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・・・こうも落ちつく暇のない毎日の間に、隣組からの強制貯金とか、厖大な数字に上る国債の消化とかいう仕事も、つまるところは一家の主婦、さもなければ、家計を援けて働いている女子の勤労者のやりくりに、解決を俟つ有様となった。家庭から先ず男が戦線に奪われ・・・
宮本百合子
「私たちの建設」
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・・・そして、涼台に集って雑談に耽っていると八時頃、所用で福井市に出かけていた家兄が、遽しい様子で帰って来た。私共の呑気な「おかえりなさい」と云う挨拶に答えるなり、彼は息を切って、「東京はえらいこっちゃ」と云った。 私共がききかえす間・・・
宮本百合子
「私の覚え書」