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じつ‐は【実は】例文一覧 46件

  1.       一 支那の上海の或町です。昼でも薄暗い或家の二階に、人相の悪い印度人の婆さんが一人、商人らしい一人の亜米利加人と何か頻に話し合っていました。「実は今度もお婆さんに、占いを頼みに来たのだがね、――」・・・<芥川竜之介「アグニの神」青空文庫>
  2. ・・・「私は実はこちらを拝見するのははじめてで、帳場に任して何もさせていたもんでございますから、……もっとも報告は確実にさせていましたからけっしてお気に障るような始末にはなっていないつもりでございますが、なにしろ少し手を延ばして見ますと、体が・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  3. ・・・ それは実はこうであった。が、あのまだ物を見ている、大きく開けた目の上に被さる刹那に、このまだ生きていて、もうすぐに死のうとしている人の目が、外の人にほとんど知れない感情を表現していたのである。それは最後に、無意識に、救を求める訴であっ・・・<著:アルチバシェッフミハイル・ペトローヴィチ 訳:森鴎外「罪人」青空文庫>
  4. ・・・しかし羨ましいね君の今のやり方は、実はずっと前からのおれの理想だよ。もう三年からになる。B そうだろう。おれはどうも初め思いたった時、君のやりそうなこったと思った。A 今でもやりたいと思ってる。たった一月でも可い。B どうだ、お・・・<石川啄木「一利己主義者と友人との対話」青空文庫>
  5. ・・・……その日その日の米薪さえ覚束ない生活の悪処に臨んで、――実はこの日も、朝飯を済ましたばかりなのであった。 全焼のあとで、父は煩って世を去った。――残ったのは七十に近い祖母と、十ウばかりの弟ばかり。 父は塗師職であった。 黄金無・・・<泉鏡花「瓜の涙」青空文庫>
  6. ・・・竜の髭の実は実に色が麗しい。たとえて言いようもない。あざやかに潤いがあるとでも言ったらよいか。藪から乗り出した冬青の木には赤い実が沢山なってる。渋味のある朱色でいや味のない古雅な色がなつかしい。省作は玉から連想して、おとよさんの事を思い出し・・・<伊藤左千夫「隣の嫁」青空文庫>
  7. ・・・「おッ母さん、実は気が欝して来たんで、一杯飲ましてもらいたいんです、どッかいい座敷を一つ開けてもらいましょうか?」「それはありがとうござります」と、お貞はお君に目くばせしながら、「風通しのええ二階の三番がよかろ。あすこへ御案内お・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  8. ・・・この噂の虚実は別として、この新聞を見た若い美術家の中には椿岳という画家はどんな豪い芸術家であったろうと好奇心を焔やしたものもまた決して少なくないだろう。椿岳は芳崖や雅邦と争うほどな巨腕ではなかったが、世間を茶にして描き擲った大津絵風の得意の・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  9. ・・・なるほど文学者になることは私が前に述べましたとおりヤサシイこととは思いますけれども、しかし誰でも文学者になるということは実は望むべからざることであります。たとえば、学校の先生……ある人がいうように何でも大学に入って学士の称号を取り、あるいは・・・<内村鑑三「後世への最大遺物」青空文庫>
  10. ・・・ 明くる年も、その明くる年も、同じように、りんごの実は落ちてしまいました。それはなんとなく、子細のあるらしいことでありました。村のもののわかったじいさんは、牛女の子供に向かって、「なにかのたたりかもしれない。おまえさんには、心あたり・・・<小川未明「牛女」青空文庫>
  11. ・・・と男もニッコリしたが、「何しろまあいいとこで出逢ったよ、やっぱり八幡様のお引合せとでも言うんだろう。実はね、横浜からこちらへ来るとすぐ佃へ行って、お光さんの元の家を訪ねたんだ。すると、とうにもうどこへか行ってしまって、隣近所でも分らないと言・・・<小栗風葉「深川女房」青空文庫>
  12. ・・・「……実は病気をしておりますので。空気の流通をよくしなければいけないんです」 すると、女の顔に思いがけぬ生気がうかんだ。「やっぱり御病気でしたの。そやないかと思てましたわ。――ここですか」 女は自身の胸を突いた。なぜだか、い・・・<織田作之助「秋深き」青空文庫>
  13. ・・・「……さあ、実は何です、それについて少しお話したいこともあるもんですから、一寸まあおあがり下さい」 彼は起って行って、頼むように云った。「別にお話を聴く必要も無いが……」と三百はプンとした顔して呟きながら、渋々に入って来た。四十・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  14. ・・・いえまだ、実は今宿を出ましたばかりで、と気を置けば言葉もすらりとは出でず、顔もおのずから差し俯向かるるを、それならば御一しょに、ちとそこらを歩いて見ましょう。今日は気も晴々として、散歩には誂え向きというよい天気ですなア。お父様は先刻どこへか・・・<川上眉山「書記官」青空文庫>
  15.  餅は円形きが普通なるわざと三角にひねりて客の目を惹かんと企みしようなれど実は餡をつつむに手数のかからぬ工夫不思議にあたりて、三角餅の名いつしかその近在に広まり、この茶店の小さいに似合わぬ繁盛、しかし餅ばかりでは上戸が困ると・・・<国木田独歩「置土産」青空文庫>
  16. ・・・そして実はその倫理的な問いたるや、すでに青年の胸を悩まし、圧しつけ、迷わしめているところの、活ける人生の実践的疑団でなくてはならないのだ。 かくてこそ倫理学の書をひもどくや、自分の悩んでいる諸問題がそこに取り扱われ、解決を見出さんとして・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  17. ・・・そこの消息を見抜いている×××は、表面やかましく云いながら、実は大目に見のがした。五十銭銀貨を一つ盗んでも禁固を喰う。償勤兵とならなければならない。それが内地に於ける軍人である。軍人は清廉潔白でなければならない。ところが、その約束が、ここで・・・<黒島伝治「パルチザン・ウォルコフ」青空文庫>
  18. ・・・どういう入わけなんですか聴かせて下さい。実はコレコレとネ。女だって、わたしあ、あなたの忠臣じゃありませんか。」 忠臣という言葉は少し奇異に用いられたが、この人にしてはごもっともであった。実際この主人の忠臣であるに疑いない。しかし主人の耳・・・<幸田露伴「鵞鳥」青空文庫>
  19. ・・・それなら俺だって却々負けずに知っている。実は、その日になると、俺は何時でも壁を打つことで、隣りの同志にイニシアチヴを取られてしまうのだ。今度こそ俺の方から先手を打ってやろう、と待っている、だが、その日になると、又もしてやられるんだ。――九月・・・<小林多喜二「独房」青空文庫>
  20. ・・・幕があったと聞きそれもならぬとまた福よしへまぐれ込みお夏を呼べばお夏はお夏名誉賞牌をどちらへとも落しかねるを小春が見るからまたかと泣いてかかるにもうふッつりと浮気はせぬと砂糖八分の申し開き厭気というも実は未練窓の戸開けて今鳴るは一時かと仰ぎ・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  21. ・・・「実は――まだ朝飯も食べませんような次第で。」 と、その男は附加して言った。 この「朝飯も食べません」が自分の心を動かした。顔をあげて拝むような目付をしたその男の有様は、と見ると、体躯の割に頭の大きな、下顎の円く長い、何となく人・・・<島崎藤村「朝飯」青空文庫>
  22. ・・・ことに困るのは、知識で納得の行く自己道徳というものが、実はどうしてもまだ崇高荘厳というような仰ぎ見られる感情を私の心に催起しない。陳い習慣の抜殻かも知れないが、普通道徳を盲目的に追うている間は、時としてこれに似たような感じの伴うこともあった・・・<島村抱月「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」青空文庫>
  23. ・・・それに己はまだ一マルク二十ペンニヒここに持っている。実は二マルク四十ペンニヒなくてはならないのだ。それさえあれば己はあっちのリングの方にいる女きょうだいの処まで汽車で行かれるのだが。」 婆あさんは、目を小さくして老人の顔を見ていたが、一・・・<著:シュミットボンウィルヘルム 訳:森鴎外「鴉」青空文庫>
  24. ・・・それは実は、まださかんにやけている火事の烟のあつまりだったのです。       四 しかし、震災の突発について政府以下、すべての官民がさしあたり一ばんこまったのは、無線電信をはじめ、すべての通信機関がすっかり破かいされてしま・・・<鈴木三重吉「大震火災記」青空文庫>
  25. ・・・それに気が付いたのは、実はたった今よ。(劇なぜ黙っているの。さっきにからわたしにばかり饒舌らしていて、一言も言ってくれないのね。そんなにして坐っていて、わたしの顔を見ているその目付で、わたしの考えの糸を、丁度繭から絹糸を引き・・・<著:ストリンドベリアウグスト 訳:森鴎外「一人舞台」青空文庫>
  26.  私は遊ぶ事が何よりも好きなので、家で仕事をしていながらも、友あり遠方より来るのをいつもひそかに心待ちにしている状態で、玄関が、がらっとあくと眉をひそめ、口をゆがめて、けれども実は胸をおどらせ、書きかけの原稿用紙をさっそく取・・・<太宰治「朝」青空文庫>
  27. ・・・僕がいないと、銀行で差支えるのですが、どうにかして貰えないことはなかろうと思います。」実はこれ程容易な事はない。自分がいなくても好いことは、自分が一番好く知っているのである。「宜しい。それじゃあ、明日邸へ来てくれ給え。何もかも話して聞せ・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  28. ・・・それどころか、かれらが人間から軽侮される生活そのものが、実は人間にとって意外な祝福をもたらす所以になるのである。 鳥や鼠や猫の死骸が、道ばたや縁の下にころがっていると、またたく間に蛆が繁殖して腐肉の最後の一片まできれいにしゃぶりつくして・・・<寺田寅彦「蛆の効用」青空文庫>
  29. ・・・ 私も為方ないから、へえ然ようでござえんすか、実は然云うお達があったもんですから出ましたような訳でと、然う云うとね、下役の方が、十二枚づつ綴じた忰の成績書をお目にかけて、何かお話をなすっていましたっけがね、それには一等一等と云うのが、何・・・<徳田秋声「躯」青空文庫>
  30. ・・・しかし事実は事実として受取らなければならない。その夜を限りその姿形が、生残った人たちの目から消え去ったまま、一年あまりの月日が過ぎても、二度と現れて来ないとなれば、その人たちの最早やこの世にいないことだけは確だと思わなければなるまい。 ・・・<永井荷風「草紅葉」青空文庫>