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えがき‐だ・す〔ヱがき‐〕【描き出す】例文一覧 30件

  1. ・・・彼等の才能の不足もさることながら、虚構の群像が描き出すロマンを人間の可能性の場としようという近代小説への手の努力も、兎や虫を観察する眼にくらべれば、ついに空しい努力だと思わねばならなかったところに、日本の芸術観の狭さがあり、近代の否定があっ・・・<織田作之助「可能性の文学」青空文庫>
  2. ・・・ そういうようなものを今の僕がどうして精密に描き出すことができよう。だから僕は今しばらくその海の由来を君に話すことにしよう。そこは僕達の家がほんのしばらくの間だけれども住んでいた土地なんだ。 そこは有名な暗礁や島の多いところだ。その・・・<梶井基次郎「海 断片」青空文庫>
  3. ・・・は絶望に満ちた街々を描き出す。それはいつになっても変改されない。そしてはじめ心に決めていた都会へ帰る日取りは夙うの昔に過ぎ去ったまま、いまはその影も形もなくなっていたのである。私は日を浴びていても、否、日を浴びるときはことに、太陽を憎むこと・・・<梶井基次郎「冬の蠅」青空文庫>
  4. ・・・勿論、自然主義文学運動は、ブルジョア生産関係の反映として、「在るがまゝに現実を描き出すこと」「科学的精神」「客観描写」「現実曝露」等、ブルジョアジーがその生産方法の上に利用した科学の芸術的反映として、ブルジョア社会建設のために動員され、そし・・・<黒島伝治「明治の戦争文学」青空文庫>
  5. ・・・ 音が空間を描き出すのは、音の伝播が空間的であって光のごとく直線的でないためである。それがためにまたわれわれは音の来る角度を制限することができない。広い視野のうちから一定のわくによって限られた部分だけを切り取って映出するという光学的技法・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  6. ・・・しかしそれよりも大切なことは、映画の写し出す視覚的影像の喚起する実感の強度が、文字の描き出す心像のそれに比較して著しく強いという事実がこの差別を決定する重要な因子になるのではないかと思われる。 忠犬の死を「読む」だけならば、美しい感傷を・・・<寺田寅彦「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」青空文庫>
  7. ・・・観客のどよみも同じく空間を描き出す効果があるのみならず、その音の強弱緩急の波のうち方で土俵の上の活劇の進行の模様が相撲に不案内なわれわれにもよくわかるような気がする。それでこの放送では、むしろ観客群集のほうが精神的に主要な放送者であって、ア・・・<寺田寅彦「相撲」青空文庫>
  8. ・・・の歩行経路を描き出すことも可能である。その結果から、「左側通行」の規則が、どの程度まで市民の頭にしみ込んでいるかを判断する一つの目安を定めることも可能である。 地理学のほうでは人口の分布や農耕範囲の問題などについて、興味ある物理学的統計・・・<寺田寅彦「物質群として見た動物群」青空文庫>
  9. ・・・ 吾人の理性に訴えて描き出す幾何的の空間、至るところ均等で等向的な性質を備えた空間は吾人の視感に直接訴える空間とは恐ろしくかけ離れたものである。視感的空間では仰向きの茶わんとうつ向きの茶わん、一里を隔てた山と脚下の山とはあまりに相違した・・・<寺田寅彦「物理学と感覚」青空文庫>
  10. ・・・夕陽は堤防の上下一面の枯草や枯蘆の深みへ差込み、いささかなる溜水の所在をも明に照し出すのみか、橋をわたる車と人と欄干の影とを、橋板の面に描き出す。風は沈静して、高い枯草の間から小禽の群が鋭い声を放ちながら、礫を打つようにぱっと散っては消える・・・<永井荷風「放水路」青空文庫>
  11. ・・・上、殆んど望んで得べからざるほどの人物理想を描いたのに対して極めて通常のものをそのまま、そのままという所に重きを置いて世態をありのままに欠点も、弱点も、表裏ともに、一元にあらぬ二元以上にわたって実際を描き出すのであります。従ってカーライルの・・・<夏目漱石「教育と文芸」青空文庫>
  12. ・・・二はこれを描き出すに当って使用する線及び点が、描き出される物の形状や色合とは比較的独立して、それ自身において、一種の手際を帯びて来る事であります。この第二の技術は技術でありかつ理想をもあらわしているからして純然たる技巧と見る訳には参りません・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  13. ・・・あの空とあの雲の間が海で、浪の噛む切立ち岩の上に巨巌を刻んで地から生えた様なのが夜鴉の城であると、ウィリアムは見えぬ所を想像で描き出す。若しその薄黒く潮風に吹き曝された角窓の裏に一人物を画き足したなら死竜は忽ち活きて天に騰るのである。天晴に・・・<夏目漱石「幻影の盾」青空文庫>
  14. ・・・この種の理想は今人にして古代の事物を詠み、いまだ行かざる地の景色風俗を写し、かつて見ざるある社会の情状を描き出すものこれなり。ここに理想的というは実験的に対していうものにして両者を包含す。 文学の実験に依らざるべからざるはなお絵画の写生・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  15. ・・・作家は、都会人的な複雑な自身の環境から、その生い立ちとともに与えられた資質や一種の美的姿勢や敏感さから、それらのテーマが主観のうちに重大であり、客観的に注目をひくものであればあるだけ、いきなりの表現で描き出すことは避けてゆくたちの作家であっ・・・<宮本百合子「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」青空文庫>
  16. ・・・ 社会と思想とが大きい波をかぶりつつ経て来た日本のこの数年間の生活の思い出を、あたり前の文学上のもの云いで語らず、こういう鬼や地獄をひき出して描き出すこの作者のポーズ、スタイルというようなものと、今日大陸文学懇談会とかいうところの一・・・<宮本百合子「観念性と抒情性」青空文庫>
  17. ・・・『くにのあゆみ』が、従来のように東洋における覇権の争奪者としての日本を描き出す態度をすてて、平静に、われらが生国日本における民族生活の推移と、諸外国との関係を扱っているのは当然である。新制『くにのあゆみ』は、その点に特別の配慮がされてい・・・<宮本百合子「『くにのあゆみ』について」青空文庫>
  18. ・・・この散文精神という表現は武田さんが三四年前云い出されたことで、云い出された心持には、現実に肉迫して行ってそこにあるものをそれなり描き出すことで、現代のあるがままの姿そのものに語らしめようという気持が基調となっていたと思う。現実の複雑な力のき・・・<宮本百合子「現実と文学」青空文庫>
  19. ・・・ 現代、明るさの真実な姿を芸術に描き出すことは決してやさしいことではなく、事件の目出度い大団円がとりも直さぬ明るさとして納得されにくい例は、別な場合であるが徳永直氏の「はたらく人々」の後半のまとめかたにも見られる。明日への課題として、芸・・・<宮本百合子「「建設の明暗」の印象」青空文庫>
  20. ・・・大まかに、社会と人間の有機的な諸関係をその歴史の積極な方向――社会主義の展望において描き出す、という規定を土台としているだけである。プロレタリア文学の時代、その最後の段階で、「前衛の目をもって描け」と云われたことは、社会主義リアリズムへ展開・・・<宮本百合子「心に疼く欲求がある」青空文庫>
  21. ・・・市民税を納めることに、勤労市民の一人としての誇りを感じようとする心は、上級学校への道の封鎖や戸主であるなしの問題、その他の現実を思いめぐらしたとき、前途に洋々たる展望を描き出すことの困難さに当惑するであろうと思われる。青年に期待するというの・・・<宮本百合子「今日の耳目」青空文庫>
  22. ・・・そこでは十年前にはっきり描き出す自由をうばわれていたソヴェトの社会主義社会の生活の中で女主人公が経験した民族の文学にたいする愛の実感や登場人物などの関係が語られるであろう。〔一九五〇年十二月〕・・・<宮本百合子「作者のことば(『現代日本文学選集』第八巻)」青空文庫>
  23. ・・・をリアルに描き出す可能をも失っていた。 かように文学として自主的な必然に立っていなかった農民文学のグループが、本来ならばますます描かれるべき農村状態の緊張の高まりと共に忽ち方向を転換して次の年には南洋進出の潮先に乗って海洋文学懇話会とい・・・<宮本百合子「昭和の十四年間」青空文庫>
  24. ・・・ 文学は人生社会の諸相を、眼の前にまざまざと見え感じるように描き出す。そこで社会の明るさと暗さはどういう関係において見られるのだろうか。ここに文学の新しい見方があると思う。婦人と文学という問題をとりあげて、それを人類と文学の歴史という問・・・<宮本百合子「女性の歴史」青空文庫>
  25. ・・・在的な余裕、安心と、彼女の空想によって神秘化され、何かしら魅惑的な色彩をほどこされている死そのものの概念とが、どんな幸福な若者の心をも、一度は必ず訪れるに違いない感傷的な憂愁の力をかりて、驚くべき劇を描き出すのである。 その幻想の世界に・・・<宮本百合子「地は饒なり」青空文庫>
  26. ・・・民主主義文学は世界の歴史におくり出されて、ブルジョア文学の内部では大ざっぱにしか理解されなかった一般人間性から、人間の階級性を描き出すことを可能にしたし、更にはかなく弱く権力に踏みにじられる存在でしかあり得なかった個性と、個々の自我とを、複・・・<宮本百合子「討論に即しての感想」青空文庫>
  27. ・・・内面的に、そして行動の上で動揺する人物を描き出すとき、俳優としては一個の確立した人間的存在でなければ、それが描き出せないという事実は、実にわたしをつよく感銘させた。それは上手、下手の問題より、もっと根柢の課題である。人及び俳優として存在する・・・<宮本百合子「俳優生活について」青空文庫>
  28. ・・・どの流派を追い、どの筆法を利用するにしても、要するに洋画家の目ざすところは、目前に横たわる現実の一片を捕えて、それを如実に描き出すことである。彼らにとって美は目前に在るものの内にひそんでいる。机の上の果物、花瓶、草花。あるいは庭に咲く日向葵・・・<和辻哲郎「院展遠望」青空文庫>
  29. ・・・そうしてそれを描き出すに必要でないものはすべて省いてしまった。氏はこの情趣に焦点を置いて、この焦点をはずれたものを顧みない。この態度が、右のごとき焦点をきめずに、ありのままに感得した美を描いて、おのずからに情趣を滲み出させる態度と異なってい・・・<和辻哲郎「院展日本画所感」青空文庫>
  30. ・・・畢竟、彼は人類の姿を描き出すことができない。彼には悪を憎む心のみあって憐慰がない。この関係を彼のメフィストが示している。彼のメフィストは否定の矢をただ偽善者の上に――臭いものを覆うた蓋の上に――のみ向けるのである。彼は破壊を喜ぶが、しかし真・・・<和辻哲郎「転向」青空文庫>