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お・ちる【落ちる/堕ちる/墜ちる】例文一覧 32件

  1. ・・・その内に彼等の旅籠の庭には、もう百日紅の花が散って、踏石に落ちる日の光も次第に弱くなり始めた。二人は苦しい焦燥の中に、三年以前返り打に遇った左近の祥月命日を迎えた。喜三郎はその夜、近くにある祥光院の門を敲いて和尚に仏事を修して貰った。が、万・・・<芥川竜之介「或敵打の話」青空文庫>
  2. ・・・赤坊はいんちこの中で章魚のような頭を襤褸から出して、軒から滴り落ちる雨垂れを見やっていた。彼れの気分にふさわない重苦しさが漲って、運送店の店先に較べては何から何まで便所のように穢かった。彼は黙ったままで唾をはき捨てながら馬の始末をするとすぐ・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  3. ・・・木の上では睡った鳥の重りで枯枝の落ちる音がする。近い街道では車が軋る。中には重荷を積んだ車のやや劇しい響をさせるのもある。犬の身の辺には新らしいチャンの匂いがする。 この別荘に来た人たちは皆好い人であった。その好い人が町を離れて此処で清・・・<著:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ 訳:森鴎外「犬」青空文庫>
  4. ・・・合せ目も中透いて、板も朽ちたり、人通りにはほろほろと崩れて落ちる。形ばかりの竹を縄搦げにした欄干もついた、それも膝までは高くないのが、往き還り何時もぐらぐらと動く。橋杭ももう痩せて――潮入りの小川の、なだらかにのんびりと薄墨色して、瀬は愚か・・・<泉鏡花「海の使者」青空文庫>
  5. ・・・水の溜ってる面積は五、六町内に跨がってるほど広いのに、排水の落口というのは僅かに三か所、それが又、皆落口が小さくて、溝は七まがりと迂曲している。水の落ちるのは、干潮の間僅かの時間であるから、雨の強い時には、降った水の半分も落ちきらぬ内に、上・・・<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  6. ・・・何のことはない、野砲、速射砲の破裂と光弾の光とがつづけざまにやって来るんやもの、かみ鳴りと稲妻とが一時に落ちる様や、僕等は、もう、夢中やった。午後九時頃には、わが聨隊の兵は全く乱れてしもて、各々その中隊にはおらなかった。心易いものと心易いも・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  7. ・・・ちらちらと、横なぐりに、雪は、波の上に落ちると、たちまち消えてしまいました。ふとそのとき、水の底に、茫として、怪しい影のようなものが見えたのであります。「なんだろう?」と、彼が、瞳をこらすと、破れた帆を傾けて、一そうの、難破船が、水の中・・・<小川未明「海のまぼろし」青空文庫>
  8. ・・・天井に映された太陽が西へ傾き、落ちると、大阪の夜の空が浮び出て来る。降るような星空だ。月が出て動く。星もいつか動く。と見る間に南極の空が浮びあがって、星の世界一周が始まったのだ。 などとこんな説明で、その浪慢的な美しさは表現できぬ。われ・・・<織田作之助「星の劇場」青空文庫>
  9. ・・・そんなときふと邪慳な娼婦は心に浮かび、喬は堪らない自己嫌厭に堕ちるのだった。生活に打ち込まれた一本の楔がどんなところにまで歪を及ぼして行っているか、彼はそれに行き当るたびに、内面的に汚れている自分を識ってゆくのだった。 そしてまた一本の・・・<梶井基次郎「ある心の風景」青空文庫>
  10. ・・・それで例の想像にもです、冬になると雪が全然家を埋めて了う、そして夜は窓硝子から赤い火影がチラチラと洩れる、折り折り風がゴーッと吹いて来て林の梢から雪がばたばたと墜ちる、牛部屋でホルスタイン種の牝牛がモーッと唸る!」「君は詩人だ!」と叫け・・・<国木田独歩「牛肉と馬鈴薯」青空文庫>
  11. ・・・ たとえば前イギリス皇帝の場合にしても皇位を抛ってまでもの、シンプソン夫人への誠実を賞賛するにおいて私は決して人後に落ちるものではないが、もしかりに前英帝にイギリスの政治的使命についての、文明史的自覚が燃えていたとするならば、それでもそ・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  12. ・・・栗島は、老人の傷口から溢れた血が、汚れた阿片臭い着物にしみて、頭から水をあびせられたように、着物がべと/\になって裾にしたゝり落ちるのを見た。薄藍色の着物が血で、どす黒くなった。血は、いつまでたっても止まらなかった。 血は、老人がはねま・・・<黒島伝治「穴」青空文庫>
  13. ・・・四人はウンと踏堪えました。落ちる四人と堪える四人との間で、ロープは力足らずしてプツリと切れて終いました。丁度午後三時のことでありましたが、前の四人は四千尺ばかりの氷雪の処を逆おとしに落下したのです。後の人は其処へ残ったけれども、見る見る自分・・・<幸田露伴「幻談」青空文庫>
  14. ・・・そしてハンドルを二、三回廻すと、箱の底へ手紙が落ちる音がした。恵子からの手紙の返事はすぐ来た。冒頭に「あなたは遅かった!」そうあった。それによると最近彼女はある男と結婚することに決まっていた。――「犬だって!」犬だって、これじゃあまり惨・・・<小林多喜二「雪の夜」青空文庫>
  15. ・・・ そろそろあの榎木の実が落ちる時分でした。二人の兄弟はそれを拾うのを楽みにして、まだあの実が青くて食べられない時分から、早く紅くなれ早く紅くなれと言って待って居ました。 二人の兄弟の家には奉公して働いて居る正直な好いお爺さんがありま・・・<島崎藤村「二人の兄弟」青空文庫>
  16. ・・・ 池へ山水の落ちるのが幽かに聞える。小母さんはいつしか顔を出してすやすやと眠っている。大根を引くので疲れたのかもしれない。小母さんの静かな寝顔をじっと見ていると、自分もだんだんに瞼が重くなる。 千鳥の話は一と夜明ける。 自分・・・<鈴木三重吉「千鳥」青空文庫>
  17. ・・・奥さんはまだ一度もその村に行った事はありませんが、島の向こう側で日の落ちる方にあるという事は知っていました。またそこに行く途中には柵で囲まれた六つの農場と、六つの門とがあるという事を、百姓から聞かされていました。 でいよいよ出かけました・・・<著:ストリンドベリアウグスト 訳:有島武郎「真夏の夢」青空文庫>
  18. ・・・地獄に落ちるのだからね。 不平を言うな。だまって信じて、ついて行け。オアシスありと、人の言う。ロマンを信じ給え。「共栄」を支持せよ。信ずべき道、他に無し。 甘さを軽蔑する事くらい容易な業は無い。そうして人は、案外、甘さの中に・・・<太宰治「かすかな声」青空文庫>
  19. ・・・大きな涙の緒が頬を伝わって落ちる。夕映えを受けた帆の色が血のように赤い。 夕映えの雲の形が崩れて金髪の女が現われる。乱れた金髪を双の手に掻き乱して空を仰いだ顔には絶望の色がある。その上に青い星が輝いている。 炉の火が一時にくずれて、・・・<寺田寅彦「ある幻想曲の序」青空文庫>
  20. ・・・網を張っておいて、鳥を追立て、引かかるが最期網をしめる、陥穽を掘っておいて、その方にじりじり追いやって、落ちるとすぐ蓋をする。彼らは国家のためにするつもりかも知れぬが、天の眼からは正しく謀殺――謀殺だ。それに公開の裁判でもすることか、風紀を・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  21. ・・・金ぞくのようにかたい竹のふしは、ときどきせんをはねかえしてからすべりすると、雨だれのような汗がボト、ボトとまえに落ちる。―― せまい熊本市で、三吉も「喰いつめた」一人であった。新聞社でストライキに加わって解雇され、発電所で「労働問題演説・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  22. ・・・澁い枳の実は霜の降る度に甘くなって、軈て四十雀のような果敢ない足に踏まれても落ちるようになる。幼いものは竹藪へつけこんでは落ち葉に交って居る不格好な実を拾っては噛むのである。太十も疱瘡に罹るまでは毎日懐へ入れた枳の実を噛んで居た。其頃はすべ・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  23. ・・・見れば美しき衣の片袖は惜気もなく断たれて、残るは鞘の上にふわりと落ちる。途端に裸ながらの手燭は、風に打たれて颯と消えた。外は片破月の空に更けたり。 右手に捧ぐる袖の光をしるべに、暗きをすりぬけてエレーンはわが部屋を出る。右に折れると兄の・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  24. ・・・ ――あれが落ちるほど揺ったかなあ。 医者は感に堪えた風に言って、足の手当をした。 医者が足の手当をし始めると、私は何だか大変淋しくなった。心細くなった。 朝は起床と言って起こされる。 と怒鳴る。  ――ないもの・・・<葉山嘉樹「牢獄の半日」青空文庫>
  25. ・・・雪は絶間なく渦を巻いて地の上と水の上とに落ちる。その落ちるのが余り密なので、遠い所の街灯の火が蔽われて見えない。 爺いさんが背後を振り返った時には、一本腕はもう晩食をしまっていた。一本腕はナイフと瓶とを隠しにしまった。そしてやっと人づき・・・<著:ブウテフレデリック 訳:森鴎外「橋の下」青空文庫>
  26. ・・・其方もある夏の夕まぐれ、黄金色に輝く空気の中に、木の葉の一片が閃き落ちるのを見た時に、わしの戦ぎを感じた事があるであろう。凡そ感情の暖かい潮流が其方の心に漲って、其方が大世界の不思議をふと我物と悟った時、其方の土塊から出来ている体が顫えた時・・・<著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外「痴人と死と」青空文庫>
  27. ・・・寐棺の中に自分が仰向けになっておるとして考えて見玉え、棺はゴリゴリゴリドンと下に落ちる。施主が一鍬入れたのであろう、土の塊りが一つ二つ自分の顔の上の所へ落ちて来たような音がする。其のあとはドタバタドタバタと土は自分の上に落ちて来る。またたく・・・<正岡子規「死後」青空文庫>
  28. ・・・「ぼくなんか落ちるとちゅうで目がまわらないだろうか。」一つの実がいいました。「よく目をつぶっていけばいいさ。」も一つが答えました。「そうだ。わすれていた。ぼく水とうに水をつめておくんだった。」「ぼくはね、水とうのほかにはっか・・・<宮沢賢治「いちょうの実」青空文庫>
  29. ・・・春らしい柔かい雪が細い別荘の裏通りを埋め、母衣に触った竹の枝からトトトト雪が俥の通った後へ落ちる。陽子はさし当り入用な机、籐椅子、電球など買った。四辺が暗くなりかけに、借部屋に帰った。上り端の四畳に、夜具包が駅から着いたままころがしてある。・・・<宮本百合子「明るい海浜」青空文庫>
  30. ・・・子猿が母の腋を潜り、股を潜り、背に乗り、頭に乗って取ろうとしても、芋は大抵母猿の手に落ちる。それでも四つに一つ、五つに一つは子猿の口にも入る。 母猿は争いはする。しかし芋がたまさか子猿の口に這入っても子猿を窘めはしない。本能は存外醜悪で・・・<森鴎外「牛鍋」青空文庫>