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ぐ‐ち【愚痴/愚×癡】例文一覧 30件

  1. ・・・お母さんはああやって寝ているし、お前にゃ愚痴ばかりこぼされるし、――」 洋一は父の言葉を聞くと、我知らず襖一つ向うの、病室の動静に耳を澄ませた。そこではお律がいつもに似合わず、時々ながら苦しそうな唸り声を洩らしているらしかった。「お・・・<芥川竜之介「お律と子等と」青空文庫>
  2. ・・・彼はある素人下宿の二階に大島の羽織や着物を着、手あぶりに手をかざしたまま、こう云う愚痴などを洩らしていた。「日本もだんだん亜米利加化するね。僕は時々日本よりも仏蘭西に住もうかと思うことがある。」「それは誰でも外国人はいつか一度は幻滅・・・<芥川竜之介「彼 第二」青空文庫>
  3. ・・・……ついぞ愚痴などを言った事のない祖母だけれど、このごろの余りの事に、自分さえなかったら、木登りをしても学問の思いは届こうと、それを繰返していたのであるから。 幸に箸箱の下に紙切が見着かった――それに、仮名でほつほつとと書いてあった。・・・<泉鏡花「瓜の涙」青空文庫>
  4. ・・・夏この滝の繁昌な時分はかえって貴方、邪魔もので本宅の方へ参っております、秋からはこうやって棄てられたも同然、私も姨捨山に居ります気で巣守をしますのでざいましてね、いいえ、愚痴なことを申上げますのではございませんが、お米もそこを不便だと思って・・・<泉鏡花「政談十二社」青空文庫>
  5. ・・・常にも似ず愚痴ばかり申し上げ失礼いたし候。こんな事申し上ぐるにも心は慰み申し候。それでも省さまという人のあるわたし、決して不仕合せとは思いませぬ」 種まきの仕度で世間は忙しい。枝垂柳もほんのり青みが見えるようになった。彼岸桜の咲くと・・・<伊藤左千夫「春の潮」青空文庫>
  6. ・・・から款待やされて非常な大文豪であるかのように持上げられて自分を高く買うようになってからの緑雨の皮肉は冴を失って、或時は田舎のお大尽のように横柄で鼻持がならなかったり、或時は女に振棄てられた色男のように愚痴ッぽく厭味であったりした。緑雨が世間・・・<内田魯庵「斎藤緑雨」青空文庫>
  7. ・・・今日のような思想上の戦国時代に在っては文人は常に社会に対する戦闘者でなければならぬが、内輪同士では年寄の愚痴のような繰言を陳べてるが、外に対しては頭から戦意が無く沈黙しておる。 二十五年の歳月が聊かなりとも文人の社会的位置を進めたのは時・・・<内田魯庵「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」青空文庫>
  8. ・・・それでも、一度だけだが、板の間のことをその場で指摘されると、何ともいい訳けのない困り方でいきなり平身低頭して詫びを入れ、ほうほうの体で逃げ帰った借金取があったと、きまってあとでお辰の愚痴の相手は娘の蝶子であった。 そんな母親を蝶子はみっ・・・<織田作之助「夫婦善哉」青空文庫>
  9. ・・・愚か者の妻の――愚痴ばかし言ってくる――それほどならば帰る気になぞならなければよかったのに――彼女からの時々の手紙も、実際私を弱らすものだ。けれどもむろん、そのためばかしとはいえない。とにかく私には元気がない。動くものがない。私の生命力とい・・・<葛西善蔵「遁走」青空文庫>
  10. ・・・ 生活の革命だと信じて思い昂っている耕吉には、細君の愚痴話には、心から同情することができなかったのだ。 惣治は時々別荘へでも来る気で、子供好きなところから種々な土産物など提げては、泊りがけでG村を訪ねた。「閑静でいいなあ、別・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  11. ・・・のお婆さんが平常あんなに見えていても、その娘を親爺さんには内証で市民病院へ連れて行ったり、また娘が寝たきりになってからは単に薬をもらいに行ってやったりしたことがあるということを、あるときそのお婆さんが愚痴話に吉田の母親をつかまえて話したこと・・・<梶井基次郎「のんきな患者」青空文庫>
  12. ・・・気軽の天稟にもあらず、いろいろ独りで考えた末が日ごろ何かに付けて親切に言うてくれるお絹お常にだけ明かして見ようとまずお絹から初めるつもりにてかくはふるまいしまでなり、うたてや吉次は身の上話を少しばかり愚痴のように語りしのみにてついにその夜は・・・<国木田独歩「置土産」青空文庫>
  13. ・・・と老母が漸と口を利たと思ったら物置の愚痴。真蔵は頭を掻いて笑った。「否、こういうことになったのも、竹の木戸のお蔭で御座いますよ、ですから私は彼処を開けさすのは泥棒の入口を作えるようなものだと申したので御座います。今となれゃ泥棒が泥棒の出・・・<国木田独歩「竹の木戸」青空文庫>
  14. ・・・ この帰省中に日蓮は清澄山での旧師道善房に会って、彼の愚痴にして用いざるべきを知りつつも、じゅんじゅんとして法華経に帰するようにいましめた。日蓮のこの道善への弟子としての礼と情愛とは世にも美しいものであり、この一事あるによって私は日蓮を・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  15. ・・・またしても、おしかの愚痴が繰り返された。「うらア始めから、尋常を上ったら、もうそれより上へはやらん云うのに、お前が無理にやるせにこんなことになったんじゃ。どうもこうもならん!」 それは二月の半ば頃だった。谷間を吹きおろしてくる嵐は寒・・・<黒島伝治「老夫婦」青空文庫>
  16. ・・・釣れないというと未熟な客はとかくにぶつぶつ船頭に向って愚痴をこぼすものですが、この人はそういうことを言うほどあさはかではない人でしたから、釣れなくてもいつもの通りの機嫌でその日は帰った。その翌日も日取りだったから、翌日もその人はまた吉公を連・・・<幸田露伴「幻談」青空文庫>
  17. ・・・鴻雁翔天の翼あれども栩々の捷なく、丈夫千里の才あって里閭に栄少し、十銭時にあわず銅貨にいやしめらるなぞと、むずかしき愚痴の出所はこんな者とお気が付かれたり。ようやくある家にて草鞋を買いえて勇を奮い、八時半頃野蒜につきぬ。白魚の子の吸物いとう・・・<幸田露伴「突貫紀行」青空文庫>
  18. ・・・これは、愚痴だ。うらみだ。けれども、それを、口に出して、はっきり言わなければ、ひとは、いや、おまえだって、私の鉄面皮の強さを過信して、あの男は、くるしいくるしい言ったって、ポオズだ、身振りだ、と、軽く見ている。」 かず枝は、なにか言いだ・・・<太宰治「姥捨」青空文庫>
  19. ・・・一つ牛込の瀬川さんを訪れて、私の愚痴を聞いてもらおうかと思った。 さいわい先生は御在宅であった。私は大隅君の上京を報告して、「どうも、あいつは、いけません。結婚に感激を持っていません。てんで問題にしていないんです。ただもう、やたらに・・・<太宰治「佳日」青空文庫>
  20. ・・・細君は珍しいおとなしい女で、口喧ましい夫にかしずく様はむしろ人の同情をひくくらいで、ついぞ近所なぞで愚痴をこぼした事もない。従ってこの変った家庭の成立についても細君の元の身分についても、何事も確かな事は聞かれなかった。今は黒田も地方へ行って・・・<寺田寅彦「イタリア人」青空文庫>
  21. ・・・無口ではなかったけれど、ぶつくさした愚痴や小言は口にしなかった。常磐津の名取りで、許しの書きつけや何かを、みんなで芸者たちの腕の批評をしていたとき、お絹が道太や辰之助に見せたことがあった。「なるほどね、二流三流どこは、こんなことをして田・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  22. ・・・のみならずむやみに泣いて愚痴ばかり並べている。あの山を上るところなどは一起一仆ことごとく誇張と虚偽である。鬘の上から水などを何杯浴びたって、ちっとも同情は起らない。あれを真面目に見ているのは、虚偽の因襲に囚われた愚かな見物である。○立ち・・・<夏目漱石「明治座の所感を虚子君に問れて」青空文庫>
  23. ・・・ 死にし子顔よかりき、をんな子のためには親をさなくなりぬべしなど、古人もいったように、親の愛はまことに愚痴である、冷静に外より見たならば、たわいない愚痴と思われるであろう、しかし余は今度この人間の愚痴というものの中に、人情の味のあること・・・<西田幾多郎「我が子の死」青空文庫>
  24. ・・・もう愚痴は溢さない約束でしたッけね。ほほほほほほ」と、淋しく笑ッた。「花魁、花魁」と、お熊がまたしても室外から声をかける。「今じきに行くよ」と、吉里も今度は優しく言う。お熊は何も言わないであちらへ行ッた。「ちょいと行ッて来ちゃア・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  25. ・・・或は市中公会等の席にて旧套の門閥流を通用せしめざるは無論なれども、家に帰れば老人の口碑も聞き細君の愚痴も喧しきがために、残夢まさに醒めんとしてまた間眠するの状なきにあらず。これ等の事情をもって考るに、今の成行きにて事変なければ格別なれども、・・・<福沢諭吉「旧藩情」青空文庫>
  26. ・・・縁語を用いたる句、春雨や身にふる頭巾著たりけりつかみ取て心の闇の螢哉半日の閑を榎や蝉の声出代や春さめ/″\と古葛籠近道へ出てうれし野のつゝじかな愚痴無智のあま酒つくる松が岡蝸牛や其角文字のにじり書橘のかは・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  27. ・・・ お金が台所へ立ってしまうと、お君は父親をぴったり枕のそばに引きつけて、ボソボソと低い声であらいざらいの事を話して愚痴をこぼしたり、恨みを並べたりした。 毎月一週間ずつ入院して、病のある骨盤に注射をしたり、膿を取ったりしなければなら・・・<宮本百合子「栄蔵の死」青空文庫>
  28. ・・・ 昨今は私が何か云うと、愚痴とか厭味とか云ってからかわれることになっている。それだけで何の効果もない。何の役にも立たない。人に利益は与えずに、自分が不愉快な目に逢うのみです。そんなことは私だってしたくはないのです。 現在の文芸界では・・・<森鴎外「Resignation の説」青空文庫>
  29. ・・・それにつけても未練らしいかは知らぬが、門出なされた時から今日までははや七日じゃに、七日目にこう胸がさわぐとは……打ち出せば愚痴めいたと言われ……おお雁よ。雁を見てなげいたという話は真に……雁、雁は翼あって……のう」 だが身贔負で、なお幾・・・<山田美妙「武蔵野」青空文庫>
  30. ・・・ しかしこの事実の認識はただ「愚痴」という形にのみ現わるべきものでないと思います。愚痴をこぼすのは相手から力と愛を求めることです。相手にそれだけ力と愛とが横溢していない時には、勢い愚痴は相手を弱め陰気にします。我々から愛を求めている者に・・・<和辻哲郎「ある思想家の手紙」青空文庫>