・・・で巧みに撃退されたのは我々通り一遍の面識者ばかりじゃなかった。沼南と仕事を侶にした提携者や門下生的関係ある昵近者さえが「復たユックリ来給え」で碌々用談も済まない中に撃退されてブツクサいうのは珍らしくなかった。 尤も沼南は極めて多忙で、地・・・ 内田魯庵 「三十年前の島田沼南」
・・・北海に浜する国にとりては敵国の艦隊よりも恐るべき砂丘は、戦闘艦ならずして緑の樅の林をもって、ここにみごとに撃退されたのであります。 霜は消え砂は去り、その上に第三に洪水の害は除かれたのであります。これいずこの国においても植林の結果として・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・ これで武はまたも撃退されてしまったのである。 下 さて石井翁は煙草一本すいおわったところでベンチを立とうとしたが徳の遊食罪悪説がちょっと気にかかりだしたので、また一本取り出してすい初めた。徳の本心を見ぬいて・・・ 国木田独歩 「二老人」
・・・ ロシア人を撃退したところで自分達には何等の利益もありはしないのだ。 彼等は、たまらなく憂欝になった。彼等をシベリアへよこした者は、彼等がこういう風に雪の上で死ぬことを知りつつ見す見すよこしたのだ。炬たつに、ぬくぬくと寝そべって、いい雪・・・ 黒島伝治 「橇」
・・・と言って撃退するのであった。当時の先生は同窓の一部の人々にはたいそうこわい先生だったそうであるが、自分には、ちっともこわくない最も親しいなつかしい先生であったのである。 科外講義としておもに文科の学生のために、朝七時から八時までオセロを・・・ 寺田寅彦 「夏目漱石先生の追憶」
・・・そして、包囲軍を撃退する迄そこに留った。当時の日記が整理されて、「殆ど三年」という題で出版された。 その大きい経験で、インベルの才能がどのように鞏固にされ、拡大されただろう。早く彼女の最近の収穫を読みたいと思う。そこには全ソヴェトの善戦・・・ 宮本百合子 「新世界の富」
・・・ これまでだって、ソヴェトのプロレタリアートは幾度か国際的な陰謀によって生産妨害を受け、それを撃退して来た。現に一九三〇年の夏にもイギリスの金でやられていたソヴェト漁業反革命運動の一つがバレた。引きつづいて、この産業党の大陰謀だ。フラン・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
出典:青空文庫