- 「ぬばたまの夜のふけゆけば久木 (ひさぎ) ―・ふる清き川原に千鳥しば鳴く」〈万・九二五〉
1 男の老人。おきな。
2
㋐接尾語のように用いて男の老人の敬称とする。「芭蕉―」「福 (ふく) ―」「沙 (さ) ―(=シェークスピア)」
㋑単独で代名詞のように用いる。「―の伝記を読む」
麻の生えている土地。
「桜麻 (さくらを) の―の下草露しあれば」〈万・二六八七〉
[動ワ五(ハ四)]
1 背中や肩にのせる。背負う。「重い荷を―・う」
2 身に受ける。また、自分で引き受ける。かぶる。「責任を―・う」「恨みを―・う」
3 傷を受ける。「重傷を―・う」「損害を―・う」
4 お陰をこうむる。「先輩のご指導に―・うところが大きい」
5 後ろに位置させる。背景とする。「後ろに山を―・う」
6 借金する。
「その人は、わが金 (こがね) を千両―・ひたる人なり」〈宇治拾遺・一〉
7 名としてもつ。名前に適合する。
「名にし―・はばいざ事とはむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと」〈伊勢・九〉
8 ふさわしいさまである。適応する。
「文屋康秀 (ふんやのやすひで) は、ことば巧みにて、そのさま身に―・はず」〈古今・仮名序〉
[動ワ五(ハ四)]
1
㋐先に進むものに行き着こうとして急ぐ。あとをついて行く。追いかける。「母親のあとを―・う幼な子」「逃走者を―・う」「機影をレーダーで―・う」
㋑目標となるものに至り着こうとする。また、あるものを得ようとする。追い求める。「理想を―・う」「世の流行を―・う」「掘り出し物を―・って古本屋をまわる」
2
㋐順序に従って進む。「順を―・って話す」「話の筋を―・ってみる」
㋑時間が経過するのに従って変化する。「日を―・って忙しくなる」
3 無理にその場所・地位などを去らせる。追い払う。追い立てる。「地位を―・われる」「子犬が―・っても―・ってもついてくる」「蠅 (はえ) を―・う」
4 (「…に追われる」の形で)せきたてられて余裕のない状態である。「生活に―・われる」「仕事に―・われる」
5 せきたてて先に進ませる。「牛を―・う生活」
6 目的の場所を目ざして進む。
「和泉の灘 (なだ) より小津のとまりを―・ふ」〈土佐〉
7 貴人の行列の先払いをする。先追う。
「容儀をいつくしく整へ、御さきに―・ひて」〈継体紀〉
出典:青空文庫
・・・も、やはり日毎に荷を負うて、商に出る事を止めなかった。甚太夫は喜・・・ 芥川竜之介「或敵打の話」
・・・啄み家鴨は水に泥鰌を追うを悟り、寝静まりたる家家の向う「低き・・・ 芥川竜之介「久米正雄」
・・・ら、「狄青が五十里を追うて、大理に入った時、敵の屍体を見ると、中・・・ 芥川竜之介「西郷隆盛」