・・・何故なら、勤労婦人の現実の生活を身軽に、幸福にする各区の無料病院、託児所、診療所、母子健康相談所、共同食堂の経営などは、みんな市ソヴェトの保健部の仕事と関係があります。 ソヴェト政権は、勤労婦人に出産前後四ヵ月の給料つき休暇と、月給の半・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の婦人と選挙」
・・・余り身軽で、静かで、伴う物音がないから、時々行方をくらましたとさえ思われるが、明るい澄んだ心の光ですかして見ると、つい傍にいたのがわかります。 やっと、今鎮まったあの天と地との大騒動の間でも、私は私の任務を尽していました。彼方此方、随・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・ ほんとにいつもいつも此処へ来る時はきっと走り廻る事の面白い身軽な兄や書生と一緒で少くも四五人の者が高声で喋ったり笑ったりして来るのに馴れて居ますから機嫌よく仕ながらも左様兄達の様に騒がない私と二つ限りの影坊子を淋しがったのは無理も有り・・・ 宮本百合子 「小さい子供」
・・・ 何とかして元の身軽さに戻りたい。 一生懸命にもがけばもがくほど、枷はしっかりと食いこんで来るように、僅かの機会でも利用して借金も軽め生活も楽にさせたいとあせればあせるほど、経済は四離滅裂になって来る。 ガタガタになり始めた隅々・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・ 菊太は、自分の希を叶えてもらった嬉しさに何となく輝いた顔になって、身軽に立って女中に消えた火をなおしてもらったり、茶をつぎなおしたりする。 祖母は気の毒なほどいやな顔をして炉の四辺に艷ぶきんをゆるゆるとかけたり、あっちこっちから来・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・ みのえは、愕然として意識がはっきりすると一緒に、母親が自分の子をひとに押しつけ、身軽に油井を迎え、喋ろうとしているのを感じ、泣きたいようになった。 みのえこそ、真先にとび出したい者であった。けれども彼女は、パッと襖の立て合せから条・・・ 宮本百合子 「未開な風景」
洋服暮しをしたことがありますがこの頃はずっと和服ばかりです。 外国旅行をしたときに着はじめ、後は只身軽さということだけで着て居りました。 其麼工合故、礼装がなくて、儀式のときは和服をきました。 本式に着・・・ 宮本百合子 「洋服と和服」
・・・ 三河勢の手に余った甘利をたやすく討ち果たして、髻をしるしに切り取った甚五郎は、むささびのように身軽に、小山城を脱けて出て、従兄源太夫が浜松の邸に帰った。家康は約束どおり甚五郎を召し出したが、目見えの時一言も甘利の事を言わなんだ。蜂・・・ 森鴎外 「佐橋甚五郎」
・・・安寿は身軽に立って、桶と杓とを出して返した。 奴頭はそれを受け取ったが、まだ帰りそうにはしない。顔には一種の苦笑いのような表情が現われている。この男は山椒大夫一家のものの言いつけを、神の託宣を聴くように聴く。そこで随分情けない、苛酷なこ・・・ 森鴎外 「山椒大夫」
出典:青空文庫