜けず、左腕を白布で首に吊っている。義兄は、相変らず酔っていて、「おもて沙汰にしたくねえので、きょうまであちこち心当りを捜していたのが、わるかった。」 姉はただもう涙を流し、若い者の阿呆らしい色恋も、ばか・・・<太宰治「犯人」青空文庫>
  10. ・・・テエブルの白布も、テエブルのうえの草花も、窓のそとの流れ去る風景も、不愉快ではない。僕はぼんやりビイルを呑む。」「女にも一杯ビイルをすすめる。」「いや、すすめない。女には、サイダアをすすめる。」「夏かね?」「秋だ。」「た・・・<太宰治「雌に就いて」青空文庫>
  11. ・・・先生の食卓には常の欧洲人が必要品とまで認めている白布が懸っていなかった。その代りにくすんだ更紗形を置いた布がいっぱいに被さっていた。そうしてその布はこの間まで余の家に預かっていた娘の子を嫁づける時に新調してやった布団の表と同じものであった。・・・<夏目漱石「ケーベル先生」青空文庫>
  12. ・・・只春の波のちょろちょろと磯を洗う端だけが際限なく長い一条の白布と見える。丘には橄欖が深緑りの葉を暖かき日に洗われて、その葉裏には百千鳥をかくす。庭には黄な花、赤い花、紫の花、紅の花――凡ての春の花が、凡ての色を尽くして、咲きては乱れ、乱れて・・・<夏目漱石「幻影の盾」青空文庫>
  13. ・・・イキレた空気の中に電燈が煌いている。白布をかけたテーブルがあっちこっちにあり、大きい長椅子がある。ピアノがガンガン鳴る。弾いてるのは赤い服きた瘠せた女だ。肩の骨をだして髪をふりながら自棄に鳴らしている。 長椅子の上では、やっと大人になり・・・<宮本百合子「ソヴェト文壇の現状」青空文庫>
  14. ・・・ 店と云えば、僅か二尺に三尺位の長方形の台がある許りだ。白布がいやに折目正しく、きっぱりかけてある。その上に、十二三箇小さな、黄色い液体の入った硝子瓶がちらばら置かれている。白布の前から一枚ビラが下っていた。「純良香水。一瓶三十五銭・・・<宮本百合子「粗末な花束」青空文庫>
  15. ・・・一寸見ると青年団員か何かかと思われるカーキ色ずくめのその若い男は、汽車が古河という小さい駅に停った時、どうしたわけかグズグズに繩のゆるんだ白布張りの行李を自分でかついで乗り込んで来た。そして、場席はほかのところにいくらも空いているのに、子供・・・<宮本百合子「東京へ近づく一時間」青空文庫>