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・・・大きな柏の木は枝も埋まるくらい立派な透きとおった氷柱を下げて重そうに身体を曲げて居りました。「堅雪かんこ、凍み雪しんこ。狐の子ぁ、嫁ほしい、ほしい。」と二人は森へ向いて高く叫びました。 しばらくしいんとしましたので二人はも一度叫ぼう・・・
宮沢賢治
「雪渡り」
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・・・中核の圧力をこめてつたえて岸を撃ち、河の力がこわした堤の土の下に埋まることもあるこの岸沿いの河水の意味を、「女の一生」の中で作者は何故認め得ないのであろう。「何にしても生活が」根本だということ、「思想というものは母の愛とか肉親の愛という・・・
宮本百合子
「山本有三氏の境地」