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まよ・う〔まよふ〕【迷う/×紕う】例文一覧 30件

  1. ・・・「私はもとよりどうなっても、かまわない体でございますが、万一路頭に迷うような事がありましては、二人の子供が可哀そうでございます。どうか御面倒でもあなたの御宅へ、お置きなすって下さいまし。」 牧野の妻はこう云うと、古びた肩掛に顔を隠し・・・<芥川竜之介「奇怪な再会」青空文庫>
  2.    食うべき詩 詩というものについて、私はずいぶん長い間迷うてきた。 ただに詩についてばかりではない。私の今日まで歩いてきた路は、ちょうど手に持っている蝋燭の蝋のみるみる減っていくように、生活というものの威力の・・・<石川啄木「弓町より」青空文庫>
  3. ・・・竜神、竜女も、色には迷う験し候。外海小湖に泥土の鬼畜、怯弱の微輩。馬蛤の穴へ落ちたりとも、空を翔けるは、まだ自在。これとても、御恩の姫君。事おわして、お召とあれば、水はもとより、自在のわっぱ。電火、地火、劫火、敵火、爆火、手一つでも消します・・・<泉鏡花「貝の穴に河童の居る事」青空文庫>
  4. ・・・その出処に迷うなり。ひそかに思うに、著者のいわゆる近代の御伽百物語の徒輩にあらずや。果してしからば、我が可懐しき明神の山の木菟のごとく、その耳を光らし、その眼を丸くして、本朝の鬼のために、形を蔽う影の霧を払って鳴かざるべからず。 この類・・・<泉鏡花「遠野の奇聞」青空文庫>
  5. ・・・ 大通りは一筋だが、道に迷うのも一興で、そこともなく、裏小路へ紛れ込んで、低い土塀から瓜、茄子の畠の覗かれる、荒れ寂れた邸町を一人で通って、まるっきり人に行合わず。白熱した日盛に、よくも羽が焦げないと思う、白い蝶々の、不意にスッと来て、・・・<泉鏡花「伯爵の釵」青空文庫>
  6. ・・・自分の反抗的奮闘の精力が、これだけ強堅であるならば、一切迷うことはいらない。三人の若い者を一人減じ自分が二人だけの労働をすれば、何の苦労も心配もいらぬ事だ。今まで文芸などに遊んでおった身で、これが果してできるかと自問した。自分の心は無造作に・・・<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  7. ・・・予は全く自分のひがみかとも迷う。岡村が平気な顔をして居れば、予は猶更平気な風をしていねばならぬ。こんな馬鹿げた事があるものか。「君此靄は一寸えいなア」「ウン親父が五六日前に買ったのだ、何でも得意がっていたよ」「未だ拝見しないもの・・・<伊藤左千夫「浜菊」青空文庫>
  8. ・・・人間てものは誰でも誤って邪路に踏迷う事があるが、心から悔悛めれば罪は奇麗に拭い去られると懇々説諭して、俺はお前に顔へ泥を塗られたからって一端の過失のために前途にドンナ光明が待ってるかも解らないお前の一生を葬ってしまいたくない。なお更これから・・・<内田魯庵「三十年前の島田沼南」青空文庫>
  9. ・・・二葉亭に親近するものの多くは鉄槌の洗礼を受けて、精神的に路頭に迷うの浮浪人たらざるを得なかった。中には霊の飢餓を訴うるものがあっても、霊の空腹を充たすの糧を与えられないで、かえって空腹を鉄槌の弄り物にされた。 二葉亭の窮理の鉄槌は啻に他・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  10. ・・・大阪の町を歩いて道に迷うようなことはなかった。ところが、梅田あたりの闇市場では既にして私は田舎者に過ぎない。旅馴れぬ旅行者のように、早く駅前へ出ようとうろうろする許りである。顔見知りもいない。 よしんば知人に会うても、彼もまたキョロキョ・・・<織田作之助「大阪の憂鬱」青空文庫>
  11. ・・・ こうして、追っ払われた支店長は二三に止まらず、しかも、悪辣なる丹造は、その跡釜へ新たに保証金を入れた応募者を据えるという巧妙な手段で、いよいよ私腹を肥やしたから、路頭に迷う支店長らの怨嗟の声は、当然高まった。 ある支店長のごときは・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  12. ・・・そして耕吉の窓の下をも一二度、口鬚の巡査は剣と靴音とあわてた叫声を揚げながら、例の風呂敷包を肩にした、どう見ても年齢にしては発育不良のずんぐりの小僧とともに、空席を捜し迷うて駈け歩いていた。「巡査というものもじつに可愛いものだ……」耕吉は思・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  13. ・・・ 武蔵野に散歩する人は、道に迷うことを苦にしてはならない。どの路でも足の向くほうへゆけばかならずそこに見るべく、聞くべく、感ずべき獲物がある。武蔵野の美はただその縦横に通ずる数千条の路を当もなく歩くことによって始めて獲られる。春、夏、秋・・・<国木田独歩「武蔵野」青空文庫>
  14. ・・・無断で借りて帰った分のことをどうしようかと心で迷う。今云い出すと却って内儀に邪推されやしないだろうか?…… 番頭は金を受取ってツリ銭を出す。お里は嵩ばった風呂敷包みを気にしながら、立っている。火鉢の傍に坐りこんでいる内儀の眼がじろりと光・・・<黒島伝治「窃む女」青空文庫>
  15. ・・・草原に花をたずねて迷う蜂の唸りが聞える。 日が陰って沼の面から薄糸のような靄が立ち始める。 再び遠くから角笛の音、犬の遠吠えが聞えて来る。ニンフの群はもうどこへ行ったか影も見えない。・・・<寺田寅彦「ある幻想曲の序」青空文庫>
  16. ・・・ 案内記が詳密で正確であればあるほど、これに対する信頼の念が厚ければ厚いほど、われわれは安心して岐路に迷う事なしに最少限の時間と労力を費やして安全に目的地に到着することができる。これに増すありがたい事はない。しかしそれと同時についその案・・・<寺田寅彦「案内者」青空文庫>
  17. ・・・ そのころ人の家をたずね歩むに当って、番地よりも橋の名をたよりにして行く方が、その処を知るにはかえって迷うおそれがなかった。しかしこれら市中の溝渠は大かた大正十二年癸亥の震災前後、街衢の改造されるにつれて、あるいは埋められ、あるいは暗渠・・・<永井荷風「葛飾土産」青空文庫>
  18. ・・・王は迷う。肩に纏わる緋の衣の裏を半ば返して、右手の掌を十三人の騎士に向けたるままにて迷う。 この時館の中に「黒し、黒し」と叫ぶ声が石せきちょうに響を反して、窈然と遠く鳴る木枯の如く伝わる。やがて河に臨む水門を、天にひびけと、錆びたる鉄鎖・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  19. ・・・余が修善寺で生死の間に迷うほどの心細い病み方をしていた時、池辺君は例の通りの長大な躯幹を東京から運んで来て、余の枕辺に坐った。そうして苦い顔をしながら、医者に騙されて来て見たと云った。医者に騙されたという彼は、固より余を騙すつもりでこういう・・・<夏目漱石「三山居士」青空文庫>
  20. ・・・そして多くの青年が迷う如く私もこの問題に迷うた。特に数学に入るか哲学に入るかは、私には決し難い問題であった。尊敬していた或先生からは、数学に入るように勧められた。哲学には論理的能力のみならず、詩人的想像力が必要である、そういう能力があるか否・・・<西田幾多郎「或教授の退職の辞」青空文庫>
  21. ・・・凡そ是等の迷は不学無術より起ることなれば、今日男子と女子と比較し孰れか之に迷う者多きやと尋ねて、果して女子に多しとならば、即ち女子に教育少なきが故なり。故に我輩は単に彼等の迷信を咎めずして、其由て来る所の原因を除く為めに、文明の教育を勧むる・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  22. ・・・また巫覡に迷うべからず、衣服分限に従うべし、年少きとき男子と猥れ猥れしくすべからず云々は最も可なり。また夫を主人として敬うべしというは、女子より言を立てて一方に偏するが故に不都合なるのみ。けだし主人とするとは敬礼の極度を表したるものなれば、・・・<福沢諭吉「日本男子論」青空文庫>
  23. ・・・治四十二年三月二十二日 露都病院にて長谷川辰之助長谷川静子殿長谷川柳子殿     遺族善後策これは遺言ではなけれど余死したる跡にて家族の者差当り自分の処分に迷うべし仍て余の意見を左に記す一 玄・・・<二葉亭四迷「遺言状・遺族善後策」青空文庫>
  24. ・・・霧のある日ならミーロだって迷うよ。」「そうさねえ、だけど地図もあるからねえ。」「野原の地図ができてるの。」「ああ、きっと四枚ぐらいにまたがってるねえ。」「その地図で見ると路でも林でもみんなわかるの。」「いくらか変っている・・・<宮沢賢治「ポラーノの広場」青空文庫>
  25. ・・・もして行こうとしている人々は、民主主義文化・文学運動の内をかき乱している不安、無規準、得たいのしれない政治性に影響されて、自分たちの活動の基準をどこにおいたら、たたかれないで育つことができるのかを思い迷うこころもちにもおかれた。 一九四・・・<宮本百合子「五〇年代の文学とそこにある問題」青空文庫>
  26. ・・・うに啓蒙されて来た人があるとすれば、その人は街の角々に貼り出されていた矢じるし目あてに機械的に歩かせられて来ていたようなものだから、一夜の大雨ですべての矢じるしが剥がれてしまったある朝、当然わが行手に迷う当惑に陥る。階級的人間形成の道として・・・<宮本百合子「しかし昔にはかえらない」青空文庫>
  27. ・・・ 書付を前へ出された与力は、それを受け取ったものか、どうしたものかと迷うらしく、黙っていちの顔を見おろしていた。「お願いでございます」と、いちが言った。「こいつらは木津川口でさらし物になっている桂屋太郎兵衛の子供でございます。親・・・<森鴎外「最後の一句」青空文庫>
  28. ・・・学生は堕落していて、ワグネルがどうのこうのと云って、女色に迷うお手本のトリスタンなんぞを聞いて喜ぶのである。男の贔屓は下町にある。代を譲った倅が店を三越まがいにするのに不平である老舗の隠居もあれば、横町の師匠の所へ友達が清元の稽古に往くのを・・・<森鴎外「余興」青空文庫>
  29. ・・・それどころではない。迷う者を憐れみ、怒るものをいたわることすらもなし得ない。力の不足は愛の不足であった。我を張るのは自己を殺すことであった。自己を愛において完全に生かせるためには、私はまだまだ愛の悩み主我心の苦しみを――愛し得ざる悲しみを―・・・<和辻哲郎「生きること作ること」青空文庫>
  30. ・・・そういわれてみると、蓮の花が日光のささない時刻に、すなわち暗くて人に見えずまた人の見ない時刻に、開くのであるということ、そのために常人の判断に迷うような伝説が生じたのであるということが、やっとわかって来た。もちろん、日光のほかに気温も関係し・・・<和辻哲郎「巨椋池の蓮」青空文庫>