・・・今後の心霊学的研究の謙遜な課題として残しておくよりない。しかし日蓮という一個の性格の伝記的な風貌の特色としては興趣わくが如きものである。 八 身延の隠棲 日蓮の最後の極諫もついに聞かれなかった。このとき日蓮の心中には・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・医者は生と、精神の課題に、弁護士は倫理と社会制度の問題に、軍人は民族と国際協同の問題に接触せずにはおられない。その最も適切の例証は、最近に結成せられた「産業技術連盟」の声明書である。それは純粋に専門的な技術家のみの結社であるが、技術は社会的・・・ 倉田百三 「学生と読書」
・・・困難な現実の中でどこまで精神の高貴と恋愛の純情とをつらぬきうるかというところに、人間としての戦い、生命の宝を大事にするための課題があるのである。環境にエキスキュースを求めるのはややもすれば、精神的虚弱者のことであるのを忘れてはならぬ。恋愛は・・・ 倉田百三 「女性の諸問題」
・・・そこに人間の最も人間らしい悩みの中心課題があり、そこからまた従って英知とか諦めとか悟りとかいうものが育ってくるのである。人生の離合によって鍛えられない霊魂の遍歴というものは恐らくないであろう。 合うとか離れるとかいうことは実は不思議なこ・・・ 倉田百三 「人生における離合について」
・・・ブルウル氏は、それからも生徒へつぎつぎとよい課題を試みた。Fact and Truth. The Ainu. A Walk in the Hills in Spring. Are We of Today Really Civilised? ・・・ 太宰治 「猿面冠者」
・・・下町は昨日の祭礼の名残で賑やかな追手筋を小さい花台をかいた子供連がねって行く。西洋の婦人が向うから来てこれとすれちがった。牧牛会社の前までくると日が入りかかって、川端の榎の霜枯れの色が実に美しい。高阪橋を越す時東を見ると、女学生が大勢立って・・・ 寺田寅彦 「高知がえり」
・・・今年の春、勝手口にあった藤を移植して桜にからませた、その葉が大変に茂っていたので、これに当たる風の力が過大になって、細い樹幹の弾力では持ち切れなくなったものと思われる。 これで見ても樹木などの枝葉の量と樹幹の大きさとが、いかによく釣合が・・・ 寺田寅彦 「断片(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
緒言「日本人の自然観」という私に与えられた課題の意味は一見はなはだ平明なようで、よく考えてみると実は存外あいまいなもののように思われる。筆を取る前にあらかじめ一応の検討と分析とを必要とするもののようである。・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・という課題を授けられた。この精神とは何を意味するか私にはよくわからない。たぶん「わび」とか「さびしおり」とか「風流」とかいうことの解説を要求されていることかとも思われた。しかし、そういう題目については従来多くの先輩の各方面からの所論や説述が・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・されて行なわれるためにすべての質的なる研究が encourage される代わりに無批評無条件に discourage せられ、また一方では量的に正しくしかし質的にはあまりに著しい価値のないようなものが過大に尊重されるような傾向が、いつでもど・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
出典:青空文庫