・・・その後も、――いや、最近には小説家岡田三郎氏も誰かからこの話を聞いたと見え、どうも馬の脚になったことは信ぜられぬと言う手紙をよこした。岡田氏はもし事実とすれば、「多分馬の前脚をとってつけたものと思いますが、スペイン速歩とか言う妙技を演じ得る・・・ 芥川竜之介 「馬の脚」
・・・ 僕は、岡田君のあとについて、自分の番が来るのを待っていた。もう明るくなったガラス戸の外には、霜よけの藁を着た芭蕉が、何本も軒近くならんでいる。書斎でお通夜をしていると、いつもこの芭蕉がいちばん早く、うす暗い中からうき上がってきた。――・・・ 芥川竜之介 「葬儀記」
・・・一つかみ打捕えて、岡田螺とか何とかいって、お汁の実にしたいようだ。」 とけろりとして真顔にいう。 三 こんな年していうことの、世帯じみたも暮向き、塩焼く煙も一列に、おなじ霞の藁屋同士と、女房は打微笑み、「・・・ 泉鏡花 「海異記」
・・・今の岡田嘉子がかえでをやった。夏川静枝も処女出演した。 上演は入りは超満員だったが、芝居そのものは、どうも成功とはいえなかった。作者としては不平だらだらだった。しかし舞台協会の諸君は人間として純情な人たちばかりで、私とも精神的な交感が通・・・ 倉田百三 「『出家とその弟子』の追憶」
・・・ 男は、キネマ俳優であった。岡田時彦さんである。先年なくなったが、じみな人であった。あんな、せつなかったこと、ございませんでした、としんみり述懐して、行儀よく紅茶を一口すすった。 また、こんな話も聞いた。 どんなに永いこと散・・・ 太宰治 「あさましきもの」
・・・だけ軽く諸君の念頭に置いてもらって、そうして、その地獄の日々より三年まえ、顔あわすより早く罵詈雑言、はじめは、しかつめらしくプウシキンの怪談趣味について、ドオデエの通俗性について、さらに一転、斎藤実と岡田啓介に就いて人物月旦、再転しては、バ・・・ 太宰治 「喝采」
・・・『鼻』に嫌気がさしていた山口を誘い、彼の親友、岡田と大体の計画をきめてから、ぼくは先ず神崎、森の同感を得、次に関タッチイを口説きに小日向に上りました。タッチイを強引に加入させると、カジョー、神戸がついてきてくれました。かくして、タッチイの命・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・ 林長二郎、岡田嘉子の二人も近ごろ見た他の映画における同じ二人とは見ちがえるように魂がはいっている。映画には、俳優が第二義で監督次第でどうにでもなるという言明の真実さが証明されている。端役までがみんな生きてはたらいているから妙である。・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・とか、あまり有名ではないが隠れた科学者文学者バーベリオンの日記とかいうものがそうである。日本人のものでは長岡博士の「田園銷夏漫録」とか岡田博士の「測候瑣談」とか、藤原博士の「雲をつかむ話」や「気象と人生」や、最近に現われた大河内博士の「陶片・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・ 我邦では岡田博士に従って凍雨の名称の下に総括されているものの中にも種々の差別があって、その中には透明な小さい氷球や、ガラスの截片のような不規則な多角形をしたものや、円錐形や円柱形をしたものもある。氷球は全部透明なものもあるが内部に不透・・・ 寺田寅彦 「凍雨と雨氷」
出典:青空文庫