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ひき‐いれ【×挽き入れ/引(き)入れ】例文一覧 29件

  1. ・・・ 房子はこう云いかけたまま、彼女自身の言葉に引き入れられたのか、急に憂鬱な眼つきになった。 ……電燈を消した二階の寝室には、かすかな香水のにおいのする薄暗がりが拡がっている。ただ窓掛けを引かない窓だけが、ぼんやり明るんで見えるのは、・・・<芥川竜之介「影」青空文庫>
  2. ・・・――いつかも修善寺の温泉宿で、あすこに廊下の橋がかりに川水を引入れた流の瀬があるでしょう。巌組にこしらえた、小さな滝が落ちるのを、池の鯉が揃って、競って昇るんですわね。水をすらすらと上るのは割合やさしいようですけれど、流れが煽って、こう、颯・・・<泉鏡花「貝の穴に河童の居る事」青空文庫>
  3. ・・・ 胡桃の根附を、紺小倉のくたびれた帯へ挟んで、踞んで掌を合せたので、旅客も引入れられたように、夏帽を取って立直った。「所縁にも、無縁にも、お爺さん、少し墓らしい形の見えるのは、近間では、これ一つじゃあないか――それに、近い頃、参詣が・・・<泉鏡花「燈明之巻」青空文庫>
  4. ・・・お神さんは私を引入れましたが、内に入りますと貴方どうでございましょう、土間の上に台があって、荒筵を敷いてあるんでございますよ、そこらは一面に煤ぼって、土間も黴が生えるように、じくじくして、隅の方に、お神さんと同じ色の真蒼な灯が、ちょろちょろ・・・<泉鏡花「湯女の魂」青空文庫>
  5. ・・・平生聞ゆるところの都会的音響はほとんど耳に入らないで、うかとしていれば聞き取ることのできない、物の底深くに、力強い騒ぎを聞くような、人を不安に引き入れねばやまないような、深酷な騒ぎがそこら一帯の空気を振蕩して起った。 天神川も溢れ、竪川・・・<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  6. ・・・とは、僕が、かの女のますます無邪気な様子に引き入れられて、思わず出した言葉だ。「そういう注文は困る、わ」吉弥は訴えるようにお袋をながめた。「じゃア」と、お袋は娘と僕とを半々に見て、「私に弾けなくッても困るから、やさしい物を一つやって・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  7. ・・・ これを要するに、兎が餅を搗いているといった時代の子供の知識はその生活状態と調和していたがために、何等不自然を感ずることなく、その話の中に引入れられたのであるが、いまの子供達の知識はかゝる現実に根拠を有しない空想を拒否するがために他・・・<小川未明「新童話論」青空文庫>
  8. ・・・然し先方は何のこだわりも無く、身を此方へ近づけると同時に、何の言葉も無く手をさしのべて、男の手を探り取ってやさしく握って中へ引入れんとした。触った其手は暖かであった、なよやかであった。其力はやわらかであった、たしかに鄙しく無い女の手であった・・・<幸田露伴「雪たたき」青空文庫>
  9. ・・・――大川のおかみさんは、私はだまされたという程にも思わないが、警察に入れば直ぐその日から食えなくなるような夫を、何んだって引き入れてくれたかと、そればかり口惜しいと云うのだった。中にいる夫に蜜柑どころか、この寒さに足袋さえ入れてやることが出・・・<小林多喜二「母たち」青空文庫>
  10. ・・・戸で逢ったる長兵衛殿を応用しおれはおれだと小春お夏を跳ね飛ばし泣けるなら泣けと悪ッぽく出たのが直打となりそれまで拝見すれば女冥加と手の内見えたの格をもってむずかしいところへ理をつけたも実は敵を木戸近く引き入れさんざんじらしぬいた上のにわかの・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  11. ・・・ 黒い幌を掛けた俥は養生園の表庭の内まで引き入れてあった。おげんが皆に暇乞いして、その俥に乗ろうとする頃は、屋外は真暗だった。霜にでも成るように寒い晩の空気はおげんの顔に来た。暗い庭の外まで出て見送ってくれる人達の顔や、そこに立つ車夫の・・・<島崎藤村「ある女の生涯」青空文庫>
  12. ・・・ リストが音楽商の家の階段を気軽にかけ上がって、ピアノの譜面台の上に置き捨てられたショパンの作曲に眼をつけて、やがて次第に引入れられて弾き初める、そこへいったん失望して帰りかけたショパンがそっと這入って来て、リストと背中合せに同じ曲を弾・・・<寺田寅彦「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」青空文庫>
  13. ・・・これと似寄ったことでは、レーノルズの減摩油の作用の研究などもやはりそれまではほとんど物理学の圏外にあった問題をその圏内に引き入れたものだと言われよう。また同じレーノルズの砂の膨張性に関する研究は、その後あまり注目する人もなかったようである。・・・<寺田寅彦「物理学圏外の物理的現象」青空文庫>
  14. ・・・ もっともこれらの場合では、観客を一度完全にスクリーンの上の人物の内部へ引き入れてしまわなければならない。換言すれば観客を画中人物のまぶたの内側へ入れてしまわなければせっかくの技巧が意味をなさないことになる。しかし映画監督がそういう魔術・・・<寺田寅彦「耳と目」青空文庫>
  15. ・・・大勢が下車するその場の騒ぎに引入れられて何心もなく席を立ったが、すると車掌は自分が要求もせぬのに深川行の乗換切符を渡してくれた。 人家の屋根に日を遮られた往来には海老色に塗り立てた電車が二、三町も長く続いている。茅場町の通りから斜めにさ・・・<永井荷風「深川の唄」青空文庫>
  16. ・・・仙台堀と大横川との二流が交叉するあたりには、更にこれらの運河から水を引入れた貯材池がそこ此処にひろがっていて、セメントづくりの新しい橋は大小幾筋となく錯雑している。このあたりまで来ると、運河の水もいくらか澄んでいて、荷船の往来もはげしからず・・・<永井荷風「深川の散歩」青空文庫>
  17. ・・・其性行正しく妻に接して優しければ高運なれども、或は然らず世間に珍らしからぬ獣行男子にして、内君を無視し遊冶放蕩の末、遂には公然妾を飼うて内に引入れ、一家妻妾群居の支那流を演ずるが如き狂乱の振舞もあらば之を如何せん。従前の世情に従えば唯黙して・・・<福沢諭吉「新女大学」青空文庫>
  18. ・・・まだ肩あげがあって桃われが善く似あうと人がいった位の無垢清浄玉の如きみイちャんを邪道に引き入れた悪魔は僕だ。悪魔、悪魔には違いないがしかしその時自分を悪魔とも思わないしまたみイちャんを魔道に引き入れるとも思わなかった。この間の消息を知ってる・・・<正岡子規「墓」青空文庫>
  19. ・・・ 霧の立ちこめた中に只一人立って、足元にのびて居る自分の影を見つめ耳敏く木の葉に霧のふれる響と落葉する声を聞いて居ると自と心が澄んで或る無限のさかえに引き入れられる。 口に表わされない心の喜びを感じる。 彼の水の様な家々の屋根に・・・<宮本百合子「秋霧」青空文庫>
  20. ・・・そういう人柄の味を出そうとせず、その手前で、いって見ればうわ声で、性格の特徴をあらわそうとしているために、出しおしみされているところから来る弱さと、どっと迸ったようなところとむらがあって、何かみていて引き入れられきれないものがある。こうして・・・<宮本百合子「映画女優の知性」青空文庫>
  21. ・・・そこまでは比較的自然に運ばれて来た観客の感情がそのような場面に近づくにつれ次第に不自然な道どりに引き入れられて、いわゆるクライマックスでは一目瞭然たる張子の森林などの中に恋人たちとともに案内されるのは迷惑である。そういう点だの技術的な俗習、・・・<宮本百合子「映画の恋愛」青空文庫>
  22. ・・・ 彼は、他のものまで凍えさせては大変だと云う風で、一も二もなく火の気のある室内に籠を引入れた。籠は彼の手造りである。無骨な、それでも優しい暢やかな円天井を持った籠の中で、小鳥等は崩れる薔薇の響をきき乍ら、暖かい夢を結ぶようになった。・・・<宮本百合子「餌」青空文庫>
  23. 一、六つばかりの正月丁度旅順が陥落し、若かった母が、縁側に走り出、泣きながら「万歳!」と叫んだ時、私も夢中で「バンザイ!」と叫んでオイオイ泣いた。わけが分ってではない、母の感激に引き入れられたのでしょう。もう一つは、十六歳の・・・<宮本百合子「記憶に残る正月の思い出」青空文庫>
  24. ・・・ そのような文学の動きは、新しい社会的な素地から作家と作品を成長させて来たばかりでなく、当時既に作家としてある程度の活動と業績を重ねた作家たちをも、各自の角度に従ってこの文学運動の中に引き入れた。先に触れた藤森成吉、秋田雨雀のほか片岡鉄・・・<宮本百合子「昭和の十四年間」青空文庫>
  25. ・・・間に、田舎万歳の野卑な懸合話をしたり、頭を扇ではたき合ったりするが、愈々本気で水芸にかかると、たかみの見物をしているなほ子までおのずとその気合に引き入れられる程、巧に、真面目にやった。気のない見物を当てにせず、芸当を自分でやってその出来栄え・・・<宮本百合子「白い蚊帳」青空文庫>
  26. ・・・私は大急で走けつけて彼の手を引っぱって人道の方に引き入れた。私はもうがっかりしてしまった。こんなじいやをつれて来てどうしてよかろうと。 私は尚心配がまして来た。今のようでは一人はなしてあるかせればきっと死んででもしまうだろうと。 そ・・・<宮本百合子「心配」青空文庫>
  27. ・・・こわいものみたさでそれに気分を引き入れられるような、弱い女の無責任を演じてはならないのです。 特に若い日本の婦人たちは戦争ちょう発という言葉に対してそれは貴女も未亡人にしてみせますよといわれているということを感じるだろうと思います。私た・・・<宮本百合子「世界は平和を欲す」青空文庫>
  28. ・・・ 横浜から舟に載せた馬も着いていたので、別当に引き入れさせた。 勝手道具を買う。膳椀を買う。蚊帳を買う。買いに行くのは従卒の島村である。 家主はまめな爺さんで、来ていろいろ世話を焼いてくれる。膳椀を買うとき、爺さんが問うた。・・・<森鴎外「鶏」青空文庫>
  29. ・・・彼らを新しい運動に引き入れたのは、確かに芸術的魅力であったに相違ない。そうしてこの感激が彼らの生活全体を更新しないではやまない力となったに相違ない。これは私の推測である。しかしこの推測なくしては私は古代の芸術をも文化をも解することができない・・・<和辻哲郎「偶像崇拝の心理」青空文庫>