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・・・ その声は街へ遊びに行くのがおじゃんになったのを悲しむように絶望的だった。「どれ?……どれ」 それはたしかに、偽札だった。やはり、至極巧妙に印刷され、Five など、全く本ものと違わなかった。ところが、よく見るとSも、Hも、Yも・・・
黒島伝治
「穴」
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・・・彼が鶏に餌をやろうとしていた時、KS電鉄の重役が贈賄罪で起訴収容され、電車は、おじゃんになってしまったことを、村の者が知らしてきたのである。「何だ、そんなことで腰をぬかすなんて!」 僕は立つことの出来ない親爺を見ながらなぜか、清々と・・・
黒島伝治
「浮動する地価」