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り‐こ【利己】例文一覧 30件

  1. ・・・あれは僕が僕の利己心を満足させたいための主張じゃない。僕は愛をすべての上に置いた結果だったのだ。だから僕は結婚後、僕等の間の愛情が純粋なものでない事を覚った時、一方僕の軽挙を後悔すると同時に、そう云う僕と同棲しなければならない妻も気の毒に感・・・<芥川竜之介「開化の良人」青空文庫>
  2. ・・・あの人の利己心を頼みにしている。いや、利己心が起させる卑しい恐怖を頼みにしている。だから私はこう云われるのだ。あの人はきっと忍んで来るのに違いない。…… しかし私自身を頼みにする事の出来なくなった私は、何と云うみじめな人間だろう。三年前・・・<芥川竜之介「袈裟と盛遠」青空文庫>
  3. ・・・僕も、――僕は妻に対しては恐しい利己主義者になっている。殊に僕自身を夢の中の僕と同一人格と考えれば、一層恐しい利己主義者になっている。しかも僕自身は夢の中の僕と必しも同じでないことはない。僕は一つには睡眠を得るために、また一つには病的に良心・・・<芥川竜之介「死後」青空文庫>
  4. ・・・ わたしは彼等の利己主義に驚嘆に近いものを感じている。成程彼等には尊徳のように下男をも兼ねる少年は都合の好い息子に違いない。のみならず後年声誉を博し、大いに父母の名を顕わしたりするのは好都合の上にも好都合である。しかし十五歳に足らぬわた・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  5. ・・・同時に又奴隷に、暴君に、力のない利己主義者に変り出した。…… 前のホテルに帰ったのはもうかれこれ十時だった。ずっと長い途を歩いて来た僕は僕の部屋へ帰る力を失い、太い丸太の火を燃やした炉の前の椅子に腰をおろした。それから僕の計画していた長・・・<芥川竜之介「歯車」青空文庫>
  6. ・・・そのことごとく利己的な、自分よがりなわがままな仕打ちが、その時の彼にはことさら憎々しく思えた。彼はこうしたやんちゃ者の渦巻の間を、言葉どおりに縫うように歩きながら、しきりに急いだ。 眼ざして来た家から一町ほどの手前まで来た時、彼はふと自・・・<有島武郎「卑怯者」青空文庫>
  7. ・・・中には小さな利己的な潔癖から、自分の家へ友達を呼んで来るのを厭うような母親もあるが、そうしたことが、子供をして将来、個人主義者たらしめたり、会社へ出ても、他と共に協力の出来ぬ、憐れむべき人間にする結果となります。 これから教育は、家庭に・・・<小川未明「お母さんは僕達の太陽」青空文庫>
  8. ・・・ つぎに人性の千古の悩みである利己か、利他かの問題がある。利己主義には深い根拠があり合理的に、正直に思索するときには誰しも一応は利己主義に帰著するくらいのものである。むしろここから反転して利他主義に飛躍するのが道筋ともいえる。リップスの・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  9. ・・・ 人間は宿命的に利己的であると説くショウペンハウァーや、万人が万人に対して敵対的であるというホップスの論の背後には、やはり人間関係のより美しい状態への希求と、そして諷刺の形をとった「訴え」とがあるのである。 その意味において書物とは・・・<倉田百三「学生と読書」青空文庫>
  10. ・・・前者は利己主義となり、後者は博愛心となる。 この二者は、古来氷炭相容れざるもののごとくに考えられていた。また事実において、しばしば矛盾もし、衝突もした。しかし、この矛盾・衝突は、ただ四囲の境遇のためによぎなくせられ、もしくは養成せられた・・・<幸徳秋水「死刑の前」青空文庫>
  11. ・・・も死を避け死に抗するのが自然であるかのように見える、左れど一面には亦た種保存の本能がある、恋愛である、生殖である、之が為めには直ちに自己を破壊し去って悔みない省みないのも、亦た自然の傾向である、前者は利己主義となり、後者は博愛心となる。・・・<幸徳秋水「死生」青空文庫>
  12. ・・・直観道学はそれを打ち消して利己以上の発足点を説こうけれども、自分らの知識は、どうも右の事実を否定するに忍びない。かえって否定するものの心事が疑われてならない。(衆生済度傍に千万巻の経典を積んでも、自分の知識は「道徳の底に自己あり」という一言・・・<島村抱月「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」青空文庫>
  13. ・・・がほとんど二十五年間かわらずに敬愛しつづけて来た井伏鱒二と言う作家の作品全部を、あらためて読み直してみる事も、太宰という愚かな弟子の身の上にとって、ただごとに非ざる良薬になるかも知れぬという、いささか利己的な期待も無いわけでは無かったのであ・・・<太宰治「『井伏鱒二選集』後記」青空文庫>
  14. ・・・まったく利己の心の無い生活。けれども、それは、至難の業であった。私はただ、やけ酒を飲むばかりであった。 私の最も憎悪したものは、偽善であった。         × キリスト。私はそのひとの苦悩だけを思った。         ・・・<太宰治「苦悩の年鑑」青空文庫>
  15. ・・・先輩としての利己主義を、暗黙のうちに正義に化す。」 私は、いやな気がした。こんどは、本心から、この少年に敵意を感じた。       第二回 決意したのである。この少年の傲慢無礼を、打擲してしまおうと決意した。そうと決意す・・・<太宰治「乞食学生」青空文庫>
  16. ・・・ 私、幼くして、峻厳酷烈なる亡父、ならびに長兄に叩きあげられ、私もまた、人間として少し頑迷なるところあり、文学に於いては絶対に利己的なるダンディスムを奉じ、十年来の親友をも、みだりに許さず、死して、なお、旗を右手に歯ぎしりしつつ巷をよろ・・・<太宰治「もの思う葦」青空文庫>
  17. ・・・そう思ってむしろ安心しているそばで、またこうしてはならないという不安の念が絶えず襲いかかって来た。利己的であると同時に気の弱い彼は、少なくも人目にはたいした事ではないと思われるらしい病気のために職務を怠っている事に対する人の非難を気にしてい・・・<寺田寅彦「球根」青空文庫>
  18. ・・・自然界ではこのように、利己がすなわち利他であるようにうまく仕組まれた天の配剤、自然の均衡といったようなものの例が非常に多いようである。よく考えてみると人間の場合でも、各自が完全に自己を保存するように努力さえしていれば結局はすべての他のものの・・・<寺田寅彦「沓掛より」青空文庫>
  19. ・・・もともと自分の健康という事が主になっている以上、私はこの際最も利己的な動機に従って行くほかはないと思ったので、結局日陰の涼しい所から刈り始めるというきわめて平凡なやり方に帰ってしまった。 するとまたすぐに第二の問題に逢着した。芝生とそれ・・・<寺田寅彦「芝刈り」青空文庫>
  20. ・・・この甲型の人の目から見ると乙型の人間は消極的退嬰的な利己主義者に見える。しかし乙はその自由のためにかえって甲の先をくぐって積極的に進出する事もあるし、自分の自由を尊重すると同時に人の自由を尊重するという意味では利他的である。反対に乙型の人間・・・<寺田寅彦「蒸発皿」青空文庫>
  21. ・・・しかしそういう美徳の問題などはしばらくおいて、単に功利的ないし利己的の立場から考えても、少なくも電車の場合では、満員車は人に譲って、一歩おくれてすいた車に乗るほうが、自分のためのみならず人のためにも便利であり「能率」のいい所行であるように思・・・<寺田寅彦「電車の混雑について」青空文庫>
  22. ・・・ジネストは情なしの利己主義者でございます。けちな圧制家でございます。わたくしは万事につけて、一足一足と譲歩して参りました。わたくしには自己の意志と云うものがございません。わたくしは持前の快活な性質を包み隠しています。夫がその性質を挑発的だと・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  23. ・・・人間らしい父と子の情愛の表現にさえ、彼等は生活のしきたりから殺伐な方法をとるしかなく、しかも、その殺伐さをとおして流露しようとする人間らしい父と子の心情を、彼等の支配者が利己と打算のために酷薄にふみにじる姿を描いている。けれども、当時の作者・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」青空文庫>
  24. ・・・イレーネの心に入ってきいてみれば、母の新しい良人に感じる憎悪を、お祖母さんが只一くちに利己主義だと云っているのをもしきいたとしたら、どんな悲しさに号泣することだろう。大人の世界の思いやりなさを憎むだろう。イレーネにすれば、利己主義と名をつけ・・・<宮本百合子「雨の昼」青空文庫>
  25. ・・・ 此の潮流を人間は、箇人主義又は利己主義と云って居る。 私は、此の箇人主義、利己主義に大いなるものの歎嗟の吐息を聞いたのである。 此の声を聞き得たのは私一人のみかもしれない。 或る人々は、その様な事は誤った事だと、私の此れか・・・<宮本百合子「大いなるもの」青空文庫>
  26. ・・・良人に愛され、母に愛され、その地上的愛の葛藤に苦しむよりは、相方が或強制を以て、人生を眺める方が、人格が深まるのかもしれないと云うような、稍々利己的な積極的解釈さえ加えて居たのである。 けれども、近頃、自分の心は、林町のことを思うと、暗・・・<宮本百合子「傾く日」青空文庫>
  27. ・・・しかしあれは自我主義である。利己主義である。 利己主義は倫理上に排斥しなくてはならない。個人主義という広い名の下に、いろいろな思想を籠めておいて、それを排斥しようとするのは乱暴である。 無政府主義と、それといっしょに芽ざした社会主義・・・<森鴎外「文芸の主義」青空文庫>
  28. ・・・そうして旧来の自然科学的文化の代わりに理想主義的文化が、利己主義的国家の代わりに世界主義的国家が、力強く育ち始めるのである。 低級な戦争目的が世界的問題となるようなことは、その時にはもう起こらない。新しい世界人の関心事は人生の目的である・・・<和辻哲郎「世界の変革と芸術」青空文庫>
  29. ・・・そのために自己に対する不断の注意と警戒とを怠らなかった先生は、人間性の重大な暗黒面――利己主義――の鋭利な心理観察者として我々の前に現われた。 先生にとっては「正しくあること」は「愛すること」よりも重いのである。私はかつて先生に向かって・・・<和辻哲郎「夏目先生の追憶」青空文庫>
  30. ・・・言い変うれば「利己」を脱して精神的自覚の上に立ち汝の義務をなし果たせというにある。しかるに外面に表われたる道徳は形式と因襲に伝えられてその精神を忘れ去った。 現代にもたとえば「家庭」のごとく比較的清きものがある。あの大きなストーブを囲み・・・<和辻哲郎「霊的本能主義」青空文庫>