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しょくどうがん【食道がん】

【英】Carcinoma of the Esophagus

◎年齢は幅広く、男性に多い

どんな病気か

 食道は、口腔(こうくう)・下咽頭(かいんとう)と胃との間にある、長さが約25cmの消化管です。頸部(けいぶ)に始まって、胸部(縦隔(じゅうかく)内)、腹部におよび、胸部では大きく胸部上部、胸部中部、胸部下部と三部位に分けて呼んでいます。
 食道がんは、食道内腔(ないくう)のもっとも表層の粘膜上皮(ねんまくじょうひ)から発生するものですが、がん細胞の組織形態によって、扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん(がんとはの「悪性腫瘍のいろいろ」の扁平上皮がん)、腺(せん)がん(がんとはの「悪性腫瘍のいろいろ」の腺がん)、そのほかに分類されます。日本では扁平上皮がんが大部分を占めていますが、欧米では腺がんも多くみられます。
 発がん年齢は30~80歳代と幅広く、もっとも多いのは60歳代です。性別でみた発生率は、男性のほうが女性の4~5倍多く認められます。
 発生部位では、胸部中部にもっとも多く(54%)、ついで胸部下部(22%)、胸部上部(12%)、頸部(けいぶ)(12%)の順になります。

原因

 発がん要因としては、現在、遺伝的・体質的なものよりは、環境中の刺激因子のかかわりのほうが大きいと考えられています。たばこやアルコールがその代表的なものです。
 たばこでみると、発がんした患者さんでは、1日の喫煙本数と喫煙年数をかけたブリンクマン指数が平均650以上を示すことが多くなります。またアルコールでは、1日の飲酒量が日本酒換算で3~5合を20~30年間続けている多飲者が多くみられます。

経過

 食道がんは、時間とともに粘膜上皮から粘膜内、粘膜下層、筋層、外膜(がいまく)へと浸潤(しんじゅん)(入り込むこと)して増殖し、その過程でリンパ節転移(せつてんい)、臓器転移をおこすと考えられています。
 外膜を越えると、縦隔内臓器である気管や大動脈などへも浸潤します。
 治療および予後(治療後の状態)の面から考えると、食道がんは粘膜がん、表在(ひょうざい)がん(粘膜下層がん)、進行がんと分けて考えるのが合理的です。リンパ節転移は、粘膜がんではほとんどありませんが、表在がんでは40%前後のリンパ節転移が認められ、進行がんでは70%を超えます。

症状

 粘膜がん、表在がんぐらいまでは自覚症状はあまりみられません。進行がんになると、嚥下障害(えんげしょうがい)(飲み込みにくい)、つかえ感、しみる感じが現われ、胸骨(きょうこつ)の後ろ側が痛むなどの症状が出てきます。このような期間が平均2か月ほど続きます。
 食道がんのリンパ節転移は胸腔内から頸部、腹部の三領域に広がることが特徴的で、この点が治療と予後に密接にかかわります。
 外膜を越えた進行がんになると、発生部位により反回神経(はんかいしんけい)(声帯(せいたい)の運動に関与する神経)まひがおこり、嗄声(させい)(かすれ声)が生じ、食道気管支瘻(しょくどうきかんしろう)、大出血などの重大な合併症が発生することがあります。

検査と診断

 代表的な検査は、食道バリウム造影と食道内視鏡の2つです。食道の粘膜をヨード(ルゴール)染色法によって染めて行なう内視鏡検査によって、表在がんや粘膜がんが発見される例が増えています。
 さらに、扁平上皮がんの発がんの背景として、粘膜上皮の変化(異型上皮(いけいじょうひ))が注目されています。ルゴール染色法を行なうとともに、確かな診断のためには、組織を採取して検査する生検法(せいけんほう)が必要となります。
 積極的な内視鏡検査を行なわなければならないのは、ヘビースモーカー・ヘビードリンカーで55歳以上の男性、口・頸部がんの人、がん家系(血縁者にがん患者が何人もいる家系)の人のほか、腐食性食道炎食道アカラシア、バレット食道などの病気の人など、食道がんになる危険性が高い人々です。このようなハイリスクな人々に対しては、ルゴール染色法を実施するなど、より注意深い観察が必要となります。
 進行がんに対しては、CT検査、超音波検査、MRIなどが行なわれ、周囲臓器への浸潤やリンパ節転移の状況、肝臓や肺への転移の有無が調べられて進行度が確認されます。
 最近は、食道がんと他の臓器のがん、とくに口・頸部がん、胃がんとの重複や多発がんが発見されることが増えています。ことに口・頸部がんの患者さんでは、12~16%に食道がんや胃がんが発見されています。したがって、口・頸部がんまたは胃がんを患った人には、自覚症状の有無にかかわらず、内視鏡検査が有用です。

治療

 がんの原発病巣の進行度、転移の状況によって治療法は異なります。粘膜がんでは、広範囲の病巣を除いて、内視鏡的粘膜切除術(ないしきょうてきねんまくせつじょじゅつ)(EMR)が行なわれ、成績は良好です。
 表在がんや進行がんには手術治療が原則ですが、その進行度に応じて、放射線や抗がん剤による治療を一緒に行なう方法(集学的治療(しゅうがくてきちりょう)という)も必要となります。
 進行がんの手術成績は、5年生存率(術後5年間生きている割合)が45%ほどになっています。
 高度に進行した他臓器浸潤がんや、肝臓、肺に転移したがんに対しては、放射線治療、抗がん剤治療法が中心となります。
 最近では、手術自体も安全なものになり、しかも、できるだけもとの機能や臓器を温存することに意が払われるようになり、患者さんのQOL(生活・生命の質)向上のための努力がなされるようになりました。
 他臓器切除を余儀なくされた場合でも、たとえば、喉頭(こうとう)機能(咽頭(いんとう)の温存と反回神経の温存)を温存した手術とか、咽頭が切除され音声を失ったときにでも、手術的に音声を再建することが可能となってきました。また、高齢者や心肺機能が低下している人には、少しでも負担が軽くなるように、縦隔鏡(じゅうかくきょう)や胸腔鏡(きょうくうきょう)による手術が行なわれることもあります。ときには内視鏡的粘膜切除法と放射線照射を組み合わせることもあり、患者さんの状態にきめ細かく対応できるようになっています。
 ただし、食道がんの治療は専門性が高いため、手術については、食道外科の専門医がいる施設を選ぶことをお勧めします。


出典:家庭医学館