・・・廃刀令が出たからと云って、一揆を起すような連中は、自滅する方が当然だと思っている。』と、至極冷淡な返事をしますと、彼は不服そうに首を振って、『それは彼等の主張は間違っていたかもしれない。しかし彼等がその主張に殉じた態度は、同情以上に価すると・・・ 芥川竜之介 「開化の良人」
・・・ 羽織、袴、白襟、紋着、迎いの人数がずらりと並ぶ、礼服を着た一揆を思え。 時に、継母の取った手段は、極めて平凡な、しかも最上常識的なものであった。「旦那、この革鞄だけ持って出ますでな。」「いいえ、貴方。」 判然した優しい・・・ 泉鏡花 「革鞄の怪」
・・・入口の石の鳥居の左に、とりわけ暗く聳えた杉の下に、形はつい通りでありますが、雪難之碑と刻んだ、一基の石碑が見えました。 雪の難――荷担夫、郵便配達の人たち、その昔は数多の旅客も――これからさしかかって越えようとする峠路で、しばしば命を殞・・・ 泉鏡花 「雪霊記事」
・・・ と一基の石塔の前に立並んだ、双方、膝の隠れるほど草深い。 実際、この卵塔場は荒れていた。三方崩れかかった窪地の、どこが境というほどの杭一つあるのでなく、折朽ちた古卒都婆は、黍殻同然に薙伏して、薄暗いと白骨に紛れよう。石碑も、石塔も・・・ 泉鏡花 「燈明之巻」
・・・ いま辻町は、蒼然として苔蒸した一基の石碑を片手で抱いて――いや、抱くなどというのは憚かろう――霜より冷くっても、千五百石の女じょうろうの、石の躯ともいうべきものに手を添えているのである。ただし、その上に、沈んだ藤色のお米の羽織が袖・・・ 泉鏡花 「縷紅新草」
・・・各粗末なしかも丈夫そうな洋服を着て、草鞋脚絆で、鉄砲を各手に持って、いろんな帽子をかぶって――どうしても山賊か一揆の夜討ちぐらいにしか見えなかった。 しかし一通りの山賊でない、図太い山賊で、かの字港まで十人が勝手次第にしゃべって、随分や・・・ 国木田独歩 「鹿狩り」
・・・「何でも高くなりやあがる、ありがてえ世界だ、月に百両じゃあ食えねえようになるんでなくッちゃあ面白くねえ。「そりゃあどういう理屈だネ。「一揆がはじまりゃあ占めたもんだ。「下らないことをお言いで無い、そうすりゃあ汝はどうするとい・・・ 幸田露伴 「貧乏」
・・・ 本基 第一基 第二基 第三基 攫者の位置 投者の位置 短遮の位置 第一基人の位置 第二基人の位置 第三基人の位置 場右の位置 場中の位置 場左の位置○ベースボールの勝負 攻者・・・ 正岡子規 「ベースボール」
・・・ 気がまぎれないのでいろいろの事に思いふけって、「お君もほんに、一気な事をせん様に云うてやらんけりゃあなあ、 あのお金はんに、いびり殺されて仕舞う。などと思って居た。 十三の年から東京に出て、他人の中に揉まれて居・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・ドイツでは、その生活の惨めなことで誰しらぬもののなかったシュレジアの織匠が命がけの悲壮な一揆を起した。この一揆は世界の同情をひいた。シュレジアの地主と工場主と軍隊が流した織匠の血は、すべての人々の胸のうちに正義の憤りをもえたたせた。後年、ハ・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
出典:青空文庫