・・・この記事が流布本に載せられていない理由は、恐らくその余りに荒唐無稽に類する所から、こう云う破邪顕正を標榜する書物の性質上、故意の脱漏を利としたからでもあろうか。 予は以下にこの異本第三段を紹介して、聊巴の前に姿を現した、日本の Diab・・・ 芥川竜之介 「るしへる」
・・・ 民謡を都会の舞台に乗せたり、また、職業的詩人をして、一夜造りに、これに類するものを作らせようとする者程、詩を解しないものはない。まさに、時代は、かくのごとく詩を解さないのである。 夏は来た。雲を見、その下に横わる曠野を想い、流るゝ・・・ 小川未明 「常に自然は語る」
・・・ 日本の文化指導層の政治的関心の欠如もまたこれに類する。彼らは文化人が政治にかかわることを軽蔑する。しかし今日の、人間の文化と禍福とがますます密接に政治に依属しつつある時代において、政治の根本精神を正し、その理想を標幟せしむる啓蒙運動に・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・等いろいろのモンタージュ手法に類するものを拾い出すことも可能であろうと思われる。 映画における字幕サブタイトルに相当するものすら、ある絵巻物には書き込まれてあるのも興味あることである。 絵巻物の一画面は言わば静的である。その静的な一・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・こういう意味からすれば科学者の探求的欲望は骨董狂の掘出し慾と類する点があると云われ得る。しかしまた他の半面の考え方によれば、科学者の知識は「物自身」の知識ではなくて科学者の頭脳から編み上げた製作物とも云われる。そう考えれば科学者の欲求は芸術・・・ 寺田寅彦 「科学上の骨董趣味と温故知新」
・・・まさかこれほどではないまでも歴史の中にはこれに類するものが存外にたくさんあるであろうと想像される。 また一方で歴史と称するものは通例王者、勝利者、支配者の歴史であって、人間の歴史としてははなはだ物足りないものである。少なくも人間の歴史は・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・白山の一峰を Bessan というのもこれに類する。これもBを除去すればアソ型となるのである。またこれにつづいて考えることは Rausu, Rausi, Rasyowa のアイヌ系のものから始めのRを除き Lesson, Lassen から・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・ リヒテンベルグの場合に放電板の裏側にできる第二次像の同心環が米田氏の現象に類するのは注意すべき事である。 近来筒井俊正君が研究している一種の特殊な拡進現象にもまたリヒテンベルグ陽像などといくぶん似た部類に属するものがある。それは二・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・この点がどこか吾々科学者の心掛けるものの見方に類するところがあるように思われるのである。 以上述べたような項目の外に著しく多数に散在しているのは有職故実その他あらゆる知識に関するノートと云ったものである。これらも分類的に研究したら面白そ・・・ 寺田寅彦 「徒然草の鑑賞」
・・・これに類する多くの問題は至るところに散在している。たとえば本誌の当号に掲載された田口たぐちりゅうざぶろう氏の「割れ目」の分布の問題、リヒテンベルク放電像の不思議な形態の問題、落下する液滴の分裂の問題、金米糖の角の発生の問題、金属単晶のすべり・・・ 寺田寅彦 「日常身辺の物理的諸問題」
出典:青空文庫