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・・・動物が巣にいる幼い子供を可愛がるように、家畜を可愛がっていたあの温しい眼は、今は、白く、何かを睨みつけるように見開れて動かなかった。異母妹のナターリイは、老人の死骸に打倒れて泣いた。 長男は、根もとから折られた西洋桜を、立てらしてつぎ合・・・
黒島伝治
「パルチザン・ウォルコフ」
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・・・幼少の時より不整頓不始末なる家風の中に眠食し、厳父は唯厳なるのみにして能く人を叱咤しながら、其一身は則ち醜行紛々、甚だしきは同父異母の子女が一家の中に群居して朝夕その一父衆母の言語挙動を傍観すれば、父母の行う所、子供の目には左までの醜と見え・・・
福沢諭吉
「女大学評論」