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・・・ 話は変るが、一九一〇年頃ベルリン近郊の有名な某電機会社を見学に行ったときに同社の専売の電信印字機を見せてもらった。発信機の方はピアノの鍵盤のようなものにアルファベットが書いてあって、それで通信文をたたいて行くと受信機の方ではタイプライ・・・
寺田寅彦
「変った話」
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・・・ことに文句に絶えず頭を使いながらせき込んで印字機の鍵盤をあさる時、ひき慣れないむつかしい楽曲をものにしようとして努力する時、そういう時には病的に過敏になった私の胃はすぐになんらかの形式で不平を申し出した。しかしこれは手や指を使うというよりも・・・
寺田寅彦
「芝刈り」