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ぶ‐かっこう〔‐カクカウ|‐カツカウ〕【不格好/不×恰好】例文一覧 18件

  1. ・・・ 函館の停車場に着くと彼はもうその建物の宏大もないのに胆をつぶしてしまった。不恰好な二階建ての板家に過ぎないのだけれども、その一本の柱にも彼れは驚くべき費用を想像した。彼れはまた雪のかきのけてある広い往来を見て驚いた。しかし彼れの誇りは・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  2. ・・・病自家薬の製造発売を思い立ち、どう工面して持って来たのか、なけなしの金をはたいて、河原町に九尺二間の小さな店を借り入れ、朝鮮の医者が書いた処方箋をたよりに、垢だらけの手で、そら豆のような莫迦に大きな、不恰好な丸薬を揉みだした。 そして、・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  3. ・・・短い不恰好な枝は、その年も若葉を着けた。微かな甘い香がプンと彼の鼻へ来た。彼は縁側に凭れて、五月の日のあたった林檎の花や葉を見ていたが、妻のお島がそこへ来て何気なく立った時は、彼は半病人のような、逆上せた眼付をしていた。「なんだか、俺は・・・<島崎藤村「岩石の間」青空文庫>
  4. ・・・足袋屋の小僧が木の型に入れて指先の形を好くしてくれたり、滑かな石の上に折重ねて小さな槌でコンコン叩いてくれたりした、その白い新鮮な感じのする足袋の綴じ紙を引き切って、甲高な、不恰好な足に宛行って見た。「どうして、田舎娘だなんて、真実に馬・・・<島崎藤村「足袋」青空文庫>
  5. ・・・私は自身の不恰好に気づいた。悲しく思った。ほのあたたかいこぶしが、私の左の眼から大きい鼻にかけて命中した。眼からまっかな焔が噴き出た。私はそれを見た。私はよろめいたふりをした。右の耳朶から頬にかけてぴしゃっと平手が命中した。私は泥のなかに両・・・<太宰治「逆行」青空文庫>
  6. ・・・私は、外に出る時には、たいていの持ち物は不恰好でも何でも懐に押し込んでしまう事にしているのであるが、まさかステッキは、懐へぶち込む事は出来ない。肩にかつぐか、片手にぶらさげて持ち運ばなければならぬ。厄介なばかりである。おまけに犬が、それを胡・・・<太宰治「服装に就いて」青空文庫>
  7. ・・・楊樹にさし入った夕日の光が細かな葉を一葉一葉明らかに見せている。不恰好な低い屋根が地震でもあるかのように動揺しながら過ぎていく。ふと気がつくと、車は止まっていた。かれは首を挙げてみた。 楊樹の蔭を成しているところだ。車輛が五台ほど続いて・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  8. ・・・ 犀というものがどうにも不格好なものである。しかしどうしてこれが他の多くの動物よりもより多く「不格好」という形容詞に対する特権を享有することになるのか。 人間の使ういろいろな器具器械でも一目見てなんとなくいい格好をしたものはたいてい・・・<寺田寅彦「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」青空文庫>
  9. ・・・なんとなく不格好に、しかし非常に熱心に踊っているのがおかしいようでもあったが、ハイカラでうまく踊る他の多くのダンディよりこのほうが自分にはいい気持ちを与えた。舞踏というものは始めて見たが、なるほどセンシュアルな暗示に富んだものである。これを・・・<寺田寅彦「旅日記から(明治四十二年)」青空文庫>
  10. ・・・よく見ると簑は主に紅葉の葉の切れはしや葉柄を綴り集めたものらしかったが、その中に一本図抜けて長い小枝が交じっていて、その先の方は簑の尾の尖端から下へ一寸ほども突き出て不恰好に反りかえっていた。それがこの奇妙な紡錘体の把柄とでも云いたいような・・・<寺田寅彦「小さな出来事」青空文庫>
  11. ・・・自分の知っている狭い範囲だけでも蕪村、高陽のごとき人の傑作に対する時は、そこに幾多の不細工あるいは不恰好が優れた器用と手際との中に巧みに入り乱れ織り込まれて、ちょうど力強い名匠の音楽の演奏を聞くような感じがするのである。殊に例えば金冬心や石・・・<寺田寅彦「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」青空文庫>
  12. ・・・幼いものは竹藪へつけこんでは落ち葉に交って居る不格好な実を拾っては噛むのである。太十も疱瘡に罹るまでは毎日懐へ入れた枳の実を噛んで居た。其頃はすべての病が殆ど皆自然療法であった。枳の実で閉塞した鼻孔を穿ったということは其当時では思いつきの軽・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  13. ・・・果物のうちで不恰好なものといったら凡そ其骨のような枳の如きものはあるまい。其枳の為に救われたということで最初から彼の普通でないことが示されて居るといってもいい。蘇生したけれど彼は満面に豌豆大の痘痕を止めた。鼻は其時から酷くつまってせいせいす・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  14. ・・・総子は、不恰好な足駄の包や傘など一どきに抱えて立ち上り、「さ、これ」と云った。 他の者はもう寝ている。総子の部屋で茶をのみながら、なほ子は母の容体を話した。「それで?――誰かに診せたの」「まだ」「そんなことってあるも・・・<宮本百合子「白い蚊帳」青空文庫>
  15. ・・・ 足袋が目立って不恰好だ。 砂糖が二銭上ったと云いながら黄色い大黒のついた財布を出して少し震える手で小銭をかぞえて縁側にならべる。しゃぼんを一銭まけさせたと手柄顔に話す。 帰る時にミノルカが生んだのだと云う七面鳥の卵ほど大きい卵・・・<宮本百合子「農村」青空文庫>
  16. ・・・その他に執着し、こせこせとそれらを自分の家の中に詰め込むのが厭わしかった。市場の倉庫からサモワールだの箱だの鋏までくすねて来るのを見るのは厭しかった。その不恰好な置かたや塗料の匂いまで癪にさわった。彼のまわりでは主人が盗むばかりか、職人達が・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの伝記」青空文庫>
  17. ・・・第一この膝の上に抱えている不恰好にふくらんだ書類入鞄の中から二本の瓶を出してストラスナーヤの角の家へおき、次に新聞包を六十八番地へ必ず置き、三十分後には「勇敢な兵卒シュウェイクの冒険」を観るために写実劇場の椅子に間違いなく坐ってなければなら・・・<宮本百合子「モスクワの辻馬車」青空文庫>
  18. ・・・ 宇野浩二氏は親心のびくつく大切な心理を圧えることに用心をされたのではなく、不恰好にそれをださないことに用心をされたのであって、作者と作中人物とがここまで素早く身を躱して、眼にもとまらぬ早さである。この早さが私には受けとり難い。もっとは・・・<横光利一「作家の生活」青空文庫>