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うれし・い【×嬉しい】例文一覧 32件

  1. ・・・その中には嬉しい記憶もあれば、むしろ忌わしい記憶もあった。が、どの記憶も今となって見れば、同じように寂しかった。「みんなもう過ぎ去った事だ。善くっても悪くっても仕方がない。」――慎太郎はそう思いながら、糊のにおいのする括り枕に、ぼんやり五分・・・<芥川竜之介「お律と子等と」青空文庫>
  2. ・・・これからは一人の主に身も心も献げ得る嬉しい境涯が自分を待っているのだ。 クララの顔はほてって輝いた。聖像の前に最後の祈を捧げると、いそいそとして立上った。そして鏡を手に取って近々と自分の顔を写して見た。それが自分の肉との最後の別れだった・・・<有島武郎「クララの出家」青空文庫>
  3. ・・・そこで活字が嬉しいから、三枚半で先ず……一回などという怪しからん料簡方のものでない。一回五六枚も書いて、まだ推敲にあらずして横に拡った時もある。楽屋落ちのようだが、横に拡がるというのは森田先生の金言で、文章は横に拡がらねばならぬということで・・・<泉鏡花「おばけずきのいわれ少々と処女作」青空文庫>
  4. ・・・無茶なことを云われて民子は心配やら嬉しいやら、嬉しいやら心配やら、心配と嬉しいとが胸の中で、ごったになって争うたけれど、とうとう嬉しい方が勝を占めて終った。なお三言四言話をするうちに、民子は鮮かな曇りのない元の元気になった。僕も勿論愉快が溢・・・<伊藤左千夫「野菊の墓」青空文庫>
  5. ・・・「久し振りで君が尋ねて来て、今夜はとまって呉れるのやさかい、僕はこないに嬉しいことはない。充分飲んで呉れ給え」と、酌をしてくれた。「僕も随分やってるよ。――それよりか、話の続きを聴こうじゃないか?」「それで、僕等の後備歩兵第○聨・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  6. ・・・それでその遺物を遺すことができたと思うと実にわれわれは嬉しい、たといわれわれの生涯はドンナ生涯であっても。 たびたびこういうような考えは起りませぬか。もし私に家族の関係がなかったならば私にも大事業ができたであろう、あるいはもし私に金があ・・・<内村鑑三「後世への最大遺物」青空文庫>
  7. ・・・私は照れくさい思いがしたが、しかし、やはり私のような凡人は新聞に書かれると少しは嬉しいのか、その記事の文句をいまだにおぼえています。「既報“人生紙芝居”の相手役秋山八郎君の居所が奇しくも本紙記事が機縁となって判明した。四年前――昭和六年・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  8. ・・・そのことはあまり素直ではない私にとって少くとも嬉しいことです。 そして話はその娯楽場の驢馬の話になりました。それは子供を乗せて柵を回る驢馬で、よく馴れていて、子供が乗るとひとりで一周して帰って来るのだといいます。私はその動物を可愛いもの・・・<梶井基次郎「橡の花」青空文庫>
  9. ・・・ お露を妻に持って島の者にならっせ、お前さん一人、遊んでいても島の者が一生養なって上げまさ、と六兵衛が言ってくれた時、嬉しいやら情けないやらで泣きたかった。 そして見ると、自分の周囲には何処かに悲惨の影が取巻ていて、人の憐愍を自然に・・・<国木田独歩「酒中日記」青空文庫>
  10. ・・・片隅からそれを見ていたおきのは、息子から、こうなれなれしく、呼びかけられたら、どんなに嬉しいだろうと思った。「坊っちゃんお帰り。」と庄屋の下婢は、いつもぽかんと口を開けている、少し馬鹿な庄屋の息子に、叮嚀にお辞儀をして、信玄袋を受け取っ・・・<黒島伝治「電報」青空文庫>
  11. ・・・追窮されても窘まぬ源三は、「そりゃあただおいらあ、自由自在になっていたら嬉しいだろうと思ったからそう云ったのさ。浪ちゃんだってあの禽のように自由だったら嬉しいだろうじゃあないか。」と云うと、お浪はまた新に涙ぐんで其言には答えず、・・・<幸田露伴「雁坂越」青空文庫>
  12. ・・・り場から早くも聞き伝えた緊急動議あなたはやと千古不変万世不朽の胸づくし鐘にござる数々の怨みを特に前髪に命じて俊雄の両の膝へ敲きつけお前は野々宮のと勝手馴れぬ俊雄の狼狽えるを、知らぬ知らぬ知りませぬ憂い嬉しいもあなたと限るわたしの心を摩利支天・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  13. ・・・施与ということは妙なもので、施された人も幸福ではあろうが、施した当人の方は尚更心嬉しい。自分は饑えた人を捉えて、説法を聞かせたとも気付かなかった。十銭呉れてやった上に、助言もしてやった。まあ、二つ恵んでやった。と考えて、自分のしたことを二倍・・・<島崎藤村「朝飯」青空文庫>
  14. ・・・ 枕が大きくて柔かいから嬉しいと言うと、この夏にはうっかりしていたが、あんな枕では頭に悪いからと小母さんがいう。藤さんはこの枕を急いで拵えてから、あだに十日あまりを待ち暮したと話す。 藤さんは小母さんの蒲団の裾を叩いて、それから自分・・・<鈴木三重吉「千鳥」青空文庫>
  15. ・・・ どうやら『文人』の仲間入り出来るようになったのが、そんなに嬉しいのかね。宗匠頭巾をかぶって、『どうも此頃の青年はテニヲハの使用が滅茶で恐れ入りやす。』などは、げろが出そうだ。どうやら『先生』と言われるようになったのが、そんなに嬉しいの・・・<太宰治「或る忠告」青空文庫>
  16. ・・・思い返したが、なんとなく悲しい、なんとなく嬉しい。 代々木の停留場に上る階段のところで、それでも追い越して、衣ずれの音、白粉の香いに胸を躍らしたが、今度は振り返りもせず、大足に、しかも駆けるようにして、階段を上った。 停留場の駅長が・・・<田山花袋「少女病」青空文庫>
  17. ・・・宿の者も心安くなってみれば商売気離れた親切もあって嬉しい。雨が降って浜へも出られぬ夜は、帳場の茶話に呼ばれて、時には宿泊人届の一枚も手伝ってやる事もある。宿の主人は六十余りの女であった。昼は大抵沖へ釣りに出るので、店の事は料理人兼番頭の辰さ・・・<寺田寅彦「嵐」青空文庫>
  18. ・・・もしかそうだったらどんなに嬉しいだろう。 私は五年生ごろから、こんにゃく売りをしていた。学校をあがってから、ときには学校を休んで、近所の屋敷町を売り歩いた。 私は学校が好きだったから、このんで休んだわけではない。こんにゃくを売って、・・・<徳永直「こんにゃく売り」青空文庫>
  19. ・・・私は乳母が衣服を着換えさせようとするのも聞かず、人々の声する方に馳け付けたが、上框に懐手して後向きに立って居られる母親の姿を見ると、私は何がなしに悲しい、嬉しい気がして、柔い其の袖にしがみつきながら泣いた。「泣蟲ッ、朝腹から何んだ。」と・・・<永井荷風「狐」青空文庫>
  20. ・・・太十の目には田の畔から垣根から庭からそうして柿の木にまで挂けらえた其稲の収穫を見るより瞽女の姿が幾ら嬉しいか知れないのである。瞽女といえば大抵盲目である。手引といって一人位は目明きも交る。彼らは手引を先に立てて村から村へ田甫を越える。げた裾・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  21. ・・・ 四階へ来た時は縹渺として何事とも知らず嬉しかった。嬉しいというよりはどことなく妙であった。ここは屋根裏である。天井を見ると左右は低く中央が高く馬の鬣のごとき形ちをしてその一番高い背筋を通して硝子張りの明り取りが着いている。このアチック・・・<夏目漱石「カーライル博物館」青空文庫>
  22. ・・・私も嬉しい。 ――しっかりやろうぜ。 ――痛快だね。 なんて言って眼と顔を見合せます。相手は眼より外のところは見えません。眼も一つだけです。 命がけの時に、痛快だなんてのは、まったく沙汰の限りです。常識を外れちゃいけない。と・・・<葉山嘉樹「牢獄の半日」青空文庫>
  23. ・・・万一を希望していた通り、その日の夜になッたら平田が来て、故郷へ帰らなくともよいようになッたと、嬉しいことばかりを言う。それを聞く嬉しさ、身も浮くばかりに思う傍から、何奴かがそれを打ち消す、平田はいよいよ出発したがと、信切な西宮がいつか自分と・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  24. ・・・ほんにわたしの嬉しいと思ったその数は、指を折って数えるほどであるけれど、その日の嬉しかった事は夢のようでございました。この窓の前の盆栽の花は、今もやはり咲いている。ここにはまたその頃のがたがたするような小さいスピネットもある。この箪笥はわた・・・<著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外「痴人と死と」青空文庫>
  25. ・・・葉の色などには最も窮したが、始めて絵の具を使ったのが嬉しいので、その絵を黙語先生や不折君に見せると非常にほめられた。この大きな葉の色が面白い、なんていうので、窮した処までほめられるような訳で僕は嬉しくてたまらん。そこでつくづくと考えて見るに・・・<正岡子規「画」青空文庫>
  26. ・・・ああ北海道、雑嚢を下げてマントをぐるぐる捲いて肩にかけて津軽海峡をみんなと船で渡ったらどんなに嬉しいだろう。五月十日 今日もだめだ。五月十一日 日曜 曇 午前は母や祖母といっしょに田打ちをした。午后はうちのひば垣・・・<宮沢賢治「或る農学生の日誌」青空文庫>
  27. ・・・陽子は嬉しいような、何かに誘われるような高揚した心持になって来た。彼女は男たちから少し離れたところへ行って、確り両方の脚を着物の裾で巻きつけた。「ワーイ」 目を瞑り一息に砂丘の裾までころがった。気が遠くなるような気持であった。海が上・・・<宮本百合子「明るい海浜」青空文庫>
  28. ・・・しかし木精の答えてくれるのが嬉しい。木精に答えて貰うために呼ぶのではない。呼べば答えるのが当り前である。日の明るく照っている処に立っていれば、影が地に落ちる。地に影を落すために立っているのではない。立っていれば影が差すのが当り前である。そし・・・<森鴎外「木精」青空文庫>
  29. ・・・「これからはまた新田の力で宮方も勢いを増すでおじゃろ。楠や北畠が絶えたは惜しいが、また二方が世に秀れておじゃるから……」「嬉しいぞや。早う高氏づらの首を斬りかけて世を元弘の昔に復したや」「それは言わんでものこと。いかばかりぞその・・・<山田美妙「武蔵野」青空文庫>
  30. ・・・「あたし、あなたより、早く死ぬから、嬉しいの。」と彼女はいった。 彼は笑い出した。「お前も、うまいことを考えたね。」「あたしより、あなたの方が、可哀想だわ。」「そりゃ、定まってる。俺の方が馬鹿を見たさ。だいたい、人間が生・・・<横光利一「花園の思想」青空文庫>