・・・民主なる文学ということは、私たち一人一人が、社会と自分との歴史のより事理にかなった発展のために献身し、世界歴史の必然な働きをごまかすことなく映しかえして生きてゆくその歌声という以外の意味ではないと思う。 そして、初めはなんとなく弱く、あ・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・ 若い少女たちが、その歌声の澄みわたった響で太陽の光線を美しく顫わすように、疲れ、鈍らせられていない良心の流露で、誇りたかく生きる道を進んで行ったら、其姿は、優しくひるむことない進歩の旗じるしとなると思います。〔一九四五年十二月〕・・・ 宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
・・・女の学生には「家政証」を制定することとを思いあわせ、私は自分もひとりの女として胸におさめ切れぬ何ものかを感じるのです。 人間というものは自身の生きている現実からのがれ切れるものではありません。のがれ切れない以上、その現実に腰を据えてそれ・・・ 宮本百合子 「歌集『集団行進』に寄せて」
・・・すこし年嵩な青年たちはこういう話をきくにつけても身体の健康な、家政になれた女性を妻としなければ、とてもこれからは、やって行けないという感想を抱くだろうと思う。その場合、家政のうまさということの内容を、昔ながらの女のつつましさや自己犠牲という・・・ 宮本百合子 「家庭と学生」
・・・ 女の人が、総体経済家で、きれいずきで、家政的に育て上げられているのは、一寸傍から見れば、共に生活する男の人の幸福のようだが、右を向いても左を向いても、母、妻、姉妹皆同一の型でちんまり纏っているとうんざりと見え、京都の男は遊ぶ。 遊・・・ 宮本百合子 「京都人の生活」
・・・ その家のわきを通るとその娘の笑う高い声や戯言を云うのがきこえ夜の静かな中に高くて細い歌声がこまかくふるえて遠くまでひびいて居る事もあった。 高い張った声とはっきりした身なりは仙二がどうしても忘れる事は出来なくなった。 一言自・・・ 宮本百合子 「グースベリーの熟れる頃」
・・・ 初めは、奪う愛は誤っている、与える愛でなければならないと細君の教育や家政への手助けや大いに努めるが、やがて「それでは男の精神が寂しい。行動では我ままをしてもいいのだ。奪われる愛というものも、特に女にとっては在っていいのだ」というところ・・・ 宮本百合子 「「結婚の生態」」
・・・ 第十三回革命記念日の数日前、一九三〇年十一月一日の朝、モスクワの白露バルチック線停車場は鳴り響く音楽と数百の人々が熱心に歌うインターナショナルの歌声で震えた。各国からの代表、歓び勇んでやって来たプロレタリア作家たちの到着だ。みんなは、・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・日夜辛苦して家政をみている婦人が共にめざめたのも当然です。めざめた人民の命を削りながら日一日とひどくなるインフレーションに対し、はじめからインフレーション政策をとっている石橋が今ラジオで再び幼な児の如く政府を信じろというとき人民は目をみはり・・・ 宮本百合子 「今度の選挙と婦人」
・・・次から次へと生れて来る子供たちの世話をしたり、家政をとる傍ら、徹夜までしてレフ・トルストイの作品の浄書をして援けて来たソフィヤ夫人とトルストイの間は、トルストイが一度、一度と精神的危機を経験する毎に離反の度を増して来た。一八八七年、五十九歳・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
出典:青空文庫