・・・頼まれた人物は創立当時の価格でそれをうまく受けとって、現価で依頼人に売った。そのことは、半ヵ月も経って初めて技術家にわかった。技術家はそのようにして、今日二十年来の資産の大半を失ったのである。 こういう有様で、その四十万円の修繕をやるに・・・ 宮本百合子 「くちなし」
・・・面積一億デシャチン、価格百三十億金ルーブリの耕地が「十月」によって確実に農民の手にわたった。 ところが、戦後共産主義の毎日が始って見ると農村にはいろいろな困難が起って来た。 農民の間の反動的分子は密造酒を飲みながらゴネだした。「・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・あらゆる形で大衆課税がとりたてられ、たとえ所得税の税率がいくらか引き下げられたとしても、汽車賃の二倍半までの増額、公定価格の七割ほどの引上げ、通信料の四倍、煙草の二割から八割の値上げは、あらゆる家計を破綻させている。とくに本年度の悪質大衆課・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・ 割引切符平均価格。。エム・オー・エス・ペー・エス劇場 九十二・五カペイキ革命劇場 六十八カペイキ諷刺座 九十六・六カペイキ・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・公定価格がきまった途端に品物は消滅してしまった。これも原因の一つを示している。 あれこれの理由で野菜が消え去ったとなって、市民のそれに対する対策はどんな方法で行われているかというと、やはり実に個人的にやられている。或る隣組の常会で、その・・・ 宮本百合子 「主婦意識の転換」
・・・三十前の青年だといって「青年価格」というものは日本のどこにも存在しない。然し青年賃金というものは存在する。生の愚弄ということはこのようにして私共の日々の細部に沁みこんでいる。封建制というものが私達の全力をあげて打ち破らなければならないもので・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・どうせ誰だって外米をたべているんだからとすてて考えず、外米をたべることを躊躇しないとともに、その外米は現在の力で求めうる一番正当な価格のものか、外米に不足なヴィタミンBを何で補って健康を保ってゆくかという点をも積極的に考えてゆくべきである。・・・ 宮本百合子 「その先の問題」
・・・たとえば公定価格で魚の百匁は標準にされているが、魚屋は苦笑して曰く「さかなの肝腎な新しい古いはどうなるんだろうね」と。私たちが魚を一つ買うのにもこの頃はこういう微妙なかねあいのところを通っているということに、もう少し深く考えられてかかること・・・ 宮本百合子 「龍田丸の中毒事件」
・・・公定価格のすべてがあがる。物価の一一〇倍にたいして、労働賃銀六〇倍のあがりでは誰の暮しも追いつきかね、タケノコ生活はタマネギとなって、もうしんまではいでしまった有様でいる。 闇という真暗なことばが子供の口からさえ洩れるようになってからは・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・公定価格です。真黒いひよっこがかえったそうです。真黒な小さい黒ん坊のようなヒヨコは可笑しくて可愛いそうです。 寒気のきびしい間、どうか益々体に気をつけて下さい。〔一九四〇年一月〕・・・ 宮本百合子 「二人の弟たちへのたより」
出典:青空文庫