・・・北京からの日本語放送は、新中国の国旗について説明しました。赤地の左肩に輝く一つの黄色い大きい星に中心をむけて配置されている四つの小さい星は、労働者、農民、小市民、民族資本家をあらわす人民の統一戦線を語っているものであると。ラジオはその時、上・・・ 宮本百合子 「宋慶齢への手紙」
・・・ 叔父はいつもの通り頭に繃帯をし、杖を持って居、私は、十位までよく着て居た赤地に細い白線で市松が小さく小さく切ってある遠方から見ると真赤に外見えない様な着物を着て居たと覚えて居る。 田圃や畑の間を少し行くと思いがけず私共は両方が林に・・・ 宮本百合子 「追憶」
・・・全従業員一万八百人を全部解雇、改めて新規定の四割減給で採用し、八百五十万円を浮かして、永年にたまった八百万円の赤字を一気にうめようと云う整理案である。 翌日の夕刊で、その整理案撤回を東交が要求して、罷業準備の指令を発したという記事をよん・・・ 宮本百合子 「電車の見えない電車通り」
・・・ ちょうど、赤字穴埋め策として立てた政府の官吏減俸案に反対し全国的官吏の未曾有の示威が行われている最中である。「文戦」の分裂があってから十数日だ。 日本の社会一般は歴史的意味を帯びた情勢だった。しかも、この第三回大会は自身独特の・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ 家と云うのは、つい近くの、何々質店、信用、軽便、親切と、赤字で書いた大きなアーチ形の広告門をくぐって行った処に在った。 陰気な、表に向った窓もない二階建の小家の中からは、カンカン、カンカンと、何か金属細工をして居る小刻みな響が伝っ・・・ 宮本百合子 「又、家」
・・・モラトリアムをしかなければならないということは、とりも直さず、日本全国の正直な人民生計は赤字の破局で、貯金も使い果した危機を語っている。だからこそ、モラトリアムではなかろうか。そうだとすれば、どこの家の家計簿も、やすやすと世帯主三〇〇円、一・・・ 宮本百合子 「モラトリアム質疑」
・・・身持ちになっても休めばクビであるから辛棒して働き、機械の前に倒れてそのまま赤字を生むことさえ珍しくなかった。物がわかると、獣のような生活から反抗するから、皇帝と資本家と地主との政府は、女を軽蔑して学問をさせず「女と牝鷄は人間でない」というこ・・・ 宮本百合子 「ロシア革命は婦人を解放した」
・・・凡そ昨年の十二月までにたいていの家庭では、今までの貯金を使い尽し、復員手当、解職手当をも食込んでしまった。赤字は危険信号を鳴り響かせている。この赤字の中でどうして人々は生きているだろう。官庁などの月給は、今日の下駄一足、足袋一足に近い金額の・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・市は赤字だといって市電従業員の賃銀を下げたが市会では暴力までふるって市議歳費値上げを決定した。府の扶助料とりあげの記事が何となし、その実例を読者の脳裡に思い出させるのは何故であろうか。 五 女を殴る 先日、ある・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫