・・・その手紙の内容は、ある田舎の荘園で、女主人は病弱なので家政婦が家事取締りしている。その助手と鶏舎の監督をする健康な飽きっぽくない若い婦人を求めているのであった。ジェーンは、その手紙をくりかえしてよんで考える。この手紙には何一つ特別珍しいこと・・・ 宮本百合子 「働く婦人の新しい年」
・・・ ベルニィ夫人の生活は、その時既に新興ブルジョアと成上り貴族によって経済的に圧迫された貴族、人知れずやりくりに心を労し「小作人、家政のうんざりする細々したこと」に自ら煩わされなければならない、落魄に瀕した旧貴族階級の典型のようなものであ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ よし又、教員として技量に自信を持たなければ家政婦としても、家事助手となっても、生きて行く道は数多あります。方法が見出し難いと云うのは、寧ろ自己弁護であるようにさえ思われました。詰り、良人に対する真心の愛は案外薄弱なもので結局第三の良人・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・ 過去十二年の間わずか三年九ヵ月ばかりしか作品発表の自由をもたなかった宮本百合子は、一九四五年十一月頃から「歌声よ、おこれ」などの民主主義文学についての文学評論のほか、「播州平野」「風知草」などにこの作家にとって独特であった解放のよろこ・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・ 同じ一つの新聞が、三田土ゴムの女工さんであった児玉しづ子をはじめ多くの婦人党員が、男の党員とともにめざましい働きをしたと書きながら、裏をかえすとまるで婦人党員は、家政婦の役だの色仕掛で金をまき上げるようなことだのばかりしていたように書・・・ 宮本百合子 「婦人党員の目ざましい活動」
・・・女子大学の家政科というようなところで、生計指導のための展覧会を行った。現実の物資の条件をどう理解して、どのような生活設計を立てるべきかという指導を目的としたものであったが、そこに書き出され、物価指数、生計指数として示されている数字は、ほとん・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
前号の『文化タイムズ』に、わたしの評論集『歌声よ、おこれ』について本多秋五氏の書評がのせられた。その書評で、私が日本にプロレタリア文学は実質上存在しなかった、と書いているということがいわれている。「プロレタリア文学なるもの・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学の存在」
・・・ いろいろの職業を経て今日はその学歴にもかかわらず家政婦の働きをも厭わずやっている作者は、そのような変転にもめげず自分が作家としての追求をつづけているという点からだけ、職業における自身の推移を眺めていられるのではなかろうか。 一人の・・・ 宮本百合子 「見落されている急所」
・・・始めの声はゆるやかにそしてひくく、次第に月の光の銀色になるにつれて歌声もだんだんたかくそうしてすんで行きます。詩人はその形のいい頭を女の白いやわらかい胸によせて目をねむってその歌をききとれました、ほんとうに美くしい声です。胸のかるい鼓動の音・・・ 宮本百合子 「無題(一)」
・・・旗はひるがえり、歌声は湧き、まるい地球は本当にきょうのメーデーにこそ、世界は働く人の花の輪でつながれるのです。 皆さんのお宅には、必ず幾人か、つとめに出ている方があるでしょう。その方々は、けさふだんといくらかちがった仕度で家を出かけてい・・・ 宮本百合子 「メーデーと婦人の生活」
出典:青空文庫