はて‐な例文一覧 30件

  1. ・・・と自分をよぶ声がします。はてなと思って見回しましたがだれも近くにいる様子はないから羽をのばそうとしますと、また同じように「燕、燕」とよぶものがあります。燕は不思議でたまりません。ふと王子のお顔をあおいで見ますと王子はやさしいにこやかな笑みを・・・<有島武郎「燕と王子」青空文庫>
  2. ・・・ はてな。人が殺されたという事実がそれだろうか。自分が、このフレンチが、それに立ち会っていたという事実がそれだろうか。死が恐ろしい、言うに言われぬ苦しいものだという事実がそれであろうか。 いやいや。そんな事ではない。そんなら何だろう・・・<著:アルチバシェッフミハイル・ペトローヴィチ 訳:森鴎外「罪人」青空文庫>
  3. ・・・「はてな。」 立花は思わず、膝をついて、天井を仰いだが、板か、壁か明かならず、低いか、高いか、定でないが、何となく暗夜の天まで、布一重隔つるものがないように思われたので、やや急心になって引寄せて、袖を見ると、着たままで隠れている、外・・・<泉鏡花「伊勢之巻」青空文庫>
  4. ・・・御先祖の霊前に近く、覚悟はよいか、嬉しゅうござんす、お妻の胸元を刺貫き――洋刀か――はてな、そこまでは聞いておかない――返す刀で、峨々たる巌石を背に、十文字の立ち腹を掻切って、大蘇芳年の筆の冴を見よ、描く処の錦絵のごとく、黒髪山の山裾に血を・・・<泉鏡花「開扉一妖帖」青空文庫>
  5. ・・・「時ならぬ時分に、部屋へぼんやりと入って来て、お腹が痛むのかと言うて聞いたでござりますが、雑所先生が小使溜へ行っているように仰有ったとばかりで、悄れ返っておりまする。はてな、他のものなら珍らしゅうござりませぬ。この児に限って、悪戯をして・・・<泉鏡花「朱日記」青空文庫>
  6. ・・・「余り希代だから、はてな、これは植木屋の荷じゃあなくッて、どこへか小屋がけをする飾につかう鉢物で、この爺は見世物の種かしらん、といやな香を手でおさえて見ていると、爺がな、クックックッといい出した。 恐しい鼻呼吸じゃあないか、荷車に積・・・<泉鏡花「政談十二社」青空文庫>
  7. ・・・……あの老尼は、お米さんの守護神――はてな、老人は、――知事の怨霊ではなかったか。 そんな事まで思いました。 円髷に結って、筒袖を着た人を、しかし、その二人はかえって、お米さんを秘密の霞に包みました。 三十路を越えても、窶れても・・・<泉鏡花「雪霊記事」青空文庫>
  8. ・・・「おや、はてな、獅子浜へ出る処だと思ったが。」「いいえ、多比の奥へ引込んだ、がけの処です。」「ああ、竜が、爪で珠をつかんでいようという肝心の処だ。……成程。」「引返しましょうよ。」「車はかわります。」 途中では、遥に・・・<泉鏡花「半島一奇抄」青空文庫>
  9. ・・・…… はてな、そういえば、朝また、ようをたした時は、ここへ白い手が、と思う真中のは、壁が抜けて、不状に壊れて、向うが薮畳みになっていたのを思出す。……何、昨夜は暗がりで見損ったにして、一向気にも留めなかったのに。…… ふと、おじさん・・・<泉鏡花「古狢」青空文庫>
  10. ・・・ ふッと眼が覚めると、薄暗い空に星影が隠々と見える。はてな、これは天幕の内ではない、何で俺は此様な処へ出て来たのかと身動をしてみると、足の痛さは骨に応えるほど! 何さまこれは負傷したのに相違ないが、それにしても重傷か擦創かと、傷・・・<著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷「四日間」青空文庫>
  11. ・・・ 兄は、妻のお辞儀がはじまらぬうちに、妻に向ってお辞儀をした。私は、はらはらした。お辞儀がすむと、兄はさっさと二階へ行った。 はてな? と思った。何かあったな、と私は、ひがんだ。この兄は、以前から機嫌の悪い時に限って、このように妙に・・・<太宰治「故郷」青空文庫>
  12. ・・・アンリ・ベック。はてな? わからない。エレンブルグとちがうか。冗談じゃない。アレクセーフ。露西亜人じゃないよ。とんでもない。ネルヴァル。ケラア。シュトルム。メレディス。なにを言っているのだ。あッ、そうだ、デュルフェ。ちがうね。デュルフェって・・・<太宰治「八十八夜」青空文庫>
  13. ・・・ 部屋へあがって、座ぶとんに膝を折って正坐し、「私は、正気ですよ。正気ですよ。いいですか? 信じますか?」 とにこりともせず、そう言った。 はてな? とも思ったが、私は笑って、「なんですか? どうしたのです。あぐらになさ・・・<太宰治「女神」青空文庫>
  14. ・・・どうも余にからかっているようにも見えない。はてな真面目で云っているとすれば何か曰くのある事だろう。津田君と余は大学へ入ってから科は違うたが、高等学校では同じ組にいた事もある。その時余は大概四十何人の席末を汚すのが例であったのに、先生はきぜん・・・<夏目漱石「琴のそら音」青空文庫>
  15. ・・・と降参人たる資格を忘れてしきりに汗気かんきえんを吹いている、すると出し抜に後ろから Sir ! と呼んだものがある、はてな滅多な異人に近づきはないはずだがとふり返ると、ちょっと人を狼狽せしむるに足る的の大巡査がヌーッと立っている、こちらはこ・・・<夏目漱石「自転車日記」青空文庫>
  16. ・・・首っ吊りしてやがらあ。はてな、俺のバスケットをどこへ持って行きやがったんだろう。おや、踏んづけてやがら、畜生! 叶わねえなあ、こんな手合にかかっちゃ。だが、この野郎白っぱくれて、網を張ってやがるんじゃねえかな。バスケットの中味を覗いたのたあ・・・<葉山嘉樹「乳色の靄」青空文庫>
  17. ・・・ はてな。誰も客間には這入って来ない。廊下から外へ出る口の戸をしずかに開けて、またしずかに締めたらしい。中庭を通り抜ける人影がある。それが女の姿で、中庭から町へ出て行く。オオビュルナンはほっと息を衝いた。「そうだ。マドレエヌの所へ友達の・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  18. ・・・「大すきです。誰だってあの人をきらいなものはありません」「けれどもあの花はまっ黒だよ」「いいえ、黒く見えるときもそれはあります。けれどもまるで燃えあがってまっ赤な時もあります」「はてな、お前たちの眼にはそんなぐあいに見えるの・・・<宮沢賢治「おきなぐさ」青空文庫>
  19. ・・・いや。はてな。あなたも、もうかんむりをかぶってるではありませんか。」 おみなえしは、ベゴ石の上に、このごろ生えた小さな苔を見て、云いました。 ベゴ石は笑って、「いやこれは苔ですよ。」「そうですか。あんまり見ばえがしませんね。・・・<宮沢賢治「気のいい火山弾」青空文庫>
  20. ・・・いやはてな。おお立派だ。あなたの顔がはっきり見える」「あなたもよ」「ええ、とうとう、僕たち二人きりですね」「まあ、青白い火が燃えてますわ。まあ地面と海も。けど熱くないわ」「ここは空ですよ。これは星の中の霧の火ですよ。僕たちの・・・<宮沢賢治「シグナルとシグナレス」青空文庫>
  21. ・・・「しこん、しこんと。はてな聞いたようなことだがどうもよくわかりません。やはり知らないのですな。」みんなはがっかりしてしまいました。なんだ、紫紺のことも知らない山男など一向用はないこんなやつに酒を呑ませたりしてつまらないことをした。もうあ・・・<宮沢賢治「紫紺染について」青空文庫>
  22. ・・・じゃ僕もう失礼します。はてな、何か云い残したことがあるようだ。」「お星さまのいろのことですわ。」「ああそうそう、だけどそれは今度にしましょう。僕あんまり永くお邪魔しちゃいけないから。」「あら、いいんですよ。」「僕又来ますから・・・<宮沢賢治「土神ときつね」青空文庫>
  23. ・・・それよりは、その、精神的に眼をつむって観念するのがいいでしょう、わがこの恐れるところの死なるものは、そもそも何であるか、その本質はいかん、生死巌頭に立って、おかしいぞ、はてな、おかしい、はて、これはいかん、あいた、いた、いた、いた、いた、」・・・<宮沢賢治「楢ノ木大学士の野宿」青空文庫>
  24. ・・・「おやおやみんな改宗しましたね、あんまりあっけない、おや椅子も丁度いい、はてな一つあいてる、そうだ、さっきのヒルガードに似た人だけまだ頑張ってる。」 なるほどさっきのおしまいの喜劇役者に肖た人はたった一人異教徒席に座って腕を組んだり・・・<宮沢賢治「ビジテリアン大祭」青空文庫>
  25. ・・・酒はどうかと云うと、厭ではないと云います。はてなと思って好く聞いて見ると、飲んでも二三杯だと云うのですから、まさか肝臓に変化を来す程のこともないだろうと思います。栄養は中等です。悪性腫瘍らしい処は少しもありません」「ふん。とにかく見よう・・・<森鴎外「カズイスチカ」青空文庫>
  26. ・・・「随分己もお前も方々歩いて見たじゃないか」「ええ。それは歩くには歩きましたが」と云い掛けて、宇平は黙った。「はてな。歩くには歩いたが、何が悪かったと云うのか。構わんから言え」 宇平はやはり黙って、叔父の顔をじっと見ていたが、・・・<森鴎外「護持院原の敵討」青空文庫>
  27. ・・・「何だい。僕はまだ来たばかりで、なんにも知らないんだから、どしどし注意を与えてくれ給え。」「実は僕の内の縁がわからは、君の内の門が見えるので、妻の奴が妙な事を発見したというのだ。」「はてな。」「君が毎日出勤すると、あの門から・・・<森鴎外「鶏」青空文庫>
  28. ・・・「はてな。工面が悪いのかしら。」独言のように私は云った。「そうじゃございません。お泊になってから少し立ちますと、今なら金があるからと仰ゃって、今月末までの勘定を済ませておしまいになった位でございます。」もう十一月に入っているから、F・・・<森鴎外「二人の友」青空文庫>
  29. ・・・男。はてな。それではそのお話がわたくしの身の上に関係した事なのですか。貴夫人 大いに関係していますの。男。どうもちっとも思い当る事がありませんね。貴夫人。それは思い出させてお上げ申しますわ。ですけれど内証のお話で・・・<著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外「辻馬車」青空文庫>
  30. ・・・ハッと思うと、私の身体はまん円い物の上へどしゃりッと落ったのだ。はてな―ふわふわする。何ァんだ。他愛もない地球であった。私は地球を胸に抱きかかえて大笑いをしているのである。    まごついた夢 歩こうとするのに足がどちらへで・・・<横光利一「夢もろもろ」青空文庫>