・・・もまた違った解答を与えるのであろう。 航空気象観測所と無線電信局とがまだ霜枯れの山上に相対立して航空時代の関守の役をつとめている。この辺の山の肌には伊豆地震の名残らしい地割れの痕がところどころにありありと見える。これを見ていると当時の地・・・ 寺田寅彦 「箱根熱海バス紀行」
・・・またソナタ形式ならば、第一主題、第二主題の次にいわゆる発展部が来てこれら主題に対する解答を試みる。これが活躍した後に、再び始めの第一、第二主題が繰り返されて終局するのである。今連句歌仙の三十六句をたとえば(名残と分けて、これを三部形式あるい・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・ 次に語る一つの話も、こうした私の謎に対して、或る解答を暗示する鍵になってる。読者にしてもし、私の不思議な物語からして、事物と現象の背後に隠れているところの、或る第四次元の世界――景色の裏側の実在性――を仮想し得るとせば、この物語の一切・・・ 萩原朔太郎 「猫町」
・・・その答えが、余り集約的に、今日の日本の破局的な各方面の事情を反映していることに、解答者自身おどろかざるを得まいと思う。この一つの「何故」への具体的な答えには、農林大臣が米の専売案を語り、それと全く反対に農林省の下級官吏は結束して大会をもち、・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・反動攻勢という手近い返答が、解答のすべてではないと思う。 一九四六年のはじめに「新日本文学会」が組織され、民主主義文学運動が着手された。当時、日本の民主主義革命そのものの特殊な性格、すなわち、これまでの封建性、絶対主義に対するブルジョア・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・皮肉以上の解答を、真実人生を愛し子を愛する母は求めている。私もここに野暮にして重厚な真心をもって、×××氏がカレントに、小粒ながら真実深き評言を正面に人生に向って投げられるように希望する。〔一九二七年二月〕・・・ 宮本百合子 「是は現実的な感想」
・・・ この頃新聞雑誌の上で、身上相談が大流行であるが、かつて私は非常にわれわれに多くのことを考えさせる一つの相談と解答とをある新聞の上でみたことがある。十八九の青年が投書しているのだが、自分は何とかして東京に出たい。村の生活は年寄たちが・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・この種の物語は最後に必ず解答が出て来るという厳然とした約束に立っている。しかもそこまでを、出来るだけ迷路にひっぱって、模造の山河をしつらえて、引きまわされるのを承知して引きまわされてゆく面白さである。 科学的構造が精密であればあるほど謂・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・ やっぱり同じ朝日新聞にこの頃「女性相談」というのがあります。 解答者は三宅やす子、山田わか子というような人です。そこにこの間、次のような相談が出された。 酌婦生活をやめたい あなたの決心さえ堅ければ、つまりそういう生活・・・ 宮本百合子 「「市の無料産院」と「身の上相談」」
・・・ 身の上相談では、わが身の上の苦しさを訴える女のひとの立場と、それに解答を与える女のひと達の立場とが、相対的に今日おかれている日本の女の社会性の内容、水準等を、おのずから読者の前に披瀝しているのである。読物として各紙が飽きずそれを掲載し・・・ 宮本百合子 「女性の教養と新聞」
出典:青空文庫