・・・木食上人、ブレーク、アルトの歌手。それとこの家! 実にびっくりして凄いような気がしました。Yの父は三井の大したところの由。私はブリティシュ・ミューゼアムで、ブレークの絵を見たときの印象を思い出し、ああいう特殊な世界にあってもとにかく清澄きわ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・婦人労働者たちは、デモに着て出る服の手入れでもして、四月三十日になると、モスクワ全市の食糧品販売店では、火酒、ブドー酒、ビール、すべてアルコールの入った飲物を一斉に――売り出すのか? そうじゃない、反対だ。絶対にアルコール飲料は売らなくなる・・・ 宮本百合子 「勝利したプロレタリアのメーデー」
・・・の住人どもに与えられているのは、ブルジョア国家がその税で富むところの火酒と教会と無智であった。。そしてもちろん、ブルジョアが美しい馬にひかせた橇で雪をけたててやって来る劇場へは、入るどころではなかった。 十月の革命は、ロシアの支配者をブ・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ソヴェトの新しい軽音楽を開拓している諷刺的な流行歌の歌手、「陽気な連中」の主役を演じたような歌い手も出ないはずである。今も『鰐』という諷刺雑誌が出ているかどうかわからないけれども、これも辛子のきいた諷刺雑誌であった。自己批判としての諷刺は、・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ 革命前、ロシアの民衆の大半が文盲であったころプロレタリアートは彼等の鎖と汗とのほかに、どんな文学をもっていただろう。火酒と教会と悲しい民謡があっただけだ。革命によって解放されたプロレタリアートが、一般に文化水準を高めて来たとき、はじめ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・更に、彼の半生を支配してパリにしばりつけるほどの魅力の根源となった婦人、彼によって描かれるばかりでなく、彼をして書かしめる力となった活溌な、美貌の歌手ヴィアルドオ夫人との微妙な関係を知らねばならない。 しかしながら、現実の生活において何・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・それから崔承喜をはじめ、朝鮮出身の歌手たち舞踊家たちのことである。日本の権力は植民地であった朝鮮の人民の間からすぐれた政治、経済面の活動家が、成長してくることを極力ふせいだ。そして、いわゆる文化面といっても朝鮮人民の言葉と思想感性のおのずか・・・ 宮本百合子 「手づくりながら」
・・・ロシアの支配者は人民に学問や現実的な知識を授ける代りに、高い税で政府がしこたま儲けつづけた火酒と、封建的な絶対服従にあきらめる思いを祈祷の文句で、人民の精神に植えつける僧侶とをあてがった。 女と男との地位は、ひどく男尊女卑だった。人民―・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・ ヨーロッパの婦人の社会生活を見ている荷風は、ヨーロッパ婦人の美しさの讚美者であり、その頽廃の歌手であった。従って、婦人の社会的な自由や生活範囲の拡大ということに反対は唱えない。「英吉利の婦人が選挙権を得ようとする運動にも同情するくらい・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
・・・看板に「火酒」。臓物屋の店先で女子供が押し合った。 ピカデリー広場行の乗合自動車はかなくそでつまったような黒いロンドンを一方から走って来てビショップ町の出入口から心配げな顔つきをした僅の男女をしゃくい上げた。そして再び場末のごたごた中に・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫