・・・ 同時に、ゴーリキイの生涯を通じて持たれた彼の農民に対する考えかたの根が、このヴォルガ河畔の村落生活の経験によって植えつけられたことも、見落せないところであると思う。ゴーリキイは、ナロードニキが民衆を想像したようにでなく、民衆を自身その・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・いろいろ科学的には変なところがあるにしろ、養生という以上生理にふれているわけだのに、益軒は女が子供を持たない理由に夫の責任が過半であることを全く見ようとしていない。女一人の責任として、妾の存在を肯定している。時代の道徳というものの矛盾が、益・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・高瀬舟に乗る罪人の過半は、いわゆる心得違いのために、思わぬ科を犯した人であった。有りふれた例をあげてみれば、当時相対死と言った情死をはかって、相手の女を殺して、自分だけ生き残った男というような類である。 そういう罪人を載せて、入相の鐘の・・・ 森鴎外 「高瀬舟」
出典:青空文庫