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まさ‐に【正に】例文一覧 30件

  1. ・・・ではその人間とはどんなものだと云うと、一口に説明する事は困難だが、苦労人と云う語の持っている一切の俗気を洗ってしまえば、正に菊池は立派な苦労人である。その証拠には自分の如く平生好んで悪辣な弁舌を弄する人間でも、菊池と或問題を論じ合うと、その・・・<芥川竜之介「兄貴のような心持」青空文庫>
  2. ・・・ 僕の顔をちらりと見るなり、正に嫣然と一笑したんだ。おやと思ったが間に合わない。こっちは木馬に乗っているんだから、たちまち女の前は通りすぎてしまう。誰だったかなと思う時には、もうわが赤い木馬の前へ、楽隊の連中が現れている。――」 我々は・・・<芥川竜之介「一夕話」青空文庫>
  3. ・・・が、三浦は澱みなく言を継いで、『これが僕にとっては、正に第一の打撃だった。僕は彼等の関係を肯定してやる根拠の一半を失ったのだから、勢い、前のような好意のある眼で、彼等の情事を見る事が出来なくなってしまったのだ。これは確か、君が朝鮮から帰って・・・<芥川竜之介「開化の良人」青空文庫>
  4. ・・・あの色の浅黒い顔は正に格二郎に違いない。殊に三味線を弾いている宇野は浩さん離れのした格さんである。 次手に顔のことを少し書けば、わたしは宇野の顔を見る度に必ず多少の食慾を感じた。あの顔は頬から耳のあたりをコオルド・ビフのように料理するが・・・<芥川竜之介「格さんと食慾」青空文庫>
  5. ・・・ 立花はあたかも死せるがごとし。「私からはじめますか、立花さん……立花さん……」 正にこの声、確にその人、我が年紀十四の時から今に到るまで一日も忘れたことのない年紀上の女に初恋の、その人やがて都の華族に嫁して以来、十数年間一度も・・・<泉鏡花「伊勢之巻」青空文庫>
  6. ・・・ 行懸り、言の端、察するに頼母しき紳士と思い、且つ小山を婆が目からその風采を推して、名のある医士であるとしたらしい。 正に大審院に、高き天を頂いて、国家の法を裁すべき判事は、よく堪えてお幾の物語の、一部始終を聞き果てたが、渠は実際、・・・<泉鏡花「政談十二社」青空文庫>
  7. ・・・しかもその雪なす指は、摩耶夫人が召す白い細い花の手袋のように、正に五弁で、それが九死一生だった私の額に密と乗り、軽く胸に掛ったのを、運命の星を算えるごとく熟と視たのでありますから。―― またその手で、硝子杯の白雪に、鶏卵の蛋黄を溶かした・・・<泉鏡花「雪霊記事」青空文庫>
  8. ・・・垣の崖になる、片隅に山吹があって、こんもりした躑躅が並んで植っていて、垣どなりの灯が、ちらちらと透くほどに二、三輪咲残った……その茂った葉の、蔭も深くはない低い枝に、雀が一羽、たよりなげに宿っていた。正に前刻の仔に違いない。…様子が、土から・・・<泉鏡花「二、三羽――十二、三羽」青空文庫>
  9. ・・・瀬戸内にこんな島があって、自分のような男を、ともかくも呑気に過さしてくれるかと思うと、正にこれ夢物語の一章一節、と言いたくなる。 酒を呑んで書くと、少々手がふるえて困る、然し酒を呑まないで書くと心がふるえるかも知れない。「ああ気の弱い男・・・<国木田独歩「酒中日記」青空文庫>
  10. ・・・韓退之所謂務去陳言戞々乎其難哉とは正に此謂いなり、若し古人の意を襲して即ち古人の田地の種獲せば是れ剽盗のみ。李白杜甫韓柳の徒何ぞ曽て古今を襲わん。独り漢文学然るに非ず。英のシエクスピールやミルトンや仏のパスカルやコルネイユや皆別に機軸を出さ・・・<幸徳秋水「文士としての兆民先生」青空文庫>
  11. ・・・あまりに数多い、あれもこれもの猟犬を、それは正に世界中のありとあらゆる種属の猟犬だったのかも知れない、その猟犬を引き連れて、意気揚々と狩猟に出たはよいが、わが家を数歩出るや、たちまち、その数百の猟犬は、てんでんばらばら、猟服美々しく着飾った・・・<太宰治「春の盗賊」青空文庫>
  12. ・・・卒業試験は正にこの原則に反するものである。」 それでは大学入学の資格はどうしてきめるかとの問に対して、「偶然に支配されるような火の試練でなく、一体の成績によればいい。これは教師にはよく分るもので、もし分らなければ罪はやはり教師にある・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  13. ・・・価値のあるものなら通過し、ないものは通過しないと決まっているのなら、私利私情などというものの入り込む余地はないではないかということになる。正にその通りである。それだのに実際上は事柄がその通り簡単にゆかないのは何故かというと、それは論文の「価・・・<寺田寅彦「学位について」青空文庫>
  14. ・・・三十にしてなお俗吏なりと云うような句があったと思うが、自分の今は正にそれである。今年の文官試験にも残念ながら落第してしまった。課長の処へ挨拶に行ったら、仕方がないまたやるさと云ってくれた。自分もそう思った。去年の試験にしくじった時もやはり仕・・・<寺田寅彦「枯菊の影」青空文庫>
  15. ・・・綺麗に刈りならした芝生の中に立って正に打出されようとする白い球を凝視していると芝生全体が自分をのせて空中に泛んでいるような気がしてくる。日射病の兆候でもないらしい。全く何も比較の尺度のない一様な緑の視界はわれわれの空間に対する感官を無能にす・・・<寺田寅彦「ゴルフ随行記」青空文庫>
  16. ・・・されど世に理窟をも感ぜず思想をも感ぜず詩歌をも感ぜず美術をも感ぜざるものあらば、そは正にこの輩なる事を忘るるなかれ。彼らの頭脳の組織は麁そこうにして覚り鈍き事その源因たるは疑うべからず」カーライルとショペンハウアとは実は十九世紀の好一対であ・・・<夏目漱石「カーライル博物館」青空文庫>
  17. ・・・一般の世間が評家に望むところは正にこれにほかならぬ。 ただ学校の教師には専門がある。担任がある。評家はここまで発達しておらぬ。たまには詩のみ評するもの、劇のみ品するものもあるが、しかしそれすら寥々たるものである。のみならずこれらの分類は・・・<夏目漱石「作物の批評」青空文庫>
  18. ・・・それから帰りに奈良へ寄って其処から手紙をよこして、恩借の金子は当地に於て正に遣い果し候とか何とか書いていた。恐らく一晩で遣ってしまったものであろう。 併し其前は始終僕の方が御馳走になったものだ。其うち覚えている事を一つ二つ話そうか。正岡・・・<夏目漱石「正岡子規」青空文庫>
  19. ・・・ 世界的世界形成の原理と云うのは各国家民族の独自性を否定することではない、正にその逆である。世界と云えば、人は今尚十八世紀的に抽象的一般的世界を考えて居るのである。私の世界的世界形成と云うのは、各国家各民族がそれぞれの歴史的地盤に於て何・・・<西田幾多郎「世界新秩序の原理」青空文庫>
  20. ・・・それによつて読者は、正に彼自身の理解した「彼自身の著者」を、いつも「彼自身の趣味」によつて自由に完全に装幀することができるであらう。かくてこそ書物の著者は、正に読者の生活に「活き得た」のではないか。その各の人の装幀の価値に応じて、より浅く、・・・<萩原朔太郎「装幀の意義」青空文庫>
  21. ・・・ 戦慄から、私は殆んど息が止まり、正に昏倒するところであった。これは人間の住む世界でなくて、猫ばかり住んでる町ではないのか。一体どうしたと言うのだろう。こんな現象が信じられるものか。たしかに今、私の頭脳はどうかしている。自分は幻影を見て・・・<萩原朔太郎「猫町」青空文庫>
  22. ・・・成功の時機正に熟するものなり。一 言葉を慎みて多すべからず。仮にも人を誹り偽を言べからず。人の謗を聞ことあらば心に納て人に伝へ語べからず。譏を言伝ふるより、親類とも間悪敷なり、家の内治らず。 言語を慎みて多くす可らず・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  23. ・・・と題して、連日の『時事新報』社説に登録したるが、大いに学者ならびに政治家の注意を惹き来りて、目下正に世論実際の一問題となれり。よって今、論者諸賢のため全篇通読の便利を計り、これを重刊して一冊子となすという。  明治一六年二月編者識と・・・<福沢諭吉「学問の独立」青空文庫>
  24. ・・・ 彼の御広間の敷居の内外を争い、御目付部屋の御記録に思を焦し、ふつぜんとして怒り莞爾として笑いしその有様を回想すれば、正にこれ火打箱の隅に屈伸して一場の夢を見たるのみ。しかのみならず今日に至ては、その御広間もすでに湯屋の薪となり、御記録・・・<福沢諭吉「旧藩情」青空文庫>
  25. ・・・写して正にをはる時妹再び来りて猫をつまみ出しぬ。なほ追へども去らず、再び何やらにて大地に突き落しぬ。猫は庭の松の木に上りて枝の上に蹲りたるままいと平らなる顔にてこなたを見おこせたり。かくする間この猫一たびも鳴かざりき。〔自筆稿『ホトトギ・・・<正岡子規「飯待つ間」青空文庫>
  26. ・・・なぜならビジテリアン諸君の主張は比較解剖学の見地からして正に根底から顛覆するからである。見給え諸君の歯は何枚あります。三十二枚、そうです。でその中四枚が門歯四枚が犬歯それから残りが臼歯と智歯です。でそんなら門歯は何のため、門歯は食物を噛み取・・・<宮沢賢治「ビジテリアン大祭」青空文庫>
  27. ・・・ネネムはこの時は正によろこびの絶頂でした。とうとう立ちあがって高く歌いました。「おれは昔は森の中の昆布取り、 その昆布網が空にひろがったとき 風の中のふかやさめがつきあたり おれの手がぐらぐらとゆれたのだ。 おれ・・・<宮沢賢治「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」青空文庫>
  28. ・・・記者として働く一人一人が、当時新しく強く意識された人格の独立を自身の内に感じ、自分が社に負うているよりも、自分が正にその社を担っている気風があった。しかしここで注目すべきことは、日本では、明治開化期が、二十二年憲法発布とともに、却って逆転さ・・・<宮本百合子「明日への新聞」青空文庫>
  29. ・・・咲枝さんは正に今にも、というところで、うち中待機の姿勢です。なかなかの緊張ぶりです。 お正月になったらと楽しみなことがあります。それはまた自分で手紙をかいてもいいという許しを自分に出そうと思って。今度はどんな字を書くでしょう。少しは小さ・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  30. ・・・自由な人間性の流露とは正に反対の手法である。 今日働く婦人として生活している若い女性たちの実感が、もしそのような芸術の手法にぴったりとするものであるとするならば、私たちはそこに深刻な問題を感じなければならないと思う。今日の日本の二十歳前・・・<宮本百合子「今日の生活と文化の問題」青空文庫>