-
・・・一度などはお敏が心配して、電燈を片手に雨戸を開けながら、そっと川の中を覗いて見たら、向う岸の並蔵の屋根に白々と雪が残っているだけ、それだけ余計黒い水の上に、婆の切髪の頭だけが、浮巣のように漂っていたそうです。その代りこの婆のする事は、加持で・・・
芥川竜之介
「妖婆」
-
・・・日奈久の温泉宿で川上眉山著「鳰の浮巣」というのを読んだ事などがスケッチの絵からわかる。浴場の絵には女の裸体がある。また紋付きの羽織で、書机に向かって鉢巻きをしている絵の上に「アーウルサイ、モー落第してもかまん、遊ぶ遊ぶ」とかいたものもある。・・・
寺田寅彦
「亮の追憶」