十二指腸のはたらき
腸は、十二指腸から肛門まで、全長約7.5mの管です。はたらきの違いから大きく小腸と大腸に分けられ、さらに小腸は十二指腸、空腸、回腸に、大腸は盲腸、結腸、直腸に分けられます。 十二指腸は、胃に続く小腸のはじまりの部分です。胃から送られてきた食べ物に胆汁やすい液といった消化液が加えられ、本格的な消化が開始されます。ただし、ここではまだ吸収は行われません。 十二指腸はC字形の形をした25cmほどの臓器。およそ指12本分ほどの長さであることから、その名で呼ばれています。十二指腸は、入り口付近の球部とこれに続く管部からなります。 球部は胃に近いため、胃液に含まれる胃酸による潰瘍ができやすい場所です。 管部には、ファーター乳頭(大十二指腸乳頭)、小十二指腸乳頭(副すい管)と呼ばれる大小2つの乳頭(孔の開いた突起のようなもの)があり、これらの孔から胆汁やすい液といった消化液が分泌されます。 十二指腸では、肝臓でつくられる胆汁と、すい臓から分泌されるすい液によって食べ物の消化を一気に進めます。 肝臓でつくられた胆汁は、胆のうに一時蓄えられ、濃縮されたのち、総胆管を経て十二指腸へと排出されます。 一方、すい臓から分泌されたすい液は、すい管を通って運ばれます。 胃から送られてきた食べ物が十二指腸に入ると、酸の刺激によって十二指腸腺からコレシストキニン・パンクレオザイミンというホルモンが分泌されます。 このホルモンのはたらきかけで、胆汁とすい液が十二指腸の小十二指腸乳頭とファーター乳頭から排出されます。
女性生殖器の病気の仕組み(子宮内膜症/子宮筋腫/子宮がん)
子宮は全長約7㎝、最大幅約4㎝、西洋なしを逆さにしたような臓器です。上3分の2を「子宮体部」といい、下3分の1を「子宮頸部」といいます。 子宮がんは、女性生殖器では、もっとも多くみられるがんです。子宮体部のがんである「子宮体がん」と子宮頸部の「子宮頸がん」の2種類があります。 また、子宮の壁は、内面を覆う「子宮内膜」とその下の「筋肉の層(筋層)」、さらに子宮の外側を覆う「漿膜(しょうまく)」からなります。「子宮筋腫」や「子宮内膜症」は、30歳代前後の女性によくみられる病気です。 本来、子宮の内面を覆っている子宮内膜が、ほかの場所で発生・増殖する病気を「子宮内膜症」といいます。異常な内膜は、子宮の筋層に発生する場合と子宮の外に発生する場合があります。前者は「子宮腺筋症」と呼ばれます。後者のタイプでは、卵巣、卵管、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)など子宮に近い部位で発生することが多いのですが、まれに肺やへそなど遠い場所に発生することもあります。 子宮の筋層から発生する良性の腫瘍が「子宮筋腫」です。子宮筋腫は筋腫の発育方向によって①「粘膜下筋腫」(子宮内膜に向かってできる)、②「漿膜(しょうまく)下筋腫」(漿膜に向かってできる)、③「壁内筋腫」(子宮筋層内にとどまる)に分類されます。また、①と②では、きのこのように茎をもった「有茎(ゆうけい)筋腫」というタイプもあります。さらに、「有茎粘膜下筋腫」(①でかつ有茎筋腫)が膣内に脱出したものは、「筋腫分娩」といいます。 子宮体部の内面を覆う子宮内膜から発生する悪性腫瘍です。女性ホルモン(エストロゲン)が、細胞のがん化に関与している種類と、関与していない種類があると考えられています。 子宮頸部に発生する悪性腫瘍で、とくに外子宮口付近に発生することが多いとされています。ヒトパピローマウイルス感染の関与が指摘されています。
女性の生殖器のしくみ
女性の生殖器は、男性同様、外生殖器と内生殖器に分かれています。外生殖器(外陰部)は、大陰唇、小陰唇、陰核(クリトリス)、膣前庭で構成されます。 膣前庭は外尿道口と膣口が開いており、外尿道口の前方に陰核があります。陰核の内部にはスポンジ状に多数の空洞をもつ海綿体があり、性的な興奮が高まると、海綿体が血液で満たされ充血し、勃起します。 膣口は膣への入り口で、産道の最終地点であるとともに、性交時に陰茎を受け入れる部位です。左右には膣内に粘液を分泌させるためのバルトリン腺(大前庭腺)があり、性交をスムーズにさせています。 また、陰核からは小陰唇というひだが膣前庭を囲むようにのび、さらに小陰唇の外側を厚みのある大陰唇というひだが囲んでいます。 内生殖器は、腹部の下方にある骨盤のなかに膀胱、直腸とともに入っており、膣、子宮、卵管、卵巣で構成されています。 膣は、長さ8㎝くらいの外部と子宮をつなぐ器官で、性交時の交接器、出産時の産道の役割も果たす管状の器官です。 子宮は、膣の奥にあり膀胱の上にのるように位置した袋状の器官です。厚い平滑筋の壁でできた長さ7㎝、幅4㎝程の器官で、下端は膣につながっています。子宮の壁の内側は、粘膜と筋層でできていて、膣から運ばれた精子との受精に成功した卵子は、この壁に貼り付いて成熟し、ここで栄養を与えられながら胎児として育ちます。 卵巣は、子宮の両脇に左右1対であります。卵管という細い管で子宮とつながれているほか、卵管には卵管膨大と呼ばれる管の太くなった部位があり、ここで受精をします。
腎臓・泌尿器のしくみとはたらき
泌尿器とは、心臓から送り出された血液から余分な水や老廃物をこしとり、尿として排泄するまでのしくみにかかわる器官をいいます。 具体的には尿をつくる腎臓、腎臓でつくられた尿を運ぶ尿管、尿を一時ためておく膀胱、尿を体外へ排出する尿道からなり立っています。 男性と女性とでは、尿道のつくりが異なります。男性の尿道は長さが16~25㎝ほどあり、排尿と射精の2つの役割を担っています。一方、女性の尿道は長さが3~5㎝ほどと短く、その役割は排尿だけです。 男女ともに、膀胱の出口付近には"内括約筋"と"外括約筋"という筋肉があり、2つの括約筋が収縮することで尿のもれを防いでいます。 心臓から腎臓へ送られた血液は、「糸球体」の毛細血管に流れ込み、分子の大きい赤血球やたんぱく質などはここでろ過されます。分子の小さい水やブドウ糖、アミノ酸、カリウム、ナトリウム、尿酸、クレアチニンなどの老廃物は原尿(尿のもと)となり、糸球体から続く「尿細管」に送られます。糸球体では、1日約150~200Lもの原尿がつくられますが、実際に尿として排出されるのは原尿の約1%ほどです。
精子と射精のメカニズム
精子は精巣内にある多数の精細管でつくられています。 精子の頭部の大きさは、わずか0.005mm程度。からだのなかで一番小さな細胞です。 精子は、先端が突起状になった球体の頭部、楕円形の中間部、細い糸状になった尾部の3部位に分けられます。 精子頭部の中心には、23個の染色体をもつ細胞核があり、ここに父親の遺伝子を含んでいます。細胞核の外側は、先体という組織に包まれています。先体は、卵子に突入するための組織で、卵子の表面を覆う膜を溶かす酵素を含んでいます。 中間部には、精子が運動するためのエネルギーをつくるために、ミトコンドリアがらせん状に巻きついています。ミトコンドリアは、精液のなかの糖分を吸収し、そのエネルギーを尾部の鞭毛に与えています。 性的な興奮が高まると、陰茎内の陰茎海綿体と尿道海綿体の内部にある動脈がゆるみ、海綿体の細かい溝のなかに多量の血液が流れ込みます。そのため、海綿体はふくらみ、海綿体を外側から包んでいる白膜が、血液の圧力を受けて硬くなります(この状態が勃起です)。 勃起の際、精巣でつくられた精子は蠕動運動により精管を通って前立腺まで運ばれ、精のうの分泌液と混ぜられて精液となります。 このとき、精液の膀胱への逆流を防ぐために、膀胱の出口にある内尿道括約筋が収縮して、膀胱につながる尿道は閉じられます。同時に外尿道括約筋も収縮して、前立腺内の尿道内圧を高めます。 その後、外尿道括約筋だけが弛緩すると圧力で精液が押し出され、外尿道口から射精されます。
全長10m―消化と吸収のシステム
口から食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門まで、全長およそ10mの1本の管が、食べ物の道筋となる消化管です。 食道から胃までを上部消化管といい、小腸から下の部分を下部消化管といいます。 口から入った食べ物は、上部消化管の食道から胃に運ばれて、胃液で1~3時間ほどかけて消化されます。 さらに、胃から十二指腸(小腸)に送られてきた食べ物は、下部消化管で必要な栄養素が吸収され、最後には直腸・肛門から排泄されます。
食べ物が胃へ運ばれるしかけ
食道の役割は、口のなかで噛み砕かれた食べ物や水分を、胃へ送り込むことです。 ただ、食べ物は、自然に胃へと流れ落ちるわけではありません。食道のうねうねとした運動-蠕動運動によって、強制的に胃へと運ばれるのです。そのため、横になっていても、たとえ逆立ちしていたとしても、重力に関係なく食べ物は胃へ運ばれます。 食道の蠕動運動を担っているのは、食道壁にある固有筋層です。輪状筋が上から順に次々と収縮運動をすることで、ゆっくりと食べ物を胃へと押し運んでいきます。食べ物が食道を通過する時間は水分で1~10秒、固形物で30~60秒。胃に届くまでは水分で1秒、固形物で5~6秒です。 一方で、食道には胃からの逆流を防ぐ"防御機能"も備わっています。食道と胃の接合部である「噴門」に、「下部食道括約筋」があり、胃への入り口の開閉を調節しているのです。 括約筋とは、収縮することで管状の器官を閉じる作用をもつ筋肉のことで、ふだんは下部食道括約筋が収縮して、噴門が閉じられています。 しかし、食べ物が噴門に到達すると、下部食道括約筋がゆるんで噴門が開き、食べ物を胃へと通します。そして、食べ物が通過すると、噴門は再び閉じます。これを「噴門反射」といいます。 「のどもと過ぎれば熱さ忘れる」という諺がありますが、食道の粘膜の感覚は、あまり敏感ではありません。しかし、食べ物や飲み物の刺激には鈍感でも、実際には熱いものや強いアルコール、たばこなどの影響によって、食道の粘膜は障害されます。 とくにアルコールやたばこによる過剰な刺激は、食道炎や食道がんの原因にもなります。食べ物を飲み込むときに痛みがある、しみたり、つかえる感じがあるなどの場合は要注意です。 食道の粘膜には、胃液に含まれる強力な酸や消化酵素を防御する機能はありません。そのため、胃液の逆流にさらされていると、容易に粘膜が傷害されてしまいます。 胃液が逆流する原因は、下部食道括約筋がうまく働かないことが考えられます。また、胃の上部が横隔膜の上に脱出した状態になる「食道裂孔ヘルニア」(235頁)も、胃液を逆流させる大きな原因となります。
大腸のプロフィール
大腸は小腸から続く腸の最後にあたる部分で、小腸の外側を囲むようにして存在しています。 太さは小腸の約2倍、長さは成人で約1.5mあり、大部分は結腸が占めています 結腸は、盲腸から上へ向かう「上行結腸」、横へ伸びる「横行結腸」、上から下へ向かう「下行結腸」、下行結腸と直腸をS字で結ぶように伸びる「S状結腸」-の4つの部位からなります。 結腸の内壁は粘膜の層で覆われており、粘膜にある腸腺から粘液などが分泌されています。 小腸で消化・吸収が終わった消化物の残滓(かす)は、結腸の蠕動運動によって直腸へと運ばれます。その間に水分が吸収され、粘液などが混ざり合って便が形成されます。 S状結腸と肛門をつなぐ直腸は、長さ20㎝ほどの器官です。直腸には消化・吸収といった機能はなく、結腸でつくられた便が肛門から排出されるまで、一時ためておく場所として機能しています。 盲腸は小腸から続く部分です。小腸との境目の回盲口には弁があり、内容物の逆流を防いでいます。鳥や草食動物では、盲腸は消化機能をもつ器官として発達していますが、人における盲腸には、とくに役割はありません。 また、盲腸の先端には、「虫垂」といって、長さ数㎝、直径0.5~1㎝ほどの袋状の器官がついています。俗にいう"盲腸"という病気は、この虫垂に炎症がおこる病気で、正しくは"虫垂炎"といいます。虫垂はリンパ組織が発達しているため、免疫機能に関係するはたらきをしているのではないかと考えられていますが、炎症がおきて虫垂を切除しても内臓機能に影響はありません。
男性の生殖器のしくみ
男性の生殖器は、「外生殖器」と「内生殖器」に分かれます。 陰茎(ペニス)と陰のう部分を外生殖器といい、陰茎の根元から袋状の陰のうがぶら下がるような構造になっています。内生殖器は、精巣(睾丸)、精巣上体(副睾丸)、精管、精のう、前立腺からなり、精巣上体と精巣は陰のうの内部に位置します。 陰茎の内部は、尿道海綿体と陰茎海綿体で構成されてます。 陰茎は尿の排出と精液の排出という2つのはたらきをするため、尿道海綿体の中心には尿道が通り、また陰茎海綿体には、多くの細かい空洞が集まっており、その中心と上部には血管が通っています。 陰茎海綿体の細かい空洞が血液で満たされたとき、膨張して陰茎が勃起します。 精巣内部には、男性ホルモンと精子をつくる精細管という細い管が多数張り巡らされています。精細管は、精巣に連結された精巣上体のなかにも続いています。複数の精細管は精巣の出口付近で1本になり、精管にまとまります。 前立腺は、男性のみがもつ生殖器です。膀胱直下にある栗の実ほどの大きさの器官で、尿道を取り囲むように位置しています。器官全体が筋質に富んでいて、そのなかに腺(外腺、内腺)があります。 前立腺から分泌される前立腺液に、精のうから分泌された精のう液と精巣でつくられた精子が混ざり合って精液になり、射精されます。また、精液は前立腺内に貯蔵することもできます。 男性の長い尿道は、膀胱のすぐ下にある前立腺のところで圧迫を受けることがしばしばあります。男性は加齢とともに、大きさは違うものの前立腺が肥大化していきます。そのため尿道は細くなっていき、排尿に時間がかかるようになります。
男性の尿道、女性の尿道
男性の尿道は長さが16~25㎝ほどあり、尿道外括約筋より膀胱側を「後部尿道」、前方を「前部尿道」といいます。 後部尿道は、周囲を「前立腺」に囲まれています。前立腺の先には、「尿道球腺(カウパー腺)」があり、多数の側管から粘液を分泌しています。 後面には「精丘」という部分が突出しており、そこに2本の「射精管」がつながっています。精丘の両側には、前立腺排泄管が多く開口しています。 男性の尿道は、膀胱にたまった尿を排出するための通路であると同時に、射精時の精液の通り道でもあります。 睾丸でつくられた精子は、精管を通って前立腺の内側から尿道に入り、前立腺から分泌された前立腺液とともに射精されます。このように、1つの器官が異なる2つの機能を担っているというのが、男性の尿道の大きな特徴です。 さらに、前立腺は加齢とともに肥大し、「前立腺肥大症」になる場合もあります。 女性の尿道は、長さが約3~4㎝と、男性にくらべ短いのが特徴です。尿道は、「膀胱頸部」から「膣前壁」の前面に沿うように走り、「膣前庭」につながります。 女性の場合、膀胱出口から尿道の途中にかけて内括約筋と外括約筋があり、ここで排尿をコントロールしています。 女性の尿道は、膀胱にたまった尿を体外に排泄するためだけの通路です。 女性の尿道は男性にくらべて短いので、構造上どうしても尿道口から細菌が侵入しやすくなっています。 そのため、膀胱に細菌が感染しておこる膀胱炎などがおこりやすいといえます。 健康な膀胱であれば、からだの防除機構が働いて、感染を防いでくれますが、抵抗力が弱っていると、「膀胱炎」をおこしやすくなります。