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こう‐ぶつ〔カウ‐〕【好物】例文一覧 16件

  1. ・・・握り飯は彼の好物だった。彼は大きい鋏の先にこの獲物を拾い上げた。すると高い柿の木の梢に虱を取っていた猿が一匹、――その先は話す必要はあるまい。 とにかく猿と戦ったが最後、蟹は必ず天下のために殺されることだけは事実である。語を天下の読者に・・・<芥川竜之介「猿蟹合戦」青空文庫>
  2. ・・・私は本と首引きだが、本草が好物でな、知ってる通り。で、昨日ちと山を奥まで入った。つい浮々と谷々へ釣込まれて。 こりゃ途中で暗くならなければ可いが、と山の陰がちと憂慮われるような日ざしになった。それから急いで引返したのよ。」   ・・・<泉鏡花「朱日記」青空文庫>
  3. ・・・「それは何よりの好物です。――ところで、先生、私はこれでもなかなか苦労が絶えないんでございますよ。娘からお聴きでもございましょうが、芸者の桂庵という仕事は、並み大抵の人には出来ません。二百円、三百円、五百円の代物が二割、三割になるんです・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  4. ・・・ 鴎外は甘藷と筍が好物だったそうだ。肉食家というよりは菜食党だった。「野菜料理は日本が世界一である。欧羅巴の野菜料理てのは鶯のスリ餌のようなものばかりだから、「ヴェジテラニヤン・クラブ」へ出入する奴は皆青瓢箪のような面をしている。が・・・<内田魯庵「鴎外博士の追憶」青空文庫>
  5. ・・・殊に蜜柑と樽柿が好物で、見る間に皮や種子を山のように積上げ、「死骸を見るとさも沢山喰ったらしくて体裁が宜くない、」などと云い云い普通の人が一つ二つを喰う間に五つも六つもペロペロと平らげた。 が、贅沢は食物だけであって、衣服や道具には極め・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  6. ・・・此頃のことでした、観行院様にお前は何を仕て居たいかと問われたとき、芋を喰って本を読んで居ればそれで沢山だと答えたそうですが、芋ぐらいが好物であったと見えます、ハハハハ。猶学校友達の中に清川というのがありました。これは少し私より年長で、家は蒔・・・<幸田露伴「少年時代」青空文庫>
  7. ・・・ 大好物。そいつあ、よかった。」内心は少しも、いい事はないのである。高いだろうなあ、そいつは。おれは今迄、鯛の塩焼なんて、たべた事がない。けれども、いまは大いに喜んだふりをしなければならぬ。つらいところだ、畜生め! 「鯛の塩焼と聞いちゃ、た・・・<太宰治「禁酒の心」青空文庫>
  8. ・・・「大好物だ。ここにあるのかい? ごちそうになろう。」「冗談じゃない。お出しなさい。」 キヌ子は、おくめんも無く、右の手のひらを田島の鼻先に突き出す。 田島は、うんざりしたように口をゆがめて、「君のする事なす事を見ていると・・・<太宰治「グッド・バイ」青空文庫>
  9. ・・・僕の大好物なんだ。海老の髭には、カルシウムが含まれているんだ。」出鱈目である。 食卓には、つくだ煮と、白菜のおしんこと、烏賊の煮附けと、それだけである。私はただ矢鱈に褒めるのだ。「おしんこ、おいしいねえ。ちょうど食べ頃だ。僕は小さい・・・<太宰治「新郎」青空文庫>
  10. ・・・千住の名産寒鮒の雀焼に川海老の串焼と今戸名物の甘い甘い柚味噌は、お茶漬の時お妾が大好物のなくてはならぬ品物である。先生は汚らしい桶の蓋を静に取って、下痢した人糞のような色を呈した海鼠の腸をば、杉箸の先ですくい上げると長く糸のようにつながって・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  11. ・・・のだから、いやとか好きとか云うならそれまでであるが、根拠のない好悪を発表するのを恥じて、理窟もつかぬところに、いたずらな理窟をつけて、弁解するのは、消化がわるいから僕は蛸が嫌だというような口上で、もし好物であったなら、いかほど不消化でも、だ・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  12. ・・・ 千代が、さしずをされずに拵えるものは、何でもない、彼女自身の大好物な味噌おじや丈だとわかったとき、さほ子は、良人の寝台の上に突伏し声を殺して笑い抜いた。 千代は、美しい眉をひそめながらぴんと小指を反せて鍋を動し、驚くほどのおじやを・・・<宮本百合子「或る日」青空文庫>
  13. ・・・ 私は島田の父上[自注7]の御好物の海苔をおことづけ願いましたし、べったら漬もあるし、まあ東京からおかえりらしいお土産が揃って結構でした。 お立ちになってから林町へ一緒にまわってお風呂に入って、十二時一寸前家へかえりました。栄さんが・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  14. ・・・特に好物といえばあい鴨です。 野菜では、胡瓜とかサラダとか、見た眼に新鮮な感じのするものを好みます。殊に五月時分、はしりの胡瓜をなまのまま輪切りにして塩をつけてたべるのは、毎年その季節の楽しみの一つです。 嫌いなものといえば、何より・・・<宮本百合子「身辺打明けの記」青空文庫>
  15. ・・・私は、弱い女が死に者狂いで泣き叫ぶ声や、いとけない子供が死にかかって母親をさがす、そう云う声が好物だ。ヴィンダー 愈事は順調に運ぶ。彼方此方の隅々から赤い焔がふき出したぞ。ほら、壊れた、脆い、木造りの梁に火の粉がとびつく。ぱっと拡がる。・・・<宮本百合子「対話」青空文庫>
  16. ・・・詩人は母が好物だというのでわざわざとってくれたローズの目の様な美くしいブドーを吸いながら、雪の日に旅立って門を出た時の事から今日門をくぐる時までの所を丁寧に話しました。母親も祖母も不思議な物語の様な話に耳をそば立てました。朗な声の調子は丁度・・・<宮本百合子「無題(一)」青空文庫>