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む‐るい【無類】例文一覧 25件

  1. ・・・といわれた、無類な潤みを持った童女にしてはどこか哀れな、大きなその眼は見る事が出来なかった。クララは、見つめるほど、骨肉のいとしさがこみ上げて来て、そっと掌で髪から頬を撫でさすった。その手に感ずる暖いなめらかな触感はクララの愛欲を火のように・・・<有島武郎「クララの出家」青空文庫>
  2. ・・・天の助けがあるから自分は眼病をなおした上で無類の名画をかいて見せると勇み立って医師の所にかけつけて行きました。 王子も燕もはるかにこれを見て、今日も一ついい事をしたと清い心をもって夜のねむりにつきました。 そうこうするうちに気候はだ・・・<有島武郎「燕と王子」青空文庫>
  3. ・・・私店けし入軽焼の義は世上一流被為有御座候通疱瘡はしか諸病症いみもの決して無御座候に付享和三亥年はしか流行の節は御用込合順番札にて差上候儀は全く無類和かに製し上候故御先々様にてかるかるやきまたは水の泡の如く口中にて消候ゆゑあはかるやき・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  4. ・・・天下無類の愚か者。それがしは、今日今宵この刻まで、人並、いやせめては月並みの、面相をもった顔で、白昼の往来を、大手振って歩いて来たが、想えば、げすの口の端にも掛るアバタ面! 楓どの。今のあの言葉をお聴きやったか」「いいえ、聴きませぬ。そ・・・<織田作之助「猿飛佐助」青空文庫>
  5. ・・・悪くなる、電車の中や薄暗いところで読むと眼にいけない、活字のちいさな書物を読むと近眼になるなどと言われて、近頃岩波文庫の活字が大きくなったりするけれど、この人達は電車の中でも読み、活字の大小を言わず、無類の多読を一生の仕事のようにして来たに・・・<織田作之助「僕の読書法」青空文庫>
  6. ・・・人は彼が聾であって無類のお人好であることすら忘れてしまうのである。往来へ出て来た彼は、だから機械から外して来たクランクのようなものである。少しばかり恰好の滑稽なのは仕方がないのである。彼は滅多に口を利かない。その代りいつでもにこにこしている・・・<梶井基次郎「温泉」青空文庫>
  7. ・・・やな顔をする、それをお神さんたちはなお面白半分に私の世話を焼いたこともありました、けれども、それでもってお俊と私の仲を長屋の者が疑ぐるかというに決してそうでなく、てんで私をば木か金で作ったもののように無類の堅人だと信じていたのでございます。・・・<国木田独歩「女難」青空文庫>
  8. ・・・君はそういう訳で歩いているなら、これこれの処にこういう寺がある、由緒は良くても今は貧乏寺だが、その寺の境内に小さな滝があって、その滝の水は無類の霊泉である。養老の霊泉は知らぬが、随分響き渡ったもので、二十里三十里をわざわざその滝へかかりに行・・・<幸田露伴「観画談」青空文庫>
  9. ・・・それから節廻りの良いことは無類。そうして蛇口の処を見るというと、素人細工に違いないが、まあ上手に出来ている。それから一番太い手元の処を見るとちょいと細工がある。細工といったって何でもないが、ちょっとした穴を明けて、その中に何か入れでもしたの・・・<幸田露伴「幻談」青空文庫>
  10. ・・・実際無類絶好の奇宝であり、そして一見した者と一見もせぬ者とに論なく、衆口嘖しゅうこうさくさくとしていい伝え聞伝えて羨涎を垂れるところのものであった。 ここに呉門の周丹泉という人があった。心慧思霊の非常の英物で、美術骨董にかけては先ず天才・・・<幸田露伴「骨董」青空文庫>
  11. ・・・父は無類のおひとよしの癖に悪辣ぶりたがる性格を持っていて、そのひとりむすこである彼にさえ、わざと意地わるくかかっていた。彼がどのようなしくじりをしても、せせら笑って彼を許した。そしてわきを向いたりなどしながら言うのであった。人間、気のきいた・・・<太宰治「猿面冠者」青空文庫>
  12. ・・・正直無類のやわらかな心情が、あんまり、あらわに出ているので、私は、はらはらした。山岸さんから「いちばんいい」という折紙をつけられている人ではないか。も少し、どうにかならんかなあ、と不満であった。私は、年少の友に対して、年齢の事などちっとも斟・・・<太宰治「散華」青空文庫>
  13. ・・・この頑丈の鉄仮面をかぶり、ふくみ声で所謂創作の苦心談をはじめたならば、案外荘重な響きも出て来て、そんなに嘲笑されずにすむかも知れぬ、などと小心翼々、臆病無類の愚作者は、ひとり淋しくうなずいた。 昭和十一年十月十三日から同年十一月十二日ま・・・<太宰治「鉄面皮」青空文庫>
  14. ・・・子供の騒ぎ廻る部屋にて仕事をするはいたく難儀にして、引越そうか、とふっと思う事あれども、わが前途の収入も心細ければ、また、無類のおっくうがりの男なれば、すべて沙汰やみとなるなり。一部屋欲しと思う心はたしかにあり。居宅に望なき人の心境とはおの・・・<太宰治「花吹雪」青空文庫>
  15. ・・・弟妹たちは、それゆえ此の長兄を少しく、なめているようなふうがあるけれども、それは弟妹たちの不遜な悪徳であって、長兄には長兄としての無類のよさもあるのである。嘘を、つかない。正直である。そうして所謂人情には、もろい。いまも、ラプンツェルが、釜・・・<太宰治「ろまん燈籠」青空文庫>
  16. ・・・ ポルジイとドリスとはその頃無類の、好く似合った一対だと称せられていた。これは誰でもそう思う。どこへでも二人が並んで顔を出すと、人が皆囁き合う。男はしっかりして危げがなく、気力が溢れて人を凌いで行く。女はすらりとして、内々少し太り掛けて・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  17. ・・・しかし暑いことも無類であった。それは乾燥したさわやかな暑さとちがって水蒸気で飽和された重々しい暑さであった。「いつでもまるで海老をうでたように眼の中まで真赤になっていた」という母の思い出話をよく聞かされた。もっとも虫捕りに涼しいのもあった。・・・<寺田寅彦「夏」青空文庫>
  18. ・・・ これに反して停車場内の待合所は、最も自由で最も居心地よく、聊かの気兼ねもいらない無類上等の Caf である。耳の遠い髪の臭い薄ぼんやりした女ボオイに、義理一遍のビイルや紅茶を命ずる面倒もなく、一円札に対する剰銭を五分もかかって持て来る・・・<永井荷風「銀座」青空文庫>
  19. ・・・よし一つや二つ何か立派などっしりした物があったにしても、古今に通じて世界第一無類飛切りとして誇るには足りないような気がする。然らば何をか最も無類飛切りとしようか。貧乏臭い間の抜けた生活のちょっとした処に可笑味面白味を見出して戯れ遊ぶ俳句、川・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  20.    学者安心論 店子いわく、向長屋の家主は大量なれども、我が大家の如きは古今無類の不通ものなりと。区長いわく、隣村の小前はいずれも従順なれども、我が区内の者はとかくに心得方よろしからず、と。主人は以前の婢僕を誉め、・・・<福沢諭吉「学者安心論」青空文庫>
  21. ・・・ここにおいてか芭蕉は無比無類の俳人として認められ、また一人のこれに匹敵する者あるを見ざるの有様なりき。芭蕉は実に敵手なきか。曰く、否。 芭蕉が創造の功は俳諧史上特筆すべきものたること論を竢たず。この点において何人かよくこれに凌駕せん。芭・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  22. ・・・それとも無類に美しい容貌の夫であろうか。或はやさしく真実な騎士の愛情であろうか。とつおいつしながらまた別の森に来かかった。すると樹の間から赤い着物を着て、恐ろしい顔をした一人の女が出て来た。そしてガラハートに呼びかけた。「ガラハートよ。・・・<宮本百合子「私たちの建設」青空文庫>
  23. ・・・ この翁媼二人の中の好いことは無類である。近所のものは、若しあれが若い男女であったら、どうも平気で見ていることが出来まいなどと云った。中には、あれは夫婦ではあるまい、兄妹だろうと云うものもあった。その理由とする所を聞けば、あの二人は隔て・・・<森鴎外「じいさんばあさん」青空文庫>
  24. ・・・支那人は辛抱強いことは無類だよ。兎に角その女はそれきり粟稈の中から起きずにしまったそうだ。」主人は最後の一句を、特別にゆっくり言った。 違棚の上でしつっこい金の装飾をした置時計がちいんと一つ鳴った。「もう一時だ。寝ようかな。」こう云・・・<森鴎外「鼠坂」青空文庫>
  25. ・・・あなたの御亭主と云うのは年が五十、そうですね、五十五六くらいで、頭がすっかり禿げていて、失礼ですが、無類の不男だったろうじゃありませんか。おまけに背中は曲がって、毛だらけで、目も鼻もあるかないか分からないようで、歯が脱けていて。 女。お・・・<著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外「最終の午後」青空文庫>