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あかる‐み【明るみ】例文一覧 30件

  1. ・・・辱められ、踏みにじられ、揚句の果にその身の恥をのめのめと明るみに曝されて、それでもやはり唖のように黙っていなければならないのだから。私は万一そうなったら、たとい死んでも死にきれない。いやいや、あの人は必ず、来る。私はこの間別れ際に、あの人の・・・<芥川竜之介「袈裟と盛遠」青空文庫>
  2. ・・・彼は、ここまで思案をめぐらした時に、始めて、明るみへ出たような心もちがした。そうして、それと同時に今までに覚えなかったある悲しみが、おのずからその心もちを曇らせようとするのが、感じられた。「皆御家のためじゃ。」――そう云う彼の決心の中には、・・・<芥川竜之介「忠義」青空文庫>
  3. ・・・事が、どうやら勢がなく、弱々しく聞えたと思うと、挙動は早く褄を軽く急いだが、裾をはらりと、長襦袢の艶なのが、すらすらと横歩きして、半襟も、色白な横顔も、少し俯向けるように、納戸から出て来たのが、ぱっと明るみへ立つと、肩から袖が悄れて見えて、・・・<泉鏡花「みさごの鮨」青空文庫>
  4. ・・・又それは、明るみを歩む人間に、常に暗い影が伴い、喜びの裡に悲しみの潜むのと同じである。しかし悲しみの中にも来るべき喜びの萌しのあるのも勿論だ。 人間は苦悩に遭遇した時、「いつこの悩みから逃れられるのか?」と、恰もそれが永久に負わされた悩・・・<小川未明「波の如く去来す」青空文庫>
  5. ・・・港の方は、ほんのりとして、人なつかしい明るみを空の色にたたえていたけれど、盲目の弟には、それを望むこともできませんでした。 ただ、おりおり、生温かな風が沖の方から、闇のうちを旅してくるたびに、姉の帰るのを待っている弟の顔に当たりました。・・・<小川未明「港に着いた黒んぼ」青空文庫>
  6. ・・・モグラモチのように蠢きながらも生きて行かねばならぬ、罪業の重さに打わなきながらも明るみを求めて自棄してはならぬ――こういった彼の心持の真実は自分にもよくわかる気がする。といって自分のあの作が、それだけの感動に値いするものだとはけっして考えは・・・<葛西善蔵「死児を産む」青空文庫>
  7. ・・・海は暮れかけていたが、その方はまだ明るみが残っていた。 しばらくすると少年達もそれに気がついた。彼は心の中で喜んだ。「四十九」「ああ。四十九」 そんなことを言いあいながら、一度あがって次あがるまでの時間を数えている。彼はそれ・・・<梶井基次郎「城のある町にて」青空文庫>
  8. ・・・それは突然その家の前の明るみのなかへ姿を現わしたのだった。男は明るみを背にしてだんだん闇のなかへはいって行ってしまった。私はそれを一種異様な感動を持って眺めていた。それは、あらわに言ってみれば、「自分もしばらくすればあの男のように闇のなかへ・・・<梶井基次郎「闇の絵巻」青空文庫>
  9. ・・・けれども彼女が根本からの治療を受けるために自分の身体を医者に診せることだけは避け避けしたのは、旦那の恥を明るみへ持出すに忍びなかったからで。見ず知らずの女達から旦那を通して伝染させられたような病毒のために、いつか自分の命の根まで噛まれる日の・・・<島崎藤村「ある女の生涯」青空文庫>
  10. ・・・私は、ちゃんと、それを知っていますから、こうして縁側の明るみに出されて、恥ずかしいはだかの姿を、西に向け東に向け、さんざ、いじくり廻されても、かえって神様に祈るような静かな落ちついた気持になり、どんなに安心のことか。私は、立ったまま軽く眼を・・・<太宰治「皮膚と心」青空文庫>
  11. ・・・それを握んで明るみへ引出して展開させるとそこからまた次に来る世界の胚子が生れる。 それをするにはやはり前句に対する同情がなければ出来ない。どんな句にでも、云い換えるとどんな「人間」にでも同情し得るだけの心の広さがなくてはいい俳諧は出来な・・・<寺田寅彦「断片(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」青空文庫>
  12. ・・・これらの読み物は自分の五体の細胞の一つずつに潜在していた伝統的日本人をよびさまし明るみへ引き出すに有効であった。「絵本西遊記」を読んだのもそのころであったが、これはファンタジーの世界と超自然の力への憧憬を挑発するものであった。そういう意味で・・・<寺田寅彦「読書の今昔」青空文庫>
  13. ・・・もっとも科学の方面でさえもこれに似たような例がないとは言われない。明るみの矛盾を暗い穴へ押し込んで安心している事がないでもない。もしこれができなくなったら多くの学者は枕を高くして眠られそうもない。人生の問題に無頓着でいられない人々の間には猫・・・<寺田寅彦「ねずみと猫」青空文庫>
  14. ・・・しかして当時の学界へのパッスを所有していた他のルクレチウスの子孫ヘルムホルツによって始めて明るみに出るようになった。 現代の科学がルクレチウスだけで進められようとは思われない。しかしルクレチウスなしにいかなる科学の部門でも未知の領域に一・・・<寺田寅彦「ルクレチウスと科学」青空文庫>
  15. ・・・を白日の明るみに引きずり出してすみからすみまで注釈し敷衍することは曲斎的なるドイツ人の仕事であったのである。芸術のほうでもマチスの絵やマイヨールの彫刻にはどこかにわれわれの俳諧がある。これがドイツへはいると、たちまちに器械化数学化した鉄筋式・・・<寺田寅彦「連句雑俎」青空文庫>
  16. ・・・どうかした拍子でふいと自然の好い賜に触れる事があってもはっきり覚めている己の目はその朧気な幸を明るみへ引出して、余りはっきりした名を付けてしまったのだ。そして種々な余所の物事とそれを比べて見る。そうすると信用というものもなくなり、幸福の影が・・・<著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外「痴人と死と」青空文庫>
  17. ・・・ 胃袋へ流し込んだ醋酸の火傷がなおるにつれ、グラフィーラの生活には希望と明るみがさして来た。これまで知らなかった、暢々したひろさでさして来た。ソモフは、万事を約束通りにしてくれ、彼女は工場へ働き出した。 まるで新しい生活がグラフィー・・・<宮本百合子「「インガ」」青空文庫>
  18. ・・・これは、ただ、かくされていた神聖さを明るみに出して見たときは、それも平凡なものとなるというだけを意味することであろうか。そうは思われない。私たちが、ものをいわされず、書かされないとき、ちょうど節穴から一筋の日光がさしこむようにチラリと洩らさ・・・<宮本百合子「現代の主題」青空文庫>
  19. ・・・この面白さは今日の文学の姿では、まだはっきりもしていない可能として、渾沌のかげに考えられる程度だけれども、どんなにそれが遠くの明るみのでも、やはり或る希望であることにかわりはない。私たちが自分たちの世代を歴史の水深計でつかみ、その上に漂いそ・・・<宮本百合子「今日の文学の諸相」青空文庫>
  20. ・・・氏の描く世界が、従来多くの作家に扱われて来ている種類のインテリゲンツィアでなく、さりとてプロレタリア文学が描こうとする社会層でもなくて、半インテリゲンツィアとでも云われるような半ば明るみに半ば思想の薄暮に生きる人々の群であることも、見落せな・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  21. ・・・前の屋上の天井はその頃何年か硝子がこわれたまんまで鉄骨が黒く月の明るみに出ていた。モスクワ市街が急激に様子を変えはじめて今はもうそこが立派に修理され、新聞社と出版労働者の倶楽部になって、夜は音楽が私の窓へもつたわって来るのである。 ひと・・・<宮本百合子「坂」青空文庫>
  22. ・・・太陽の明るみが何時か消えて、西岸に聳えるプロスペクト山の頂に見馴れた一つ星が青白く輝き出すと、東の山の端はそろそろと卵色に溶け始めます。けれども、支えて放たれない光りを背に据えた一連の山々は、背後の光輝が愈々増すにつれて、刻一刻とその陰影を・・・<宮本百合子「C先生への手紙」青空文庫>
  23. ・・・そして、夏の夜がそうである通りに、闇とはいっても、微かにおぼろに、物の形、姿だけは浮んで見えるほの明りに足元をさぐりさぐり、彼女はより明るみへ、より輝きへと、歩を向けて行っていたのである。 そして、彼女の心附かないうちに、生活の律動は、・・・<宮本百合子「地は饒なり」青空文庫>
  24. ・・・ 夜が明けて各々のかおがはっきり見えるようになると又かなしみも明るみにハッキリかおをだしてきのうの今頃と云う感じがたれの頭にでもあった。化粧もうっすり黒い衣をきなくちゃならないのがまだこの部屋に来てまもない女等は辛いように思われた。早い・・・<宮本百合子「錦木」青空文庫>
  25. ・・・ ト思うと、日光の明るみに戸惑いした梟を捕まえて、倒さまに羽根でぶらさげながら、陽気な若者がどこへか馳けて行く。 今まで、森はあんなに静かな穏やかなところと、誰の頭にもしみ込んでいるので、これ等の騒ぎは、この上なくいやな、粗雑な感じ・・・<宮本百合子「禰宜様宮田」青空文庫>
  26. ・・・ けれども、十一月に入り、新年が近づくにつれ、自分のその冷静な頭脳の明るみは、次第に他の感情で包まれるようになって来た。 仕方がない。彼女の解って呉れる迄、自分は自分の生活を、すっかり独りで営もう、と云う自足の感情は、やがて、此、淋・・・<宮本百合子「二つの家を繋ぐ回想」青空文庫>
  27. ・・・ 尾世川と藍子とは、最後の鼠色の船が、先ず船首の端から明るみ、帆の裾、中頃ぐらい、段々遂に張った帆の端が真白になってしまう迄、瞳を凝し見守った。「……変だなあ……」 藍子が、眼をしぼしぼさせながら、若々しい驚きを面に現して云った・・・<宮本百合子「帆」青空文庫>
  28. ・・・ところが違う。明るみに出るにはなかなかだと解った。原因は、良人である彼に、左様な異常な死を死なれたからではない。彼を生かし、きっと幸福にしてやれる確信も自分にもたないのに、死ななかったら仕合にしてあげたのという出鱈目な気休めは云えない。ああ・・・<宮本百合子「文字のある紙片」青空文庫>
  29. ・・・日本の宵には空にうすら明るみがただよっていても、樹かげや大地から濃い闇が這いのぼって来て浴衣の白さを目立たせるのだけれど、北の夏の白夜の明るさにはまるでこの闇のかげというものがなくて、底まですきとおった、反射する光のない薄明で、並木の若葉も・・・<宮本百合子「モスクワ」青空文庫>
  30. ・・・窓から射す明るみの中でパッと赤い布をかけたテーブルが浮立っている。「ああ、これがここに働くもののクラブです」 本棚がある。小説類、レーニン論文集、生理医学等の本がギッシリつまっている。「すべての勤労者に知識と健康とを!」 絵・・・<宮本百合子「モスクワ日記から」青空文庫>